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【リリなの】Nameless Ghost

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従章 第十八話 Naked Emotion(4)



 たった一人の戦場。孤独にまみれた闘争。何者も携えず、自らのみを持って戦うその様を彼女はただ美しいと感じる。
 無限書庫の闇の中に浮かぶアリシアは薄いほほえみを浮かべた。

「ああ……やっぱり君はそれを選ぶんだね……」

 桃色と朱の魔力光が軌跡を描くその戦場を、彼女は酷く楽しげに眺めるばかりだった。

「ねぇ、高町なのは、やっぱり君には戦場が似合うよ。今の私では描けない戦場を君は彩ってくれる。君の力は叶える力だ。絶対的な力を持ってすべてを打ち砕き、傅(かしず)かせ、その望みを叶える。君の先にはいったい何が待つんだろうね? 私は……そのすべてをみたいと思う。君がたどるべき戦乱と闘争、そして、君が望む平穏が崩されることを私は夢に見たいと思う。高町なのは、君は私の理想だ。君は、その永遠を戦うことに費やされる人間なんだと思う。君はきっと否定するだろう。君もまた、私と同じ平穏を望んで愛する人なんだろうと思う。だけど君の力はそれのことごとくを否定するだろうね、かつての私のように。だからこそ、君がどのようにしてそれを打ち払い。本当の意味の平穏を得ることが出来るのか、私は見てみたいよ……」

 アリシアは瞑目し胸前に拳を当ててただ一言、「ルーヴィス」と呟いた。



―――――――――――――――――――――――――――――――――



【君はどうしてここにいる。こうして守りたいと思った彼女を見守るためだけに君はここにいるのかな】。

(違う)

【だったらどうして、君はここでただ立ち止まってそれを見上げるしかしないの?】

(なのはが必要ないって言ったんだ)

【だから君はそうして彼女の思いを尊重するだけで自ら何も行動をしようとしないのか】。

(だったら、どうすれば良いんだ。あのとき僕はなのはを立ち直らせてあげられなかった。それどこか、今の今までなのはが何を悩んでいたのか理解さえ出来なかった。僕はなのはを傷つけたんだ)

【しかし、彼女が戦いを求めたことは事実だ。見てごらんよ、彼女の表情を。とても充実しているように見えないかい?】

(それを導いてしまったのは僕だ。僕がなのはに戦う力を与えてしまったから、なのはは戦わざるを得なくなってしまったんだ)

【君はそうやって瞑目して自傷行為にふければそれで良いんだろうけど、結局君は自分が何も出来ないことを彼女のせいにしているだけじゃないかな?】

(違う!)

【聖王陛下の宣わく、『誇りを持って戦え』。君の誇りはなんだろう? 君はそもそもなぜここにとどまろうと思ったのかな? スクライアであることをやめてまで君がしたかったことはなに? ただの惰性?】

(僕は……僕は……)



――――――――――――――――――――――――――――――――――



「ユーノ君は、それでいいの?」

 耳に届いたその言葉に、ユーノはようやく面を上げた。
 忙しく動かされる手元、めまぐるしく移り変わる戦況を前にして指示を下す彼女の背中。
 閃光に包まれたモニター向こうの情景が彼の目に映し出され、そこにあるのは決して有利とは言えない二人の少女が、それでも賢明に杖を振り自らに襲いかかる暴力を打ち払う姿だった。

『お前はただここで見ているだけで良いのか?』

 コンソールに座り、何も伝えないエイミィの背中が確かにそう自分に言葉を発しているとユーノは理解した。

 なぜ、自分はここにいるのか。ユーノはもう一度それを思索する。

 そして、膝をついてしまっていた足を賢明に持ち上げ、少しだけふらつく感覚を鼓舞しそして心に決めた。

「エイミィさん。僕を、なのはの所へ。お願いします」

 ユーノはもう一度モニターの向こうで戦う二人の少女、かつて自分をパートナーと呼んでくれたなのは、そして、自分をイージスと呼び『また会おう』と言葉を投げかけてくれた少女ヴィータをしっかりと目に映した。

(僕は、こんな二人を見たかったんじゃない)

 鉄槌と槍。その手に持つ武器を重ね合わせ、火花を飛び散らせながら戦う二人の少女。ある意味、自分が導いてしまったその二者の対立にユーノは拳を握りしめた。
 もう、話し合いの時期を過ぎているのかも知れない。自分たちと彼女たちは決して相容れない存在なのかも知れない。自分の言葉はもう誰にも届かないかも知れない。
 それを思うと足が震える。

(それでも、僕はここにいるって決めたんだ)

 ガタガタとふるえる腕を押さえつけ、ユーノはエイミィの答えを待った。これは、自分のわがままだ。なのはの言葉通り、自分はさらなる増援を警戒して即応体制を保っておくべきなのかも知れない。なのはとヴィータ、あの二人は見た目互角の戦いをしているように思える。それに自分が介入することは、戦力の偏りと見なされるかも知れない。

「分かった、行って、ユーノ君」

 レンタル武装隊も出払い、クロノもリンディも本局にいる。戦力の要であるなのはとフェイト、アルフも出撃してしまっている。ここでユーノさえも行かせるということは、この仮設駐屯所の警備を甘くするということだ。仮にユーノが出て行った後、予想される第三勢力によってこの駐屯所が強襲されればなすすべもなくブランチ・アースラは崩壊するだろう。
 それでも、そのリスクを覚悟してまでエイミィはユーノを行かせることを決意した。

「ありがとうございます! エイミィさん」

 ユーノは勢いよくそう答え、身体の震えを押さえつけるようにコンソールルームを走り去った。

「がんばれ、男の子。あたしのぶんも戦ってきてね……」

 その言葉はユーノには届くはずがなかった。エイミィは遠くなっていく少年の駆ける音を耳に残しながら、後先を考えずに飛び出せる彼を羨ましく思った。

「さってと、エイミィ姉さんは後ろでみんなを支えますかね!」

 エイミィはじんわりとわき上がってくるザラッとした感情を打ち払うように両掌で自身の頬を叩き、改めてコンソールと向き合った。

 そして、コンソールルームに大規模な警告音とともに照明が敵襲を告げる赤に移り変わった。

「うっそ!? 敵襲? どこから!?」

 エイミィはその警報に驚き、一瞬我を忘れながらもその手はいかなる奇襲を受けたのかを確認するべく動き回った。

 そして、モニター上に示された【Emergency:cord 0004】にエイミィはさらなる驚愕を覚えた。座標0,0,0に対して状況4の襲撃が確認される。座標0,0,0とはまさに仮設駐屯所への直接攻撃、そして状況4が示すものとは、

「情報攻撃。まずい、サーバーがクラッキング受けてる!」

 それを把握したエイミィはすぐさま電算室の情報端末を呼び出し、外部接続されている全ポートの入出力をモニターに映した。
 そして、敵が侵入している地点を確認しエイミィは舌を打った。それは、先ほどユーノのメンテナンスによって見つかった、地球製の端末とミッド製の端末の双方回線に出現したセキュリティーホールを利用したサイバーアタックだったのだ。

(まだ、解決してないのに!)