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オミ[再公開]
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novelistID. 829
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夢をみたあと

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 彼女は"いる"。僕たちは彼女の暴走を抑え、彼女の世界を守るために居る。同志とは意思を同じくしたいものだが、相容れなければ争いは勿論起こるもので、あらゆる縛りや派閥が生まれる。
 ――(恐怖や義務で彼女を割り切る人間達を正そうとは思っていない。しかし、僕には一段階深く抱いた別の感情があり)――

「実際にそういう場面を知っているとどうにも複雑で、敵意あらざるとも思うところはありますよ。色々とね」
「……すまん」
「少々複雑な事情に聴こえました? もしかしたら、僕は涼宮さんに恋焦がれて胸を痛め涙していた…… そんな青春に満ちた夢だったのかもしれませんね?」
「アホか」

 僕なりの弁解はこれで終えたし、彼も察してくれた筈。もう一度笑い直せばいい。
 彼が短く嘆息するまで待ってから、袖で右目を拭った。涙の跡が乾燥して少し痒い。きつい視線が浴びせられているのを感じて彼を見上げると、少し唖然としたような不思議な表情をしている。

「……なんでしょう」
「いや、お前ならハンカチとか持ってるのかと思ったのに」
「持ってますよ」
「使えよ。ハンカチ」
「上着のポケットに入れてあるもので」

 ベッドの横に立つ彼を乗り越えなければ、椅子にかけてあるブレザーには辿り着けない。彼は辺りを見回して僕のブレザーに目を留めると、立ち上がってベッドの横を空けてくれ……、僕のブレザーをその手に引っ掛けて持ってきてくれた。

「ほら」
「これは、お手数をお掛けしまして」

 取ってきてもらうつもりはなかったんだけどなぁ。と僕らしくないぼやきを胸の内で呟きながら身を起こしてブレザーの内ポケットを漁ってハンカチを取り出した。

「お前はさっきから、どうも意外性を発揮しすぎだな」
「急に何のお話です?」
「もっと几帳面かと思ってた」

 彼の視線の先はどうやら僕のハンカチのようだ。言われてみれば、普通にたたんではあるけれど少々ポケットに強く詰め込まれた風に、たたんだ隅が大きく潰れていた。

「結構、こんなもんですよ……お忘れかもしれませんが、僕も一応普通の男子高校生なんです」
「そうか」

 今後はこういう細かいところもまた気をつけた方がいいようだ。ハンカチをたたんだまま、両手でぴしっと一度伸ばし直して目頭と頬を押える。

「涙を拭いながら普通の男子高校生とか言うな」
「あは……本当に困ったところを見られたものです」
「俺も変なところ見ちまったよ。気味が悪い」
「お互い様です」
「俺は何もしてねーよ」

 否定の言葉を発しながら彼は丸椅子に戻り、足を組んで座った。

「そうですか? 主観ながら、なんだか優しかった、と思っているのですが」
「気持ち悪い事を言うなとあれほど」

 今度は僕が行く番のようで。ベッドを降りて上履きを履き直し、彼のすぐ正面に陣取った。

「手、どうしたんです?」
「顔、近いって」

 包帯を巻いた手を覗き込んだだけだったが、僕はよほど普段の素行が悪い子に思われているらしい。今度は彼の顔に視点を合わせてみた。

「バレーでひねったんだよ。だから顔近づけるなって」
「それは大変です。本当にひねっただけですか? ちゃんと手当てしました?」
「手当ては先生がやってくれたからな。俺は授業終了まで保健室で留守番だ」

 彼は言葉を切ると頭を少し後ろに引いた。

「古泉。顔洗ってきた方がいいぞ」
「ああ……はい」

 うんざり気味の彼を覗き込む遊びも程ほどにしておいて、僕は洗面所に向かった。蛇口から勢いよく噴出する水を両手に溜めながら、「本当に手、痛くないんですか?」ともう一度聞いてみた。

「痛いに決まってるだろ」

 そうですよねー、と答えたかったのに生憎と僕の顔は水を浴びている最中で。泣いて熱くなっていた顔が冷却されて、またあの夢を思い出す。終わったわけではないけれど、少なくとも彼が居り、こうして話している今は『違う』んだ、と安堵する。
 …… ……

「すみません」
「ん? どうした」
「お恥ずかしながら、うっかりです。ハンカチを取っていただけませんか」
「さっきまで持ってたのになんで忘れてるんだよお前!」

- end -
作品名:夢をみたあと 作家名:オミ[再公開]