哉太
星月学園天文科。
2年生の教室に七海哉太はいた。授業はとっくに終わり、彼のいる教室に生徒はもちろん先生も誰もいなかった。
「…よし出来た。」
季節は冬。
土萌羊が学校を去ってからいつのまにか時は流れ、もう2月を過ぎていた。
「あいつ、喜んでくれるかな…」
彼が持っている物。
それは愛する彼女へのプレゼントだった。
愛する彼女とは星月学園で唯一の女子生徒である、夜久月子。
彼女は七海の昔からの幼なじみだ。
「明日がついにアイツの誕生日か…。俺、ちゃんと渡せるのか…?」
少し七海は心配になった。
普段から素直じゃない性格で、気に入らない事にはすぐに喧嘩をふっかけてしまう。
「何一人で喋っているんだ、哉太?」
後ろから声が聞こえる。
その声は昔からの幼なじみの東月錫也だった。
彼は七海や月子のお母さん的存在として、ずっと彼らを見守って来た。
「うわぁ…!!?
な、何だ錫也か…。」
七海が素っ頓狂な声をあげる。
「何だ、とはないだろっ?
忘れ物をしたから取りに来たんだが…。
彼女へのプレゼントか、哉太?」
東月はからかうような笑みを浮かべ質問をする。
「な…、馬っ鹿そんなんじゃねぇよ!
用が終わったんなら、さっさと寮に帰れ!!」
顔を真っ赤にして哉太が言う。
それを見た東月はこみだす笑いを必死に堪え、こう言った。
「ははは、わかったよっ。
…頑張れよ、お前は素直じゃないんだから。」
東月は応援するように言う。
「けっ、わかったよ!
…ありがとな、錫也っ」
七海はそっぽを向いてお礼を言った。
それを見た東月は少し笑って、寮の自分の部屋に戻っていった。
「錫也には敵わなねぇや…。
俺もそろそろ帰るかっ」
七海はそう呟くと、自分の部屋へ帰っていった。
彼女へのプレゼントを抱えて。
そして2月16日。
七海はいつものように遅刻をした。
だが彼のいつも空っぽな鞄には、彼女への誕生日プレゼントが入っていた。
「あー、眠ぃ…
昨日はあんまり寝付けなかったからな…」
七海は大きく欠伸をする。
いつもの場所で授業をサボり、気持ちよさそうに昼寝をした。
そしてお昼の時間になると、東月と月子が七海を迎えに来た。
「哉太ー!
また授業サボって…」
月子が哉太に小言を言う。
「あ?…つ、月子かっ
何だ、もう放課後か!?」
七海がビックリした声をあげる。
「…哉太、今は昼休みだ。
まだ午後の授業が残ってるぞ?」
東月が冷静につっこむ。
「そうか…。
よし、飯行こうぜっ!」
七海が強引に二人を引っ張る。
二人は怪訝な顔をしたが、すぐに七海についていった。
「「「いただきますっ」」」
三人仲良くご飯を食べる。
七海は月子の様子を伺いながら、タイミングを見てこうきりだした。
「なぁ、月子。放課後空いてねぇか?」
七海は月子の顔を覗きこんで言う。
月子はすぐに笑顔で「空いてるよっ」と答えた。
「なら、俺に付き合ってくれねぇか?」
七海が顔を赤らめながら言った。
「どうした哉太?…顔が赤いが?」
東月がからかうように聞く。
「うっるせぇ!…赤くなんてねぇよっ」
七海が否定をする。
だが、顔の赤みは消えなかった。
「じゃあ屋上庭園で待ってるね!」
月子が元気に言う。
「ああ、授業が終わったらすぐ行くぜ!」
七海は明るく元気良く言った。
「俺は料理を作っておくよ。
今日の夜は月子の誕生日パーティーだろ?」
東月が笑顔で言う。
月子はあっ、という顔で二人を見た。
「自分の誕生日忘れてたのか?
