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ジェンガ

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「父さん、じゃあ・・・婚約の話は・・・!」

彼女が口を開く。父の言葉にぱあっと顔を明るくした。

「ああ。先方には私から連絡しておく。本田くんと、仲良くな。」

「ありがとう、父さん!」

私と彼女は目で合図を送りあった。これにて作戦は終了である。
嬉しさと同時に、寂しさが込み上げてくる。
食事の席も終わり、彼女が家の外まで送ってくれることになった。


外にでると冬の冷たい風が髪を揺らした。

「本当に、ありがとう。本田。」

彼女は私を本田と呼んだ。
ああ、もう、これで終わりなんですね。

「いえ、お役に立てたのなら。私は、おひとよしですから。」

「嬉しかった。さっきの言葉も。たとえ、嘘でも。」

「いえ・・・」

うまく、笑えない。
涙がこぼれそうだった。

「また、会ってくれるか?今度は、友達として。」

いつものようによく通る声。
彼女の言葉をかき消すように、私は彼女に口付けた。

「ごめんなさい。さようなら。アルロフスカヤさん。」

別れの時くらい、笑顔でいようと思った。うまく、笑えていただろうか。
踵を返して、彼女の家を後にした。

「なんで・・・?」

彼女の声が、聞こえたような気がした。
ある冬の日の、夕暮れ時のことだった。



**


二人の目の前で、それは脆く崩れ去った。


あの時別れてから、彼女と会うことは一度もなかった。
自分から彼女の家や学校に行くことはなかったし、あの公園にも足を向けなかった。
どうすれば、幸せになれたのだろう。
もう、終わったことだ。考えても、仕方がない。

私の足は、公園に向かっていた。
ちょうど1年前に、ここで彼女に出会ったのだ。
もう一度ここに来れば、嫌でも彼女を思い出してしまう。
忘れられない。忘れられるはずもない。脆く崩れたココロも、あのとき傷付けた彼女も。
それは、簡単に壊れてしまった。触れないようにと、守り続けて。
最後に一度だけ触れて、音を立てて崩れ落ちた。私たちの脆い関係。
ここに来たのは、彼女のことを忘れるためじゃない。
もう一度、彼女を心に刻みつけて、また歩き始めるためだった。

ブランコに腰かけ、少し揺らしながら惚けていると、草むらから猫の鳴き声が聞こえた。
声のするほうに向かってみる。
段ボール箱の中に、前と同じように子猫が捨てられている。

「また・・・ですか・・・。」

しゃがみこんで、よしよしと子猫の頭をなでてやる。
立ちあがろうとすると、いきなり後ろから抱きしめられた。

「残酷だな。」

いつもの、透き通る声。
背中に感じる体温も、目の前にある腕も、信じられない。

「アルロフ・・スカヤさん・・・?」

「久しぶり。菊。」

彼女は、私を菊と呼んだ。
耳元で聞こえる声に、涙が溢れる。

「な、んで・・・?」

「毎日、待ってた。・・・・ずっと、会いたかったんだ。」

茫然とする私を、彼女はきつく抱きしめた。
胸の前で結ばれた手に触れる。
彼女は頭を私の肩にうずめた。



「おひとよしなお前に、頼みたいことがあるんだ。」




脆く崩れた関係は、もう一度、最初から積み上げられていく。



これは、救われない二人の物語。











作品名:ジェンガ 作家名:ずーか