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俺のこと、忘れないでー!

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「そうだ。いいな、じゃあこのままじっとしてるんだぞ。いいか、余計なことは言うんじゃないぞ」
「うん、分かった・・・」


「ルートヴィッヒさん、どこですー?・・・おや、そこでしたか」
 すぐ近くの部屋のドアが開いてルートが出てきたのを見て、書類片手に割烹着姿の菊が駆け寄ってきた。やはり掃除をしに来ていたらしい。
「ああ、本田、どうした?」
 何事もなかったかのように菊に話しかける。菊はにっこり笑って答えた。
「書類が大量に廊下に散らばっていたので、どうされたのかと心配していましたが、何ともなかったようで安心しました」
「そうかすまなかったな、本田。手間を掛けさせてしまったようだ。・・・あー、しかし、そのなんだ、前にも言ったかと思うが、掃除はしなくていいぞ、自分でやってるから」
「そういうわけには行きませんよ、お世話になっているんですから」
 デジャブーな会話が交わされる。

 ──いや、だから早く帰ってくれ、頼むから・・・

「これが落ちていた書類です、ルートヴィッヒさん。集めておきましたから」
「ありがとう、すまなかったな、本田」
「どういたしまして。しかし、どうされたんですか?あんなところに書類を散らかしっぱなしなんて、ルートヴィッヒさんらしくもないですね」

 ──やっぱり黙っては帰らないか・・・

「ああ、それはだな、フェリシアーノが急に気分が悪くなって倒れたんで、ちょっとそこの部屋へ運んで休ませていたんだ」
 ルートは先ほど急いで考えた言い訳を、取って付けたように説明する。まさかばれやしないだろうと思いつつ。
「それは大変ですね、それでフェリシアーノ君は大丈夫なんですか?何かお手伝いしましょうか?」
 それを聞くなり、菊は先ほどの部屋に向かおうとする。それを何とか押しとどめようと、ルートは慌てて
「あ、ああ、もう大丈夫だ。たぶん軽い貧血か何かだろう」と答えた。
「・・・それならいいんですが、お大事になさってくださいね」
 心なしか、菊の目に残念そうな光が閃いたように思えたのは、きっと気のせいだろう ──ルートは自分に言い聞かせた。

「それでは今日は掃除も終わったので、そろそろ帰らせて頂こうと思います。何かあったら遠慮なく呼んでくださいね、すぐにお手伝いに伺いますから」
 菊はにっこりと笑った。ルートもやや引きつり気味の笑顔を浮かべて答えた。
「気を遣わせてすまないな、本田」
「どういたしまして。私たちは同盟を結ばせて頂いている間柄ですから」
 菊がそう言って三角巾をはずして帰ろうとした瞬間、フェリシアーノが部屋から出てきた。

──なっ、何でそこで出てくるんだっ!じっとしてろってあれほど言っただろうが・・・!!

「フェリシアーノ君!もう大丈夫なんですか?気分が悪くなったと聞きましたが・・・」
 菊が少し驚いたような顔をしてフェリシアーノに話しかける。
 驚くのも無理はない。一応服を着てはいるものの、赤い顔をして目は潤んでいるし、髪はくしゃくしゃで、襟元がだらしなく開いてネクタイは解けたまま、上着のベルトもきちんと締まっていなくてよれよれだ。
「フェリシアーノ君、熱があるんじゃないですか?無理しないで横になって休んでください」
「うん、もう平気。・・・ね、ルート?」
 フェリシアーノはにっこり笑ってルートの方を見た。

 ──この場でそういう目で俺を見るんじゃなーい!!!

 ・・・ルートは顔から火が出るように思えた。
 ──穴があったら入りたい・・・。

 心の底からそう思った。
 いかにも心配そうに、何度も何度も振り返り、フェリシアーノのことを気遣いながら帰って行った菊の目が、少し笑っているように思えたのはきっと気のせいだ。絶対に自分の気のせいに違いない。










 その夜。


「・・・どうした、ルッツ?」
 いつまでも居間の明かりが消えないのを気にしてギルベルトが様子を見に行くと、ソファーに座って何やら考え込んでいるルートを見つけた。
「眠れないのか?お前らしくもないな。何かあったのか?」
「兄さん・・・」
「それじゃひとつ俺が添い寝してやるか。安心しろルッツ!」
「それだけは勘弁してくれ・・・」
「何でだよ?!」
「な、何でだよって、それこそ何でなんだ。こっちが聞きたいよ、兄さん!」


 バイルシュミット家ではますます眠れぬ夜が更けていくようだった。


作品名:俺のこと、忘れないでー! 作家名:maki