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Angel Beats! another story

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第一話




「はぁっ…はぁっ…!」

学ランを着た少年が息を切らして廊下を走っていた。

「はぁ…」

息を整えるために壁に手を付いて立ち止まる。
目的地を知ってはいるがどこにあるか知らない。
テスト用紙を握り潰し、捨て、教室を出た。
自分を知っているはずがない人達が自分を知っているかのように接してくるなんて気味が悪かった。あんな場所に居るくらいならそこから出て今みたいに道に迷っていた方がマシだった。
そもそも何でここに居るのかが分からない。

「ここは、どこなんだ…」

息を整え終わり、目の前を見る。先には階段があった。裾で汗を拭い歩いていく。

「…」

階段の一段目に座る。冷たくて硬かった。感触がある。
両手の手の平を見た。そして握る。
温かった。人間の温もりがある。

(僕は…)

「よう、まさか生徒会室素通りするなんてな」

はっ、と右を見る。そこには数分前に胸倉を掴み何を望むのか聞いてきた男が立っていた。
教室を出る前には生徒会長とかなんとか言われていた。

「お前の教室とそう遠く離れてはいなかったんだがな…初めての場所だからしょうがないか」

この人は何か知っている、そう思った。
ここはどこなのか、どうして会ったことのない者たちが自分を知っているのか、どうして自分はここに存在しているのか、この違和感の正体が正しいのか、どうして、どうして、

「あのっ!」

聞きたいことが山ほどある。
まずはこれだけを聞いておきたい、と口を開き言葉を発する前に、

『グゥウウウウウウ』

少年の腹の虫が口を挟んできた。
お腹を抑える。胃の中が空のせいで両手が深く沈みこんだ。

「腹減ってるみたいだな」

男は歩き出した。
少年はそれをしばらく見続ける。

「来ないのか?」

生徒会長は立ち止まって振り返ることなく少年に問う。
ついてこい、とのことだったのか。
階段から立ち上がり足早に男の後を追ったのだった。















「なんなんだ…ここ…!?」

連れられて校舎の外に出てきた少年は驚いた。
綺麗な建物…、ここに自分が入っていたのかと。
そして大きい。

「どうした、そんなに珍しいのか?」

少年の反応を見るに慣れていないというべきか、まるで初めて見たかの様な反応であった。
そして辺りを見回し、

「なんなんだ……ここは一体何なんですか!?」

「空腹なのに随分とまあ元気なこった…騒いだら動けなくなるぞ」

「…、空腹には慣れてます」

「そうか。途中で倒れられたら困るからな。食べたら教えるから大人しくしておけ」

「…分かりました」

そう言い生徒会長の後ろに付いていく。
ここは本当にどこなのだろうか。
履いている靴が硬いが歩けない程ではない。
着ている制服も窮屈ではあるが苦しくはない。
歩いている道がかつて歩いていた道よりも硬いような気がする。
変わっていない所といえば空しかない…のだろうか。

(…あの先は森しかないのか……ここは広すぎるのか、それとも……)

グラウンドを見ると先には木々が生えていた。そこから先には何も存在しないかのように森になっている。
再び生徒会長の背中に視線を戻す。
少年は自分が死んだと自覚している。
生前の状況で奇跡的に助かったとするのなら、こんな場所にはいない。
そうなれば答えはただ一つ。

(天国…?)

悲しいことも辛いこともない。空腹にもならない。
幸せな場所なのだと言われている所。
しかし自分の状態は空腹だ。
天国であればお腹が空かないはずなのだからここは想像している天国ではない。

(分からない…分からない……)

何も分からないまま少年は生徒会長の後ろに付いていくしかなかった。













「なんなんですか!! ここ!!」

「よっぽど珍しいんだな。さては見たことないんだな」

食堂に入り、キョロキョロと辺りを見回し叫ぶ。
生徒会長はそんな少年を気にせず食券機の方へ向かう。

「これは……?」

「今回は俺の奢りだ。ほら好きなの選んであそこに行くといい」

食券機の前に促され、手のひらに乗せられる。

「こんな大金…!?」

手に500円玉が2枚の合計1000円。
大袈裟に反応し困惑の目を生徒会長に向ける。

「…なるほど、お前がどこに居たのか分かった。後で説明するから買ってあっちに持っていけ」

「わ、分かりました…」

少年はお金を投入口に入れ、画面に表示されたメニューを見る。

「………」

一番最初に目に入った定食Aセットを買おうと決める。
人差し指で定食Aセットに触れようとしたところで少年は止まった。

(何で僕はコレを知っているんだ…?)

初めて見るそれを手際良く操作していた自分に驚いた。そして食券がどんな物が出てくるか知らないはずなのにそれを選んだ。

(何となくだけど……これが分かってる…、でも知らない)

少年の頭に浮かぶのは焼かれている魚、野菜が入っているスープ、そして白く盛られている何かだ。
美味しそうだ。
しかしそれがどういうものなのか知らなかった。

(……)

試しにそれぞれ画面に表示されている食券に目を通してみる。
すると見た全てのメニューがどういったものなのかが頭に浮かんできた。

「……あの…」

「どうした?」

「…美味しそうなんですけど、どれが良いのか分からないんです……オススメってどれが良いんですか?」

「どれでも良いぞ…って言われると困るよな、そうだな…パンは食べているな?」

「え、ああ、はい食べてました」

「そうか」

生徒会長は画面の上のメニューの洋食に触れる。
見ていたのはオーソドックスな定食だ。今度は洋食一覧を表示させる。

(こんな風にできるのか)

直感的に操作が分かるだけでどのようにしたらメニューが変わるかは分からなかった。
生徒会長は慣れた手つきで画面を変えていく。

「いきなり箸を使うのは無理だろうからな、これでどうだ?」

「え、あ、はい。」

まず一番左上にある食券を見る。白いものに半分黒いシチューがかかっているものが見えた。

(なんだ…シチュー……カレー…)

「どうだ?」

「美味しそうなのですけどどれが良いんでしょう」

「そうだな……」

生徒会長は考えながら指先を食券を選ぶ。

「…パンはあった方が良いんだよな。これにするぞ。でないと一生食べれなくなりそうだからな」

少年の迷っている様を見るに提案しても買わなさそうだ。
事前に食べ物を聞き、嫌いではないであろう食べ物を直感的に買う。そして出てきたのはビーフシチューと書かれた食券だった。

「ほい、あっちに持っていけ」

「わ、分かりました…」

手渡された物は気を抜いたら飛ばされる小さい紙だった。落とさないように軽く握り、指示された場所へ向かうと近付いていく毎に嗅いだことのない匂いが漂ってきた。
良く知らないが不快の無いとても良い匂いで食欲をそそる。

「いらっしゃい」

年齢は50代くらいで頭に三角巾、そして真っ白のエプロンを付けた食堂のおばちゃんが笑顔で迎え入れた。

「えっと、これお願いします」

「はいよ」

少年とおばさんを隔てているカウンター、貰った食券を手渡す。
作品名:Angel Beats! another story 作家名:幻影