トリニティ
「ネスが元気になったらさ、皆に会いに行こう。ファナンと、レムル村に。あ、あとね、ネスが寝ちゃった後、助けてくれた人たちがいるから、その人たちにも会いに行こう」
きっとネス、メチャメチャびっくりするよ。
しっかりネスティの右手を引いて、上機嫌のマグナが告げると、
「ぜーったい、びっくりしますよね♪」
左手に手を重ねて隣を歩く、アメルまでがうきうきと続ける。
「アメルまで…?」
「ね、アメル?」
「うん、マグナ」
「・・・君たち・・・」
…やれやれ。
まるで子供が二人だな、と。溜め息をつきかけた所で、こちらを覗き込んできていたマグナと目が合う。
「世界の、王サマに会いに行こう?」
「…何なんだそれは…」
「それじゃーサイジェント、ですね」
「サイジェント!?西の果てじゃないか」
会えるまで、ナイショ。と、二人で笑う。
そしてその言葉通りにネスティがメチャメチャ驚かされるのは、もう少し先の話。
明るい陽の光の中を、渡る風に新緑の匂いが運ばれて来るのを感じる。
誰かの待つ、家へと向かう。
繋いだ手から、二人の暖かさが流れ込んでくる。
…その時、唐突に駆け抜けていった衝動に、僅かに身体が震えた。
ただ。
ただ、温もりが確かに、この手に残って。
――――よかった。
ここに、戻ってこれてよかったと。心から。
きっと今は、これが幸せ。
Fin