冥府の守人
ぎゅう、としがみつくと、彼は笑って頭をなでてくれた。冥府には誰もいない。だから、ヘルメスはまるで幼児になったかのように甘えることが出来た。幼いころに甘えられなかった分を取り戻しているようにも見え、また、ハデスも「ゼウスの分だぞ」と言って甘やかしてくれた。
彼の寂しさを少しでも紛らわせていればいい、とヘルメスは思っている。たまに、他の神々も来てくれればいいのにと思うのだが、すぐに、いや、と自分でそれを否定する。今、彼を独り占めできている。これでいいのだと思う。
その気持ちが何であるかは、ヘルメスはまだ知らない。