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Ever lasting

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 思いっ切り悲しんでやれと新一が耳元で告げる。
 そして、その人との思い出を大切にしてやれと続けられた。
「工藤……」
「泣いて、泣いた分だけ心に刻みつけておけよ。で、絶対に忘れんな。その人が生きていたという事を、一緒にいた時間があったという事をな」
 辛くて忘れるのは一種の逃避でもあり、罪だと新一は言う。
「忘れるってのはな、その人を自分の中で殺すって意味なんだぜ。……殺人者にはなるなよ、服部」
「せやな……」
 胸が痛い。
 目が熱い。
 抑えられない嗚咽が空気を震わす。
 溢れる涙を拭いもせず、ただ泣き続ける自分を抱きしめてくれる新一に愛しさが込み上げ、平次は抱きしめている腕に僅かに力を込めていった。







 眩しさに目を開ければ、隣で寝息をたてている相手の顔が目に映る。
 強い意志を秘めた瞳が見えないせいで、年齢よりも幾分幼く見えるその顔を、平次はじっと眺めた。
「……ほんま、かなわんなぁ」
 白くきめ細かい肌には、自分がつけた紅い印がうなじから鎖骨にかけていくつも散っていた。微かに目元が腫れているのは泣かせてしまったから。
 抑えの利かなくなった自分を受け止めて、甘えさせて。言葉に出来ない分、新一は行動で表してくれる。
 いつもは負担にならないようにセーブするものも、あの後はどうしても箍が外れてしまい熱をコントロール出来なく何度も体を繋げてしまった。いいから…と促され、求められ、眠ったのは明け方に近かった筈だ。
 素直じゃない相手の、精一杯の優しさ。
 未だ目覚める気配のない相手のこめかみに唇を落とす。
 ……失いたくない。
 ……傍にいて欲しい。
 それは、探偵をしている自分達にとっては禁句に近いのかもしれない。
 いつどこで命の危険に晒されるか分からないから。
(今日が無事に終わっても……か。確かに明日の事なんか予想できんしな)
 だから少しでも一緒にいられるように。
 平次はまだ眠りの中にいる新一に微笑みかけると、起こさないようにそっとベッドを抜け出した。少し早いが朝食の用意をして、それから新一を起こして一緒に食べよう。
 カーテンを少し開ければ青い空が輝いていて、昨日の雨はすっかりあがっていた。
「今日は休みやし、どっか出かけるのもええかもしれへんな」
 



 一秒ずつが大切な日々。
 流れていく日常の中で、自分の隣には新一がいてくれる様に。
 そして、新一の隣には自分がいられる様に。



「好きやで、工藤」
 贈るのは想いをこめた言葉。
 そして……。


「……ずっと一緒にいよな」


 それは、自分の願い。






作品名:Ever lasting 作家名:サエコ