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誘導と選択

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 翌朝ウィルが目を覚ますと、心なしか蒼白な顔をしているスウォンが開口一番こう聞いてきた。
「…僕何にもしてないですよね!?」
「………してないよ……」
 あくびを一つして、ウィルが答える。
「ただなんだか放してくれなかったから、君が。」
「…ごめんなさい…」
 心の底から反省している様子のスウォンを見て、ウィルが軽く笑う。
「ご飯にしようか。」
「…!はい!」
 しゅんとうなだれていたかと思えば、満面の笑み。
 スウォンには勝てないなぁと、ウィルは思った。
 ベットから降りたウィルに、思い出したようにスウォンがきいた。
「そういえば昨日、紋章がどうとかって、聞いてませんでしたか?」
「あ、うん。きいたよ。」
「そこらへんから記憶がないんですけど…」
 なんでもないんだと苦笑して、ウィルがスウォンを朝食に急かす。
「なんて言われたのかあんまり覚えてないんです…」
「ほんとになんでもないことなんだよ。」

 服を着替えたスウォンが、まだ気になるらしくエレベーターの中でもう一度きく。
「なんてきいたんですか?」
「なんでもないって。」
「それでも知りたいですよ。」
「…ほんとになんでもないよ。」
 困ったように笑って、ウィルが答えた。
「『その紋章は、君の憎しみの対象にはなりえないの』かって、きいたんだよ。」
「……?」
「ね、どうでもいいことだろう?さ、レストランに行こうか。」
 まだ悩んでいる様子のスウォンを無視して、ウィルは先にエレベーターを降りてしまった。


「始まりの紋章は確かに僕とジョウイを敵対させるきっかけだと思うけど、だからと言って僕はこいつに流されてるだけじゃ嫌なんですよ。ジョウイがそうだとも思わない。ようは、こいつが僕とジョウイを誘導してこの場所に立たせたところで、僕らには選択できる権利があると思います。」

「……どしたの急に?」
 食事中、スウォンが急に今までしていた会話とはまったくつながらないことを言うものだから、ウィルは困惑した表情でそう言った。どこにつながるのかわからない回答をした後、スウォンはまた朝食を食べ始める。

「だから、僕はこいつを憎みませんし、こいつのせいでジョウイと僕が争わなきゃいけないんだと思いたくない。こいつが宿らなければとは思わないんですよ。」

 サラダのトマトを一口食べて心底不味そうな顔をしたスウォンを見て、ウィルはそれが自分の質問の回答だと気が付いた。
 そして、可笑しくて笑った。
「あ、笑ったー。何ですか人が真面目に話してるってのに…まぁいいですけどね。勝負は僕の負けだったんでしょうし。」
 拗ねて頬を膨らませるスウォン。ますます笑いが止まらなくなるウィル。
「僕君が好きかも。」
「かもじゃなくて断定系でどうぞ。」
「僕は君のその考え方に深く好意を覚えます。」
「それのみですか!酷い!」
 ウィルが言った。

「君は紋章を選んだんだろうね。選ばれたんじゃなくてさ。」


御伽噺の紋章は、時に人を壊し、殺し、滅ぼした。

だけれど与えられたものは強大な力だけで。

それを、様々な選択肢を選んで使う人間こそが
大いなる戦乱の源。


「好きだなぁ…」
「…もっかい言ってください!もっかい!」
「僕は君が…」
「うんうん。」
「好きだな。」
「大サービスですね!」
「うん、なんだか負けた気がするからね、君に。」


大事なのは選択。


「ところで軍師さん君の事捜してるみたいだよ。」
「じゃあ逃げますか。」
「いいの?」
「そろそろシュウにも休んでもらわねば。」
「仕事を?」
「僕がやる雑用探しを。」
作品名:誘導と選択 作家名:きゅう