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友達ごっこ (新羅の証言)

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それから3日後に臨也は俺のアパートに運ばれてきた。
なんというか、ひどい有様だった。とてもセルティには見せられない。
きれいな顔は、変形こそしていなかったものの、顔のいたる所に黒い痣ができていた。口の両端は切れていて、血がにじんでいたし、目は充血していた。身体には打撲の痕が残っていた。
痛々しかった。何があったのかなんて医者じゃなくても分かる。

臨也は、静雄に掴まって、暴行を受けた。あいつはそうされるだけの事を静雄にした。自業自得だよ、と口で言いながらも、臨也に同情する気持ちだって俺は持っていた。臨也は、静雄にここまで徹底的な暴力を振るわれたのは初めてだったはずだ。まるで襤褸切れのように痛めつけられた臨也はきっと傷ついていた。

しかし、臨也は相当に参っていたけど、懲りるということを知らなくて、アパートにいる間中セルティにちょっかいをかけ続けたから、同情していたセルティも、最後にはうんざりしていた。

臨也が動けるようになるとすぐに出て行ってもらった。もちろん金は取った。臨也はふつうの学生が持つにはおかしい大金を財布からポンと出して、新しい服を着て帰って行った。暴行されたときに着ていたぼろぼろの制服はうちに捨てて行ったから、俺はその制服に付いていた静雄の体液を採取し、知的好奇心の赴くままの調査に使わせてもらった。

静雄がその後でアパートに来た時、俺は臨也の行動から言動からすべて事細かに教えてやった。静雄ははじめのうちは神妙にしていたが、そのうちやっぱりうんざりしたようだった。

「それであいつセルティの出したお茶に文句つけてきて、ペラペラとあの調子でお茶のいれ方について語るから、じゃあ自分でいれなよって僕が言ったら本当に言った通りものすごい旨いの出してきて、かわいげゼロだよ、もう。そのくせ、もうやらないとか言ってそれからは頼んでも一度もお茶出してくれなかったね・・・何だい、なんで黙って聞いてるんだい?こんな話聞いてもつまらないだろ?」
「俺が、言えっつったんだからよぉ・・聞かないのもおかしいだろ」
「まぁ君が聞きたいことは分かってるんだ。あいつが静雄をどう言っていたか、だろ?」

静雄はイラッとしたようで、額に血管が浮いたけど、俺に手をあげたりはしなかった。

「失敗したなぁって言ってたよ」
「・・何だそりゃ」
「あいつの趣味、人間観察だからさぁ。静雄のことも観察したかったんだろ?」
「あいつ、わざと、俺を怒らせたのか?」
「たぶんね。あいつの人間観察の極意をちょっと教えてもらったけど、すっごいよ。色々な事象を引き起こして、その中でどういった反応をするかを見るんだって。静雄を怒らせるのは新羅にやらせるべきだったなぁ、ってさ。そうしたらどっちも観察できたのにって。どこまで捻くれてるんだか」

静雄が帰ってしまった後、俺は臨也を思った。

中学の頃はまだ分かりやすくグレていた臨也は、高校に入ると、より暗い方へと足を突っ込んでいった。学校と、夜の街の二重生活を楽しんでいたつもりなのだろう。でも、それは確実に臨也の心を蝕んでいった。あいつは、本当に自分が欲しいものを分かっていない。臨也は無意識のうちに静雄を試していたんだ。人間観察なんて言って自分をごまかして、ただ静雄にどこまでも許してもらいたかっただけなんだ。無条件で許容されて愛されたかったんだろう。チームの男たちに静雄をボコらせて、自分の裏切りをつきつけて、「それでもお前を許す」と言ってほしかったんじゃないか?

この推測は、あながち間違ってはいないと思う。

静雄に尻尾を掴ませるなんて、狡猾な臨也にしては信じられない失敗だ。臨也は、静雄に自分の暗い面を見せることを望んでいたのだ。静雄が自分の力を晒して、その暴力を受け入れてくれる相手を求めていたように、臨也は「もうやめろ」と言ってもらいたかっただけなのだ。静雄に憎まれて殴られて犯されるなんてちっとも望んじゃいなかったのだ。かわいそうに。かわいそうに。ねぇ、臨也、でも一番かわいそうなのは君じゃない。
心のどこかが壊れちゃった化け物の君が「化け物」と呼ぶ男、平和島静雄こそ、いい災難だ。静雄は本当に君のことを大切にしていたんだよ。それを自分からぶち壊して、君は本当にひどい奴だね。試される人間のことを考えてくれよ。高校3年間、静雄は喧嘩三昧だった。喧嘩を売る奴はどんどん容赦なくなっていたし、君は、奴らに対静雄相手の戦い方の情報を流していた。何度か、静雄は君のせいでひどい怪我をしてただろう?そこで満足しておけばよかったんだ。

臨也の欲求は際限なくエスカレートしていく。どこまで許されたって本当は満足しないんだから当然だ。

静雄は限界を迎えた。元々あいつだって我慢を捨てた化け物だから、破綻は目に見えていたんだ。誰もかれもが加害者で被害者だ。まったくやってられない。
新羅、と声を持たないセルティが言う。セルティが僕を心配してくれている。僕は、何だい?と笑う。臨也の事も静雄の事もセルティの前ではどうだっていい。僕はあいつらを救おうとしない。僕が助けたいと思える相手はこの世で一人、セルティだけだ。