抜けた奴だな、お前はっ」
七海は月子を見て笑った。
月子はムスッとふくれると、七海にこう言った。
「夕方に哉太と会って、夜にパーティーをするんだよね?」
東月が「料理は任せておけよ?」と言った。
「じゃあ楽しみにしてるぜ、月子っ」
七海はそう言うと、自分の食事を再開した。
そして放課後。
七海は誕生日プレゼントを抱え、屋上庭園に向かった。
「さすがにまだ来てないよな…。」
七海は屋上庭園の床に腰を下ろした。
彼女へのプレゼントを両手に抱えてながら。
「ごめん、遅くなった…」
月子が声をかける。
「おぉ、月子!!
以外と早かったな…」
七海は少し照れながら話す。
「今日はどうしたの?」
月子が不思議そうな顔をした。
「いや、今日はお前の誕生日だろ?
だからその…プレゼントを持ってきたんだっ」
七海が顔を赤く染めながら言った。
「本当に!?嬉しい、ありがとう哉太っ」
月子が満面の笑みで微笑む。
七海はさらに顔が赤くなり、手に持っていたプレゼントを月子に手渡した。
「これ、俺が作ったんだっ」
月子の手にあるプレゼント。
それは綺麗なアルバムだった。
中を見ると、一番の七海のお気に入りの月子との2ショットの写真が入っていた。
「アルバム?
これ、哉太のお気に入りの写真…。
いいの?」
月子が哉太に聞く。
哉太は照れながら、笑顔でこう言った。
「お前の為に作ったんだ。
…月子に貰ってほしい。」
「哉太…」
月子も顔を赤くする。
「…これから俺と月子の思い出を作っていって、そのアルバムを埋めていこうなっ!」
七海は満面の笑顔で言った。
「うんっ!」
月子も満面の笑顔で頷く。
「じゃあそろそろ錫也も待ってるだろうし、戻るかっ」
七海がそう言うと月子も頷き出口へと向かった。
「悪いな、遅くなっちまって…」
バースデーパーティーの会場に着き、七海はすまないという顔で言った。
だが東月からは何の返事もないし、会場は真っ暗だった。
「哉太、錫也どうしたのかな?」
月子が心配そうに聞く。
「これもサプライズなんじゃねぇの…っておわ!?」
突然電気が灯る。
その明るさに二人は思わず目をつぶってしまった。
「「HAPPY BIRTHDAY、月子!!」」
月子を祝う声。
それは東月だけではなくもう一人いた。
「よ…羊君!!?」
月子の目の前にいたのは紛れもなく、何ヶ月か前に転校した土萌羊の姿だった。
「羊!?
てめぇ何でいるんだよ!!?」
七海はとてもビックリした様子で口をあんぐりと開けている。
「そんなに驚かなくてもいいだろう?
彼女のバースデーなんだから、飛んでくるに決まっているじゃないかっ」
土萌はしれっとした顔で言った。
「ねぇ月子、僕からの誕生日プレゼント受け取ってくれる?
フランスからタルト・タタンを持って来たんだっ」
土萌が嬉しそうにタルト・タタンを取り出す。
「わぁ!
羊君、ありがとうっ!」
月子は嬉しそうに胸に抱く。
「俺からは料理ってことになっちゃったな…。
今度、お前だけに料理を教えてやるよ!」
錫也は笑顔でそう言った。
「料理だけで充分嬉しいよっ
ありがとう、錫也!」
月子は満面の笑みを浮かべた。
「さぁ、一杯食べてくれ!
羊は足りなかったら言うんだぞ?追加でどんどん作ってやるからなっ!」
東月はとてもはりきっていた。
「わぁい!
