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とにかくせつないんです

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 最初は普通の友達だった。酒の勢いというやつでそれがこんがらがって、身体の関係というものがプラスされた。なんというミラクル。ちなみに、俺もゾロもそっちの気はさらさらない。じゃあどうしてそんなことになったんだと言われると、こっちが聞きたいと逆切れしたくなる。何度考えたってわからないが、やっちゃったもんは仕方ないととうの昔に諦めた。
 そんな感じで今現在。どういうことか身体の関係がオプションについたまま、俺たちの友情は続いている。
 以前から頻繁に互いの家で飲んだりして、喧嘩もするが割りと仲はいいほうだった。今はそれに性交渉がプラスされたわけだ。いい感じに酔っ払って、あ、じゃあやる?みたいな感じでなだれ込むパターンがほとんどだった。まあ最初がなかなか悪くなかったし、減るもんじゃないし別にいっかーというのがその時の俺の心情で、向こうも同じような感じだろう。二十代一歩手前。ちょっとくらい性に寛容だって悪くないだろうと思ってた。なんたって若いし。その時はほんとにそれだけだった。

 カンカンカン。小気味いい音を立ててさび付いた階段を登る。ゾロの部屋はアパートの最上階、しかもなんと角部屋で、けれどこの今にも崩れ落ちそうなアパートは二階建てだ。角部屋ったってただ端っこというだけで、日当たりは悪いし北東だし壁は薄いしで、そんなクソボロアパートにゾロは住んでいる。
 どうでもいいが、この階段を登るとき、少しだけ俺は身の危険を感じる。というのも、一歩登るたびに不穏な音をたててギシギシ揺れるのだ。俺がスレンダーだからなんとかもっているが、これが体重100キロ越えのメタボなオヤジだったりしたらあっけなくポッキリいくだろう。現に、前回来たときよりもギシギシ音は大きくなっているような気がして、俺はなんだか落ち着かなくて、心持ち早足で、けれど余計な負担をかけないようにしながら階段を登った。
 薄いドアを開けるとすぐにお粗末な台所が現れる。あーそうそうこんな感じだった。一ヶ月ぶりに訪れる汚い室内を目にして、俺は安心しながら靴を脱ぐ。台所の向こう側に繋がる部屋は玄関から丸見えで、玄関から直線上の位置に座っていたゾロはグラス片手にテレビを眺めていた。俺に気付いて、おお、と挨拶なのか何なのかわからない言葉を零してから、またすぐにテレビに向き直った。
 こいつの素っ気無さにはもう慣れっこなので、俺は特に気にせずほとんど段差のない玄関で乱雑に靴を脱ぎ捨てて、三畳半の隅っこに鎮座している小さな冷蔵庫に直行した。これが奴の家に訪れたときの、俺のお決まりのコースになっていた。もういっそ土足でもいいんじゃないかと思うが、それは奴が許さなかったので、一応靴を脱ぐことは心がけている。
 狭い冷蔵庫の中はからっぽで、前に来たときに作り置きしておいた惣菜のタッパーもなくなっていた。視線を動かしシンク右上に設置されている水切り用の棚を見ると、そこにきちんと洗った状態で見覚えのあるタッパーが三つ、無造作に置かれている。俺の躾の賜物である。最初は、空になったタッパーを濯ぎもせずにシンクに放置してそのまま一ヶ月、という暴挙を余裕でやる男だったのだ。それを俺が蹴って怒鳴って暴れて、どうにか食い終わったら食器や容器はすぐに洗うということを叩き込んだのだ。
 よかった、忘れてない。よしよしと俺は思いながら、買ってきた食材とビールを冷蔵庫の中に突っ込む作業に移る。
 冷蔵庫に食材を入れながら、その素材で何が作れるか、何日間もつか、栄養バランスはどうか、とかそんなことをつらつら考えていた。もうこれは俺の性癖みたいなもんだ。そんなことを考えていたので、知らないうちにゾロが自分のすぐ後ろまで来ていたことに全く気付かなかった。
「おい」
 思いがけず近いところから聞こえた声に驚いて振り返ると、鼻がぶつかりそうなくらいの位置にゾロの顔があって更に驚いた。同時にその目の奥に燃える情欲を見つけてしまって、用意していた罵詈雑言も思わず飲み込んでしまう。ゾロはそんな俺を気にもせずに手首を掴んできて、ぐいぐいと引っ張られた。向かう先は、朝起きてから整えていないのだろう乱れたままのベッドだ。ああもう、早速かよ。諦観みたいなものを感じながら、開けっ放しだった冷蔵庫の扉を、つま先を伸ばして閉めた。もたついた俺の動きにゾロが獣みたいな声をあげる。「さっさとしろ」
 どんだけ溜まってんだよと溜息を吐いたら、続いて背中に衝撃。ベッドに突き飛ばされたのだ。そのままゾロも乗り上げてきて、色気もくそもない野郎二人分の重量感に、ちゃちなベットがぎしぎしと軋む。安さが売りであろう貧相なパイプの悲鳴が聞こえてくるようである。染みだらけの天井を眺めながら、ぼやけた人物に焦点を当てるのがなんだか戸惑われて、俺はそっと瞼を閉じた。

+

 一回ヤッて、俺が作った飯を二人で食って、酒を飲んで、またヤッた。あ、やばい死ぬかもと思うくらいヤッて、けれど目が覚めたとき死んでいなかったので、シャワーを浴びて帰ることにした。
 最近買ったお気に入りのスウォッチを見ると、もう十二時をまわっている。終電はとっくに終わっている時間だったが、今日はチャリで来ているから大丈夫だ。俺とゾロのアパートは大体三駅分くらいの距離がある。正直今からチャリ漕いで家に帰るのは尋常じゃないくらいダルイが、このままこいつの家に泊まって朝帰りするほうがよっぽど嫌だったので、俺はずきずきと痛むところを労わりながらそっと腰を上げた。別に隣で馬鹿みたいな顔して寝こけている緑を起こさないように気を使ったわけでは断じてない。

 蛇口を捻る。だるい身体を打つぬるいシャワーが気持ちいい。どうやら後始末はしてくれていたようで、落ちるようにしてそのまま眠りについた身体は綺麗になっていたので、汗を流す程度で済ませた。それでも狭い三点ユニットの中は熱気ですぐに白く曇る。だからこいつの家の風呂は嫌いだ。洗面台の白く曇った鏡を眺めながら、俺は思った。こいつのアパートの嫌いなところベストスリー。折れそうな階段とクソ狭い三点ユニットとマリモ臭いベッド。全部同じくらい最悪だ。
 俺は脱衣所がないなんてありえねえと呟きながら、湿った空気の中身体を拭いてさっき着ていた服をもう一度着る。帰ったら速攻着替えることを誓いながら。ほんのり湿った服が気持ち悪い。

 部屋に戻ってもゾロは相変わらずだった。大口開けて鼾をかいてる男を見下ろして、俺はため息をつく。性欲に食欲に睡眠欲。こいつは本当に本能のまま生きてるなあとすこし羨ましく思った。この男はぐるぐる詰まらないことを考えたりはしないのだろう。くだらない情で容易く感情がぶれたりしないだろうし、宙ぶらりんな俺たちの関係に名前を付けようとも思わない。ましてや頭を悩ますことも。そうだ。俺だってそんなこと考えたりしない。俺たちは普通の友達で、同級生で、──セフレで。
作品名:とにかくせつないんです 作家名:湖山