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みとなんこ@紺
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Goodtime,Badtime

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「・・・でも良いんですか?大佐のお宅で宴会だなんて」
中尉を駅まで送り届けての帰り道。
ブラックハヤテ号のゲージを膝に抱いて、大きな鎧の身体を申し訳なさ気に後部座席に
押しこめていたアルフォンスの問いに、家主より早く運転席から返事が返ってくる。
「・・・まー普通はありえない話だろーけど。生憎普通じゃないからな、うちの上司」

それはもう、色々な箇所が規格外で時にマジメに困る。いや本当に。

勢い余ってそれ以上続ける前に、助手席から咳払いが飛んで来て話を遮った。
「話が逸れているぞ、ハボック」
「すんません、常々思ってる本音が漏れました」
尚悪い。
「第一自分も普通とやらの範疇に含めようとは厚かましい」
…面白くなさそうに眉を潜める上官の不満は、どうも微妙に違う所にあるらしかった。
「いや、あんたに比べたら全然普通ですって、オレ」
「ボーナス査定が終わった後となったら無駄に強気だな、お前」
次の査定楽しみにしてろ、何て言ってる。うわー大人げない。



・・・取りあえず、目の前で繰り広げられている上司と部下の仁義なき争い(初級編)
を眺めながら、アルフォンスは改めて思った。
寧ろ東方司令部がアレ…というか、変わっているんだろうな、と。
現に、初めて東方司令部を訪れた際は、自分のイメージしていた軍部との余りの雰囲気
の違いに、最初は戸惑うばかりだったし。
国中を走り回っている身としては、報告書の提出や何やらを全部東部で済ませるわけも
なく、他の地方司令部や支部に行く事もある。
ただ、兄は他の軍施設に行く時にアルフォンスを連れて行きたがらない。
東方司令部に行く時は何も言わないのに、何故だろうと思っていたが、一度付いていっ
ただけで、身にしみて分かった。他の場所は、何も知らないでイメージしていた軍と変わ
らなかったから。
何の気負いなく受け入れてくれるのは東方司令部と、中央の一部の軍人たちくらいで。


「・・・ありがとうございます」


するりと、言葉がついて出た。
色々なものを籠めたつもりの言葉に、どれだけのものを拾ってくれたのかは分からないが、
大人2人は笑ってくれたようだった。
「…もうそろそろ先発隊のブレダたちが大佐ん家着いてる頃くらいですかねー」
「2階には上がるなと釘を刺しておくのを忘れたな」
「寄っていきます?」
「ああ」
着いた先は小さな商店の集まった通りだった。
通りの隅に車を押し込め、ちょっと行ってきます、とハボックが運転席から降りていく。
と。行きかけたその時に何か思い出したのか、早足で戻ってきて後部座席の窓をノック。
「どうかしたんですか?」
「いや、大将何が好きかと思って」
どうせならご機嫌取りは好きな物の方が効果的だろ、そう言って彼は笑った。



「…また噂では色々と派手に暴れているようだからね」
また踵を返して通りに向かう背を見送っていると、助手席から静かな声が掛かった。

普段の、司令部で指示している時とも人をからかう時のような響きとも違う、初めて聞く、
ただ静かな声だった。
「どうせなら休んでいきなさい。少しくらいは。・・・休憩も時には必要だよ」
君にもね。
こちらを振り返ってくれない為にその表情はわからない。でも何となく笑っているんだ
ろうな、とは思った。
そしてそれはあまり見る事のない種類の笑みなんだろう、という事も。
パチン、と音がして兄が開ける事のない銀時計で時間を確認すると、彼はやれやれ、と
溜め息をついた。
「半端な時間になったな。これでは宴会の最中に抜ける事になりそうだ」
「え・・・?何処か出掛けるんですか?」
まぁね、とよく判らない返事を返した後、彼ははじめてくるりと助手席から振り返った。
「放っておいて司令部で暴れられても困るのでね。――――後で攫いに行く時、是非協力
してくれないか」
君がいれば文句も言うまい。
「説得交渉役は君にお任せするよ」
そう言って、彼はまた悪戯っぽく笑った。

いつも見せている表情ともまた違うそれは、やっぱりあまり見た事のない表情だったから。
何となく、何となく何にも言えなくなりそうだったのを内心慌てて立て直すと、アルフォ
ンスはコクリと頷いてみせた。

「…被害は最小限に抑えるよう、努力します」

何処かで聞いたその答えは想定外だったのか、彼は僅かにきょとん、とした表情を浮か
べると今度こそはっきりそうと分かる、楽しげな笑みを浮かべた。
「――――是非そうしてくれたまえ」



成果はあと2時間後。










のち。再び司令部に戻ってきていた車は、もう一人の同乗者を乗せて、夜の通りを景気
よくかっ飛ばしていった、らしい。

作品名:Goodtime,Badtime 作家名:みとなんこ@紺