錫也、だぁいすきっ」
土萌はもうご飯に手をつけようとしている。
「おい羊、コイツの誕生日なんだから食い意地をはるなっ」
2年生の教室に七海哉太はいた。授業はとっくに終わり、彼のいる教室に生徒はもちろん先生も誰もいなかった。
「…よし出来た。」
季節は冬。
土萌羊が学校を去ってからいつのまにか時は流れ、もう2月を過ぎていた。
「あいつ、喜んでくれるかな…」
彼が持っている物。
それは愛する彼女へのプレゼントだった。
愛する彼女とは星月学園で唯一の女子生徒である、夜久月子。
彼女は七海の昔からの幼なじみだ。
「明日がついにアイツの誕生日か…。俺、ちゃんと渡せるのか…?」
少し七海は心配になった。
普段から素直じゃない性格で、気に入らない事にはすぐに喧嘩をふっかけてしまう。
「何一人で喋っているんだ、哉太?」
後ろから声が聞こえる。
その声は昔からの幼なじみの東月錫也だった。
彼は七海や月子のお母さん的存在として、ずっと彼らを見守って来た。
「うわぁ…!!?
な、何だ錫也か…。」
七海が素っ頓狂な声をあげる。
「何だ、とはないだろっ?
忘れ物をしたから取りに来たんだが…。
彼女へのプレゼントか、哉太?」
東月はからかうような笑みを浮かべ質問をする。
「な…、馬っ鹿そんなんじゃねぇよ!
用が終わったんなら、さっさと寮に帰れ!!」
顔を真っ赤にして哉太が言う。
それを見た東月はこみだす笑いを必死に堪え、こう言った。
「ははは、わかったよっ。
…頑張れよ、お前は素直じゃないんだから。」
東月は応援するように言う。
「けっ、わかったよ!
…ありがとな、錫也っ」
七海はそっぽを向いてお礼を言った。
それを見た東月は少し笑って、寮の自分の部屋に戻っていった。
「錫也には敵わなねぇや…。
俺もそろそろ帰るかっ」
七海はそう呟くと、自分の部屋へ帰っていった。
彼女へのプレゼントを抱えて。
そして2月16日。
七海はいつものように遅刻をした。
だが彼のいつも空っぽな鞄には、彼女への誕生日プレゼントが入っていた。
「あー、眠ぃ…
昨日はあんまり寝付けなかったからな…」
七海は大きく欠伸をする。
いつもの場所で授業をサボり、気持ちよさそうに昼寝をした。
そしてお昼の時間になると、東月と月子が七海を迎えに来た。
「哉太ー!
また授業サボって…」
月子が哉太に小言を言う。
「あ?…つ、月子かっ
何だ、もう放課後か!?」
七海がビックリした声をあげる。
「…哉太、今は昼休みだ。
まだ午後の授業が残ってるぞ?」
東月が冷静につっこむ。
「そうか…。
よし、飯行こうぜっ!」
七海が強引に二人を引っ張る。
二人は怪訝な顔をしたが、すぐに七海についていった。
「「「いただきますっ」」」
三人仲良くご飯を食べる。
七海は月子の様子を伺いながら、タイミングを見てこうきりだした。
「なぁ、月子。放課後空いてねぇか?」
七海は月子の顔を覗きこんで言う。
月子はすぐに笑顔で「空いてるよっ」と答えた。
「なら、俺に付き合ってくれねぇか?」
七海が顔を赤らめながら言った。
「どうした哉太?…顔が赤いが?」
東月がからかうように聞く。
「うっるせぇ!…赤くなんてねぇよっ」
七海が否定をする。
だが、顔の赤みは消えなかった。
「じゃあ屋上庭園で待ってるね!」
月子が元気に言う。
「ああ、授業が終わったらすぐ行くぜ!」
七海は明るく元気良く言った。
「俺は料理を作っておくよ。
今日の夜は月子の誕生日パーティーだろ?」
東月が笑顔で言う。
月子はあっ、という顔で二人を見た。
「自分の誕生日忘れてたのか?
