Secretary
「あと三十秒で着く、位置捕捉は」
『ポイント6まではできていますが、今の地震で磁場が乱れてレーダーが使えません』
性能がいいのも困りものだ、と一人ごちた。
「ポイント6だな」
追い込むように指示したポイントまではまだ大分あるが、できるならここで仕留めるつもりだ。三島はアクセルを踏み込み、連絡のあった地区へ入った。地価歩道の入り口を過ぎポイントに一番近い道路へ差し掛かった時だ。
動かない足を引きずりながら、セーラー服の少女が車道へ転げ出てきた。その後から手負いの獲物を追うように緑色をした醜悪な怪物が姿を見せる。
急停止した車から飛び降りるようにして、三島は左脇に下げたホルダーから銃を抜いた。硬い外皮を持つワームだが、急所を確実に仕留めさえすればいい。秘密裏に行動しているZECTとしては、この現場を少女に見られるのは良いことではないが、今はそれどころではない。
ゆかりは、道路に這ったまま立てないでいる自分を怪物から助けようとしているらしい男の姿を仰ぎ見た。男はインカムに向かって何か話している。
知ってる。この声 あの眼 手
ゆかりは、男のスラックスを掴んだ。三島は驚いてゆかりを見下ろした。助かる、と安堵したのだろう。いやそれだけではない何か、別の………
「ごろうちゃん?」
言ったなり、ゆかりは気を失いその場に崩れた。
予定ポイントから急行してきた班に指示をし、三島は片を付けるとゆかりの身柄確保と残務処理を任せ本部へ戻った。