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発散スケイプゴート

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とうとう限界が来たらしい。
豪華な革張りの指揮官専用椅子を絶対零度の無表情で蹴倒して彼が立ち上がった時、その場にいた数名はこっそりと天を仰いで今後の展開を考えた。
考える事は多くない。
如何にして己への被害を防ぎ、如何にして彼のストレスを発散させるか、だ。

そのために必要なものを次に考える。
自分以外の、生贄という名の高レベルSeeDを一人。
それから、彼が巻き起こす危険なストレス発散法に耐えられる人間を一人。

この場に居る面子がこれである以上、その二人は最初から決まっているも同然であった。



「キスティス・トゥリープ指揮官補佐」
「何かしらスコール・レオンハート指揮官」
フルネーム+肩書きの呼び掛け合いに、室温がぴったり5℃下がる。
空調の整った執務室内が妙に寒いとゼルは思い、今って夏だよねとセルフィが遠い目をして彼らから視線を外した。
とっぷりと暮れた窓の外をバックにしながら書類を片付け、スコールが淡々と指示を出した。
「俺は明後日の0900時から1700時まで任務に出る。任務内容はこれだ」
ひらりと一枚の紙をキスティスに渡し、そこはかとなく据わった眼で、低く真剣なイっちゃった声で説明を続ける我らが指揮官。
「前衛と後方支援を各一人ずつ。人選は任せるが足手纏いにならない者を選んでくれ。指揮官代行はキスティスに。その補佐にシュウを付けるし、そこの暇そうなお祭部隊を思う存分扱き使って構わない。俺が帰ってきた時に書類の山が残っていた場合、そのまま肩書きから代行の文字が取れると思って頑張ってくれ。以上、健闘を祈る」
いつもの無口加減はどこの次元に消えたのかと思うくらいきびきびと喋り倒して、スコールが席を立った。
言うだけ言って執務室から出て行く。

「とうとうキレたな…」
「あと一週間くらいは保つと思ってたけど、キレたわね…」
「はんちょってば、相変わらず心臓に悪いキレ方…」
しばしの静寂が室内を満たした後、キスティスが無言で任務内容書類をゼルとセルフィに向けて差し出した。
それを同じく無言で覗き込む二人。
内容を見て沈黙、スコールの指示を思い出して沈黙。
さらに重苦しい沈黙が世界に誇るバラム・ガーデン、その権力の象徴たる指揮官執務室を席巻する。
キスティスがこめかみを押さえて溜息を吐いた。
「人選は任せる、ですって?」
「キスティは指揮官代行で動けへんのよね…」
「俺とセルフィがキレたスコールのお供に志願するなんて、寿命を縮めるような真似はしねーし…」
何故かって?
それはゼルとセルフィは前回スコールがキレた時、不幸にもその場に居合わせたからだ。
キレられた相手はF.H.でのんびり釣り人をやっていたお尋ね者の元魔女の騎士。
『ガーデンに戻ってこい』
『イヤだ』
以上、言葉での説得終了。
次の瞬間にはガンブレードが鍔迫り合いをしていたと、後にゼルが語る。
罵倒と魔法も飛び交っていたと、セルフィも語る。
キスティスはその説得喧嘩が終わった後に二人から報告を受けたクチだが、F.H.半壊と聞いて卒倒しかけたのは記憶に新しい。
しかも早々に決着がつけば良かったものの、結果は見事な相打ち。
甚大な被害を出しておきながらも無責任にブッ倒れて連行されていった元凶どもの代わりに駅長と学園長にこってりと絞られたのは、何を隠そう、ただ居合わせただけのゼルとセルフィである。
当人たちにとっては最早忌まわしい記憶と言っても言い足りなかった。

閑話休題。

じぃ~っと書類を見つめて先程のスコールの指示を思い返す。
この任務内容で『あの』スコールの足手纏いにならない人間を選べなどと言われても。
スコールよ、あれだけテキパキ指示出しといて何だけど。
「サイファーはんちょとアーヴィン以外に誰かおるんか…?」
「いたらスコールの負担ももう少し減ってたと思うわ」
スコールの足手纏いにならない前衛、サイファー。
同じく足手纏いにならず後方支援が出来る、アーヴァイン。
人選なんて最初から決まってるじゃないか。
三人揃って深く深く溜息を吐いた。
「アーヴァインのヤツ、無事に帰ってこれっかな…」
仲間内で唯一人、スコールの過去のキレっぷりも彼ら二人の壮絶な喧嘩っぷりも知らない陽気な狙撃手を想い、ゼルは窓の外の星空を見上げる。
「帰ってこれたらうんと慰めたるから、今は何も言わんうちを許してね、アーヴィン…」
ゼルと同じ風情で星空を見上げて彼の無事を祈りつつも、自分の身が可愛いセルフィ。
「貴方たち、忘れてるようだけど。明後日は書類残したらスコールがストライキ入るわよ」
「言わんといて! 今必死に現実逃避の最中なんやから!」
休暇返上で机に縛り付けられる事が決定したセルフィが叫んだ途端、窓辺に佇むゼルがぽつりと呟いた。
「あ。星が流れた…」
「………」
「………」

アーヴァインに幸あれ。



 # # #



『任務内容 :
 バラム市街より北北東20kmに位置する森のモンスター掃討。
 備考 :
 調査結果よりアルケノダイオスの巣があると判明。
 近隣住民の安全確保のため、巣の破壊及びアルケノダイオス全滅が望ましい。』


簡潔と言えば簡潔な任務内容書類に眼を通して、薄幸のアーヴァインは密かに溜息を吐いた。
SeeDでも苦戦を強いられるアルケノダイオス、その巣がある森をたった三人で、しかもたった一日で全モンスターのお掃除とは、何とも気の利いた任務だ。
そりゃ「伝説のSeeD」とか呼ばれちゃってるストレス過多のガーデン指揮官が喜々として乗り出してくるってもんである。
掃討部隊の班長は静かにキレた指揮官スコール・レオンハート。
相方…もとい前衛ツートップの片割れに悪名高き風紀乱し委員長兼副指揮官サイファー・アルマシー。
狙撃手という役割が祟って後方支援という名の生贄に捧げられたアーヴァイン・キニアス。
SeeDは何故と問うなかれ。
叩き込まれた訓戒を今は徹底的に恨んでもいいだろうか。
ガーデンの軍用車を森の入口に停車しつつ、アーヴァインは早くも帰りたい思いで胸いっぱいだった。
漆黒のガンブレード、ハイペリオンを肩に乗せてサイファーが先行する。
気兼ねなく暴れられる任務なだけあって彼はそれなりに嬉しそうだ。
それなりに、というのは本来ならこの任務は三人も必要ないからで。
スコールやサイファークラスの人間ともなると、いっそ一人で突撃した方が被害も少なく安全だったりする。
……周りの人間にとって。


「さーてっと、そろそろ大物が出てくるぜぇ?」
バイトバグやらケダチクなどの雑魚モンスターを蹴散らしながら森の奥へと進む三人。
心なしかスコールも機嫌が良さそうに見える。
「ここから先は巣を壊して全滅させるまでノンストップだよね~。一応作戦を決めてから進むかい?」
「必要ねぇよ」
「その必要はない」
アーヴァインの模範的な提案は異口同音に光速で否定された。
「新人SeeDや候補生じゃあるまいし、今更作戦もクソもあるかよ」
「新種のモンスターならともかく、ヤツらの生態は知り尽くしている。俺とサイファーが切り込んでアーヴァインが支援、それで十分だ」
作品名:発散スケイプゴート 作家名:kgn