醜形恐怖
好かれたことに喜べば、その分嫌われたときに悲しいでしょう。
好きだと言われたらいつ嫌いと言われるのか、それを思うだけで私は生きた心地がしません。
いつか必ず訪れる終わりに毎日、毎時間、毎分、毎秒、ただただ怯える時が続くのです。
そして私はそれに耐えることが出来ません。
計り知れない不安に押しつぶされ続ける生き地獄より一瞬の苦痛と共に消えてしまう方がどんなに楽かと夢見るようになるでしょう。
「先生!」
一際大きな声に思考の渦から私は我に返りました。
そうして目から溢れた水分が頬を伝い顎にたどり着き大きな塊となってぱたぱたと落ちている事に気付きました。
「先生、すみません先生。」
そう繰り返しながら久藤君が私の目尻を拭ってくれました。
「そんなつもりじゃなかったんです。先生。」
止まる事のない涙を拭い続けてくれる彼の顔が近くにあり、眉を顰めそう言う久藤君の方も今にも零れそうな涙を目に蓄えているのが確かに見えました。
決して彼の所為ではないのに。
全て私が弱い所為なのに。
しかし私はそう彼に打ち明ける事すら出来ないのです。
自分が泣かせてしまったと思い込んで謝罪を続ける彼に本当のことを言う事が出来ないのです。
なんて、罪深い。
そう思うと益々止め処なく涙が溢れるだけで。
どうしようもなく私はただ心の中だけで、自分で自分を呪い続ける事しか出来ませんでした。