抜けた奴だな、お前はっ」
七海は月子を見て笑った。
月子はムスッとふくれると、七海にこう言った。
「夕方に哉太と会って、夜にパーティーをするんだよね?」
東月が「料理は任せておけよ?」と言った。
「じゃあ楽しみにしてるぜ、月子っ」
七海はそう言うと、自分の食事を再開した。
そして放課後。
七海は誕生日プレゼントを抱え、屋上庭園に向かった。
「さすがにまだ来てないよな…。」
七海は屋上庭園の床に腰を下ろした。
彼女へのプレゼントを両手に抱えてながら。
「ごめん、遅くなった…」
月子が声をかける。
「おぉ、月子!!
以外と早かったな…」
七海は少し照れながら話す。
「今日はどうしたの?」
月子が不思議そうな顔をした。
「いや、今日はお前の誕生日だろ?
だからその…プレゼントを持ってきたんだっ」
七海が顔を赤く染めながら言った。
「本当に!?嬉しい、ありがとう哉太っ」
月子が満面の笑みで微笑む。
七海はさらに顔が赤くなり、手に持っていたプレゼントを月子に手渡した。
「これ、俺が作ったんだっ」
月子の手にあるプレゼント。
それは綺麗なアルバムだった。
中を見ると、一番の七海のお気に入りの月子との2ショットの写真が入っていた。
「アルバム?
これ、哉太のお気に入りの写真…。
いいの?」
月子が哉太に聞く。
哉太は照れながら、笑顔でこう言った。
「お前の為に作ったんだ。
…月子に貰ってほしい。」
「哉太…」
月子も顔を赤くする。
「…これから俺と月子の思い出を作っていって、そのアルバムを埋めていこうなっ!」
七海は満面の笑顔で言った。
「うんっ!」
月子も満面の笑顔で頷く。
「じゃあそろそろ錫也も待ってるだろうし、戻るかっ」
七海がそう言うと月子も頷き出口へと向かった。
「悪いな、遅くなっちまって…」
バースデーパーティーの会場に着き、七海はすまないという顔で言った。
だが東月からは何の返事もないし、会場は真っ暗だった。
「哉太、錫也どうしたのかな?」
月子が心配そうに聞く。
「これもサプライズなんじゃねぇの…っておわ!?」
突然電気が灯る。
その明るさに二人は思わず目をつぶってしまった。
「「HAPPY BIRTHDAY、月子!!」」
月子を祝う声。
それは東月だけではなくもう一人いた。
「よ…羊君!!?」
月子の目の前にいたのは紛れもなく、何ヶ月か前に転校した土萌羊の姿だった。
「羊!?
てめぇ何でいるんだよ!!?」
七海はとてもビックリした様子で口をあんぐりと開けている。
「そんなに驚かなくてもいいだろう?
彼女のバースデーなんだから、飛んでくるに決まっているじゃないかっ」
土萌はしれっとした顔で言った。
「ねぇ月子、僕からの誕生日プレゼント受け取ってくれる?
フランスからタルト・タタンを持って来たんだっ」
土萌が嬉しそうにタルト・タタンを取り出す。
「わぁ!
羊君、ありがとうっ!」
月子は嬉しそうに胸に抱く。
「俺からは料理ってことになっちゃったな…。
今度、お前だけに料理を教えてやるよ!」
錫也は笑顔でそう言った。
「料理だけで充分嬉しいよっ
ありがとう、錫也!」
月子は満面の笑みを浮かべた。
「さぁ、一杯食べてくれ!
羊は足りなかったら言うんだぞ?追加でどんどん作ってやるからなっ!」
東月はとてもはりきっていた。
「わぁい!
錫也、だぁいすきっ」
土萌はもうご飯に手をつけようとしている。
「おい羊、コイツの誕生日なんだから食い意地をはるなっ」
作品名:哉太 作家名:獄寺百花@ついったん