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南へ逃避行

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驚いて振り返る。真っ赤なルノーが家の前に停車していた。
「おにーさん、今からシエスタ?どうせなら俺と一緒に出かけない?」
フランシスが窓から顔を覗かせ笑う。ロヴィーノが一瞬怪訝そうな顔をしてフランシスを見た。
「なんでお前と」
ぶつくさと文句を言うロヴィーノにフランシスが小首を傾げる。「えー、いいの?」と問いかけた。
「女の子の団体さん、はっけーん!…したんだけどなぁ」
だだだ、っと車の脇まで駆け寄りロヴィーノがドアノブに手を掛けた。勢いのまま助手席に乗り込む。
「そう言うことは早く言え!!」
ロヴィーノの身のこなしの速さにフランシスが膝を叩いて笑い声を上げた。
「あっはは、あははは!さすがだね、ロヴィーノ!うん、行こう。俺達が組んだら最強だよ!」
バチン、とウインクをしてフランシスがアクセルを踏む。軽やかに滑り出す車体、フランシスは上機嫌だった。
「せっかくここまで来たんだ。あの兄弟の我が儘に付き合ってあげたんだから良い出会いくらいなくっちゃね」
楽しげに語る。フランシスの言葉にロヴィーノは笑って「全くだ」と答えた。



兄弟を乗せた車は地中海に沿って進んでいく。爽やかな風と明るい日差し。
カーラジオから流れるのはサッカー欧州リーグの中継だ。
「ヒャッハー!たまんねーなー!やっぱり休暇は暖かいところに限る!!」
ギルベルトが車の窓を全開にして顔を出し叫んでいる。ルートヴィッヒが呆れながら声を上げた。
「こら、兄さん!危ないから顔出すな!何キロ出てると思ってるんだ」
速度計が140キロを指している。空気にむせてギルベルトがゲホゲホと咳き込んだ。
「ぶぇええ!!ぐほ、げほ、ぐはー!」
変な声を出すギルベルトにルートヴィッヒが溜息を付く。笑いを含んだ視線を送り、言った。
「大丈夫か?」
ギルベルトが頷き「おう」と返す。車のウィンドを閉めて前を見た。
白い建物が見える。空と海の青に対比するような美しい光景。ヘラクレスの家までもうすぐだ。
「…ヴェスト」
ギルベルトが声を掛ける。運転しながらルートヴッヒが「何?」と答えた。
「悪かった。あと、お前と一緒に居られて嬉しいぜ」
ぽつり、と照れくさそうにギルベルトが言う。ルートヴィッヒは嬉しそうに笑んで頷いた。
「俺も、ゴメン。それと、俺も嬉しいよ」
カーラジオからドイツチームの勝利が告げられた。ルートヴィッヒとギルベルトが目を合わせる。
「さすがだぜ!」
「さすがだな!」
声を合わせ、嬉しそうに笑い合う。
吉報と共に二人の休暇はスタートした。
作品名:南へ逃避行 作家名:なおゆき