大人二人と子供一人
「私は彼女と約束したんだ。約束は守らなくては」
「・・・それが、私が妻を看取るように卿が説得すると言うことかね」
「いやだと言っても、駄目。もしあなたが奥さんの側についてあげていないと
知ったら、私はアメリカから戻らない。あなたをひとりぼっちにする」
「卿は______」
「私はもう、子供じゃない。コーヒーはブラックで飲める。それはただ
苦みを我慢するだけじゃなくて、苦みの先にある味わいがわかるようになったから」
スフレはやめにした。
伝票を手に持ち、テーブルを立つ。呆然とする松永に対して、言い放った。
「どんな妨害をあなたがしようとも私は行く。また日本で、この席で
コーヒーが一緒に飲めると期待している」
『てめえはダダをこねるガキと同じだ』
400年前に、そう言われた理由がやっと松永にはわかった気がした。