Secretary
この間、途中から閉まらなくなったドアから無理矢理に入り込んだせいで、白いセーラー服に赤い錆の色が移ってしまった。お母さんに怒られるな。
ゆかりは、11歳の時に見た、あの幸せな風景を透明な水槽に閉じ込めることにした。目を閉じて思い出せば、いつでも見ることができるように。水槽に蓋をする前に、北岡と吾郎の家に入り込んだ。三島は片を付けたのだろうか。もしそうなら、自分もそうしなければ。
上と下を繋ぐ階段の真ん中に立つと、ゆかりは声を上げた。
先生、ありがとうございました
吾郎ちゃん、ありがとうございました
おかげで私もお母さんも、幸せです
ありがとうございました
窓から入り込んだ陽射しが答えるように、きらきら閃いた。
2006.
了.