Cerisier rêve
チラリ、とフランシスの顔を覗きこめば、頬を赤く染めて下を向いていた。それがヤケにかわいらしくて、フランシスの手を包んでいた一周り小さな両の手を離して、身体ごと抱き締めた。
「な、え、え…っ。き、菊ちゃん…?」
「少し、このままで居させてください」
暖かい体温と、トクントクンと聞える鼓動。そして、微かに人工だけれどとても自然なバラの香りが鼻をくすぐった。
ぎゅぅ、とその抱きしめる腕に力を込めて、そのまま肩に顔を押しやる。
少し戸惑った反応を浮かべるフランシスに菊の頬が緩むのを感じた。慣れているはずなのに初々しい反応に少しの疑問を持ちながら、菊は瞼の求婚を一生懸命拒んでいた。
カチリ、カチリ、と秒針が音を立てる。
「ごめんなさい…」
ぎゅっと抱きしめた菊。その身体をおずおずと逞しい腕が包む。ふわっ、と篭る力。何処と無く緊張しているようなそんな雰囲気で。
初々しいような、そんな反応に首を傾げたくなるけれど、今はこのまま、体温に身体を委ねていたい。そう脳の片隅で思ったのを最後に、菊の意識はどんどん遠のいていくのであった。
「き、菊ちゃん?」
心臓の高鳴りが抑えられない。返事の無い菊を見て少し目を丸くしたフランシスだが、先触った菊の肌の疲れ、眠たそうな瞳、それは本当些細な違いだったけれど、それに気が付いたフランシスは苦く笑って、菊を抱き上げた。
*まだ校正中なのでこんな感じです*
作品名:Cerisier rêve 作家名:紗和