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Parfum

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ルートヴィッヒの腕に抱きつきフランシスがぐりぐりと彼の肩に頭を押しつける。ルートヴィッヒが驚いたようにフランシスを見つめ「痛い痛い」と声を上げた。フランシスが言葉を続ける。
「いくらでも作ってあげるよ。いつだってルートが食べたいと思ったときにね。両手一杯じゃ抱えきれないほどのケーキを用意してあげる。もう入らないってくらい、お腹いっぱいにしてあげるよ」
顔を上げフランシスが笑う。ルートヴィッヒは苦笑して「…うん」と頷いた。
「今日は…仕方ないから我慢だな。また今度、楽しみにしているよ」
フランシスも頷く。腕から手を離し、今度はルートヴィッヒの腰に手を回した。ぎゅっと抱きしめ引き寄せる。
密着する体にルートヴィッヒは恥ずかしそうに視線を外した。フランシスが笑う。
そのままフランシスはルートヴィッヒの首筋に顔を近づけた。くんくん、と臭いを嗅ぐ。
洗い立ての石けんと僅かに残るバニラの香り。
ルートヴィッヒはフランシスの額に手を当てぐいぐいと押し返して「なんだ、もー!」と声を上げた。
「お、俺はくさくないぞ!ちゃんと体洗ったんだから!」
フランシスが押し返されて首が変な方向に曲がるのを「痛い!痛いよっ!ルート!!」と訴える。
慌ててルートヴィッヒが手を離し、フランシスは助かったと言わんばかりに大きく息を吐いた。
「別にくさいとか言ってないでしょー!むしろ良い匂いがしたから嗅いでたのに、酷いよルート」
ぶー、と唇を突き出し不満げにフランシスが漏らす。ルートヴィッヒがそれを聞き「だ、だって…」と言い淀んだ。
フランシスがにやっと笑みを浮かべる。恥ずかしそうにまた視線を外すルートヴィッヒの横顔を楽しそうに眺めて言った。
「ねーぇ、ルート。もう一度ルートの臭いを嗅がせてよ。そうしたら今度来るときルートの好きなケーキを山ほど持ってきてあげる。…ね?いいでしょ?」
ルートヴィッヒが視線を戻し「そんな」と眉間を寄せる。少し不満そうに返した。
「俺は食べ物で釣られるような安易なもんじゃないぞ。そんな、でも…あの…うーん…」
にやにやとフランシスが笑う。
「ミルフィーユは?ブリュレもどう?マカロンもミルクレープもクイニーアマンも持ってくるよ?」
むううー、とルートヴィッヒが唸った。コレはもう、彼の欲望と羞恥の戦いに違いない。
フランシスはくすくすと笑い彼が答えを出すのを大人しく待った。
五分たっぷり悩んでルートヴィッヒが答えを出す。くるり、とフランシスに視線を向けもじもじと俯き加減に言った。
「…いい、だろう。ただし、変なことはするなよ」
恥じらいながら答える彼が微笑ましい。フランシスはにこにこと笑いながら「うん、分かった」と素直に答えた。

手を伸ばしフランシスがルートヴィッヒの首に腕を回す。
抱きしめるように引き寄せ、彼の首筋に顔を埋めた。
ルートヴィッヒから香る石けんと甘い香りが鼻孔をくすぐる。フランシスは口元に小さく笑みを浮かべた。

甘い香り。
引き寄せられるのは蝶か、蜂か。
いっそのこと花を摘み取る農夫にでもなってみようか。

フランシスがルートヴィッヒの首筋にそっと唇を寄せる。口付け、ゆっくりと舌を這わせた。
ルートヴィッヒの体がびくり、と大きく跳ね上がる。
その姿が愛おしい。フランシスが楽しそうに笑んだ。
首に唇を寄せ、吸い、甘咬みをする。ルートヴィッヒの頭に手を回し、彼の髪を掻き乱すように手で梳いた。
ちゅ、ちゅと音がする。その度にルートヴィッヒの体が小さく震えた。
フランシスが髪を掻き混ぜていた手をゆっくりと下ろし、ルートヴィッヒの体を ―――
「こ、こら!フランシス!!」
耐えきれなくなったルートヴィッヒが思わず声を上げる。びくり、と体を震わせフランシスが顔を離し手を下ろした。
ルートヴィッヒはその隙にソファーの端まで身を引き、顔を真っ赤にしながらフランシスを睨んだ。
「ば、ば、馬鹿者がっ!!何をしている!!」
ぽかん、とフランシスがルートヴィッヒを見る。可愛らしく小首を傾げた。
「え…?何って、そりゃー…ルートとちゅっちゅしようと…」
ルートヴィッヒがぶんぶんと首を横に振ってがなり立てる。
「だから!変なことをしないといっただろ!それは十分変なことだろうが!」
不満そうに眉尻を下げフランシスが「えー?」と反論した。
「それは違うよルート。これは全然変な事じゃないよ。だって、ルートから甘い匂いがしたんだ、バニラの残り香だよ。そんな臭いしてたらそりゃ、食べたくなっちゃうじゃない。これ変じゃなくて本能。本能なの。だから仕方ないの」
胸を張って反論するフランシスに、ルートヴィッヒが一瞬揺らいだ。
「そう…なのか?」
首を傾げ問うルートヴィッヒにフランシスが大きく頷く。「もちろん!」と自信満々に答える彼に、ルートヴィッヒは納得しかけ ―――
「…って、んなわけあるか!大馬鹿者!」
と大声を上げてぽかり、とゲンコツを喰らわせた。フランシスが思わず変な声を漏らす。
「に゛ゃん゛っ!」
ぷいっとルートヴィッヒがそっぽを向いた。フランシスが頭を押さえながらルートヴィッヒを見る。
「……怒った?」
フランシスの問いにルートヴィッヒが黙ったまま頷く。しゅん、と肩を落としフランシスは「…ゴメン」と呟いた。
「調子乗りすぎました。ごめんなさい。謝ります」
ルートヴィッヒが眉尻を下げ、フランシスを見る。小さく溜息を付いて聞いた。
「反省、してる?」
フランシスが頷く。
「もう、しない?」
その問いには肯定も否定もしない。ルートヴィッヒはうーん、と額に人差し指を宛て唸って見せた。
「……欲を律してこそ、だ。分かるな?フランシス」
ルートヴィッヒの言葉にフランシスが顔を上げる。ルートヴィッヒは肩を竦ませ仕方ない、という表情を見せた。
「まぁ、甘露に弱いのも人の本能、かな。俺も例外ではないし」
フランシスが笑う。ルートヴィッヒも小さく笑った。
フランシスがルートヴィッヒの方へ擦り寄り、再び彼の腕を取った。上背のある彼を見上げ、笑む。
「そ、そ。俺がルートを食べたくなっちゃったのは本能なんだよ」
懲りずにそんなことを言うフランシスに、ルートヴィッヒは苦笑した。
「調子に乗るな」
くすくすとフランシスが笑う。腕から手を離し、フランシスはルートヴィッヒの体に抱きついた。

微かに残る甘い香りは、何故か扇情的に感じた。



食べきれないほどのお菓子を君に届けてあげる
綺麗な庭でそれを食べよう
デザートは君なんてそんなこと、口に出したりしないけどね

甘い香り、誘う蜜
花を摘み取る、僕は農夫
作品名:Parfum 作家名:なおゆき