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みとなんこ@紺
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トリニティ

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その、事を。
予想していなかったと言えば、きっと嘘になる。



――――ネス
――――ネスティ



何度も繰り返す。
探すように、確かめるように、何度でも。

・・・ただ。

ただ、響きが、耳に残って。




きっとその時は、それが幸せだとそう思っていたから。




***




「ネス?起きてる?」
ノックと同時に返事を待たずに開かれた扉に、ネスティは視線を落としていた本から顔を上げた。
・・・当然、眉間にくっきり皺を刻んで。
顔を上げれば、扉から覗く、ほにゃ、と全く緊張感なく緩んだ笑顔をかち合った。

…駄目だ。ここで甘い顔をしては。

コホン、と一つ咳払い。
「ノックの意味がないだろう、マグナ。何度言ったら君は」
「起きてて平気?大丈夫?」
人の話は最後まで。
「あ、そうだ。ネス、アメル見てない?」
とベッドの縁までやってきて顔を覗き込んでくるのに、ネスティは喉元まで出掛かった言葉を溜め息と共に飲み込んだ。
「・・・いや、今日はまだ会ってない」


「…ブッ」


途端、扉の向こうで誰かが吹き出す気配と、「ちょっと、いきなり失礼でしょ!」と。・・・直後に上がる鈍い音と微妙に表現に困る呻き声。
――――この無駄にこなれたパターンは。
無言でベッドサイドにまとわっているマグナに視線を向けると、言いたい事は判っているのか、こっくりと大きく頷いて見せた。
「フォルテとケイナが来てくれたんだ」

・・・やっぱり。

言葉違わず顔を覗かせたのは、馴染みの2人で。
2人の為にがたがたと椅子を引きずりだした後、マグナはちょっとアメルを探してくる、とだけ残して出て行ってしまった。
ばたばたばた、と足音も高く遠ざかっていくのを、3人はあっけにとられつつも見送って。
「・・・相変わらず、落ち着きねーのな」
足音もすっかり聞こえなくなって、フォルテは苦笑とも取れる笑みを浮かべた。
「すまねぇな、連絡なしで。近くに寄ったもんだからついでにと思ってな」
どのみち近々来ようとは思ってたんだ、と彼は続けた。
「オレたちゃ先遣隊だぜー。皆でワギャっと押しかけても平気か見てこいってさ」
「アメルからの手紙で状況は判ってても、やっぱり気になって来ちゃったの。ごめんなさいね。――――でも、あらためて、お帰りなさい。ネスティ」
悪びれずににっかり笑うフォルテも、すまなさそうに告げるケイナも以前と変わりなく、眠っていた2年の月日を感じさせない。
わざとそうしてくれているのだろう、2人なりの気遣いを声から察して、ネスティは小さくありがとう、と僅かな笑みを浮かべた。
「…変わりないね」
「おうよ。オレはいつでも絶好調だぜ」
「あんたの事は聞いてないの。・・・それよりネスティ、貴方の方こそ大丈夫?」
相変わらず容赦のないツッコミの前半に反して、こちらに向けたケイナの表情は優しい。
「だいぶ…戻ってきたよ。・・・この頃はちゃんと起きていられる」
「・・・そう」
不自然な間が開いた。
まぁ、あれだ。とか何とかフォルテはこめかみを掻きながら呟く。
「ずっと樹ン中で寝てたワケだしなー。急に起きてろって言われても困るよな」
「・・・もう、あ・ん・た・は!」
デリカシーってもんがないの!?と。
容赦ない怒声と、鈍い音再び。
今度はモロに入ったのか、声なく脇腹を押さえて沈み込むフォルテに、多少は気の毒そうな視線を向けながら、彼は本当に構わないんだ、とケイナに短く告げた。
「漸く以前の時間の感覚が戻ってきたような気がするのは、本当なんだ」
…それに、フォルテの言っている事もあながち外れてはいない。
聖樹として眠りについていた間の記憶は曖昧で、ずっとぼんやりとした夢の世界にいたような気がする。流れていく時間の感覚も何もかもが酷く間延びして。
おかげで戻ってきた当初は、平気で2,3日でも眠ってしまうネスティに、マグナからもアメルからも、また眠ってしまうんじゃないかと気が気じゃなかったと散々言われたことだし。
「それはない、と何度言っても聞いてくれなくて」
そう答えれば、ケイナはフォルテと一瞬視線を交わして。フォルテが無言で頷くのに、彼女はようやく何かを振り切ったように向き直った。
「・・・ネスティ・・・あのね」
本当は言おうかどうか迷ってたんだけれど、と彼女は切り出した。
「2人は・・・変わりない?」
2人・・・、というとこの場合マグナとアメルの事だろうか。
「変わりない…とは?」
「・・・貴方が、いなくなった後、ね・・・」

作品名:トリニティ 作家名:みとなんこ@紺