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Cerisier rêve

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「さむ…っ」

失敗した。と思ったときにはもう遅い。
そう、季節は初冬と呼ばれる十二月で。記憶に正しければ、桜が咲いている季節じゃない。けれどもうここまで来てしまった。フランシスは辺りを見回す。
冷たい風が吹くなか、見えるのは葉を落とし、列を成す木の群れ。地面には紅葉して落ちた葉。
誰かいればいいのだけれど、この寒さからか、誰も歩いていない。元々ここは人通りの少ないところだからあまり期待もしていなかったけれど。
指が悴む。吐いた息が白くなることは無いがそれに近い刺すような冷気に思わず身体に力が篭った。
これからどうしようとか、立ち止まって考えていると凍死してしまいそうな寒さの中、思うのは何故季節を考えなかったのかという数十分前の自分への後悔。
思っても仕方の無いことだとわかっているが、思わずにいられなかった。

「とりあえず、どこか行こう…」

寒さを紛らわせるために、足を進める。紛れるものだとは思えなかったけれど、立ち止まるわけにも行かなかった。
菊の家に帰るというのは考えていない。自分があの家にいると彼に迷惑ばかりかけてしまいそうだから。彼にはどうしても今休んで欲しかった。
あの穏やかな寝顔を見ていたら帰るに帰れないというのもある。起こしたくない。
あの家にいるのはぽちくんだけだ。ぽちくんは自分らが思ってるより本当賢い。飼い主が菊だからなのもあるだろうが、人の心が読めているような気がする。
さすが、彼の家族だ。

「やっぱ寒いなぁ」

頬がじんじんと冷気に触れて痛い。
毎年、この時期に来ると呟いている気がして苦笑い。この寒さの中、ギルベルトがピンピンしていたのに驚いたこともあった。それはもう何年前のことか分からないけど。
フランシスはもぞもぞと指を擦り合わせて下を向いたまま歩きだした。
どこに行くのかわからないけれど、同じ地球、同じ日本。きっと帰れる。元気になった菊が見つけてくれる。そんな思いを抱いて。


作品名:Cerisier rêve 作家名:紗和