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無題if 赤と青 Rot und blau -罪と罰-

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「あー、頭を上げてくれよ!ヘルのことも君の上司の棺のことも何も心配しなくていいんだぞ!俺はヒーローだからね!心配することなんてないんだぞ!!」
アメリカはプロイセンの肩を叩く。プロイセンは顔を上げると、アメリカを見つめた。
「恩に着る」
「別に着なくてもいいんだぞ」
アメリカは改めて、肩の荷を下ろしたような顔をし、穏やかな色に凪いだ目をするプロイセンに向き直った。この目はもう自分のことなどどうなってもいいと、生きることすら諦めきった瞳だ。
「頼まれたんだぞ。…それで、これは俺からの頼みなんだぞ」
「頼み?何だ?」
プロイセンは赤を瞬いた。

「諦めないでくれ」

アメリカの言葉にプロイセンは赤を見開いた。
「自分がどうでもなったっていいって思っちゃダメだ。ドイツはきっとそれを望まない。俺は今日、初めて君と会ったけど、これが最後かもしれないなんて嫌なんだぞ。もっと、君のことを知りたいんだぞ」
そう言ったアメリカの青が恥ずかしげに揺れる。それをプロイセンは呆然と見つめた。
「きっと、イギリスもフランスもそう思ってる。本当は皆、君を犠牲にしたくないんだぞ」
アメリカは揺れたプロイセンの肩を掴んだ。
「…何、言って…」
「ドイツは俺たち資本主義国家と共産主義国家ロシアのせめぎ会う場所になるだろう。出来れば、ロシアの干渉なくドイツを俺たちで統治出来ればいいんだろうけど、きっとそれは無理だ。ドイツは西と東で裂かれることになる。俺たちは「ドイツ」をロシアには渡せない」
「…解ってる。ドイツはお前たちの西側の管理下にある方がいいだろう。…東側には俺が行く」
欧州の国々と北の大国はいつも相容れて来なかった。得体の知れぬ不気味さに警戒は怠れなかった。「ドイツ」は西側にあるほうがいい。アメリカの協力があれば復興は早く進むだろう。ロシアに組することになれば、どうなるか解らない。そんな場所にドイツを赴かせる気などない。こうなることは戦争が終わる前から解っていた。もし、そうなった場合は自分がロシアの傘下に組み込まれる覚悟を決めていた。
「君に犠牲を強いることになるけど、絶対に諦めないでくれ」
アメリカの真摯な眼差しに怯んだように、プロイセンは視線を逸らした。
「犠牲なんて思ってねぇよ。そうすることが一番いいんだからな。それにロシアに組み込まれる領土は俺に縁の深い土地が多い。…そこにまた、還るだけだ」
視線を逸らしたプロイセンの肩をアメリカは揺さぶった。
「もう二度とドイツに戻らないつもりかい?君とドイツはふたりで「ドイツ」なんだ。必ず、ひとつになれる日が来る。国民がきっとそれを願うんだぞ!だから、そんな何もかも諦めた顔をしないでくれ!」
力強く自分を見つめてくるスカイブルー。プロイセンは空の青を思う。
「…そんな日がいつか来ると思うか?」
何年先になるか解らない。今世紀中にはきっと叶わない。百年経てば、自分も何もかもが変わってしまうかもしれない。…もし、分断された国がひとつに戻れるときが来たとしたら、そのとき、ドイツは自分を昔と同じように「兄」と呼んでくれるだろうか?…プロイセンはアメリカの青を見つめる。
「諦めなければいつか来るさ!君はあのとき諦めなかったんだろう?だから、奇跡は起こったじゃないか!」
アメリカの力強い言葉に心が揺さぶられる。…ああ、そうだった。そうだったな。ここから先は、二つに裂かれる国民の為に自分は生きなければならないのだ。
「…解った」
頷いたプロイセンにアメリカは笑う。それにプロイセンは目を細めた。

「約束、したんだぞ!」
「ああ」

悲観するよりも、前を見なければならない。目を瞑っていては前には進めない。前に進むと荊の道を歩いていくと決めたのだ。

「ありがとう。アメリカ」

きっといつか。願っていれば、きっと。



 それまでは。



プロイセンは目を閉じた。