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続きそうな気の迷い

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はっきり言おう。お互いにひどい顔だ。拳には血がついているし、綱吉もXANXUSも唇は腫れ上がって鼻血が出ている。
XANXUSは唇どころか瞼や頬も腫れてしまって、犯罪者面が向上……もとい男前が台なしだ。
綱吉も似たり寄ったりで、左の奥歯がぐらついていそうな気がしている。
血の混じった唾を床に吐き捨てておもいっきり顔をしかめた。
「この……頑固」
「どっちがだ。意固地になるのも大概にしやがれ、カス」
双方ともに片膝を突いた情けない体勢ながら、綱吉とXANXUSは険悪な眼差しでにらみ合った。本人たちは真剣である。
喧嘩の原因は、まあ、あまりおおっぴらには言いたくない。方針と見解の相違というやつだ。
とある目障りなファミリーの処遇をヴァリアーにまかせようとして、綱吉は気まぐれに一人であちらのアジトにまで足を運んでみたのだが、これがさっそく失敗だった。
XANXUSとの交渉が平行線のまま進み、うっかり物騒なボディトークに発展してもとめてくれる者が誰もいない。
ボンゴレ本邸であれば、度を越してエスカレートしてきた場合は守護者の誰かがとめてくれる。
もしくは一般構成員たちの戦々恐々とした視線に気づいて綱吉が引く。
だが、ヴァリアーのアジトにおいてはそれがなかった。
ストッパーはいないわ下っ端はさりげなく逃げ出すわ幹部連中もこっそり姿を消すわで、もはやアジト全体が二人の貸し切り状態ボコり合いパラダイス。
とめる者なき大喧嘩は暗黙の了解で炎を使っていなかったが、そのあまりの壮絶な怒鳴り合い殴り合いにヴァリアー一同はドン引きして逃亡を図ったらしい。
いつもは本邸でやるせいか――かわいそうに――ここの彼らには免疫が少なかったのだろう。
もちろん喧嘩に熱中している二人はそんなことを気にかけていなかった。邪魔が入らないならそれはそれでいいのだ。
頭に血が上っているから叫ぶ殴る蹴る投げる。顔も遠慮なく狙った結果がこの通りのご面相である。
XANXUSの執務室は目を覆わんばかりの惨状を呈して、二人はというと――そろそろへばってきていた。
当たり前だ。かれこれ二時間はやり合っている。
ちなみに、ご立派な壁時計はつい先ほど殉職を果たした。
綱吉が投げつけたいかつい文鎮をXANXUSがよけたため、代わりに壁時計が直撃を喰らったのだ。合掌。
そんなわけで正確な時刻はよくわからない。綱吉の腕時計も床に叩き付けられた際に衝撃で壊れていた。

「いい加減にしろ……!」
「まんまてめーに返す」
「お前はどうしてそう暴力的なんだー!」
「オイ……それもまんま返すぞ」
絶賛お互い様である。
綱吉にとってみれば、XANXUSはまったくもって聞き分けのない暴君だ。頭がいまだにガキだ。成長が見えない。
言ってわかってもらえないなら綱吉でさえ殴って言い聞かせたくもなる。そのくらい絶望的な聞かん坊だった。
一方、XANXUSからしてみれば、綱吉はいっそ清々しいほど偽善的な暴君だ。頭がいまだにボケている。むしろ寝ぼけている。
言うことは自称平和主義に基づいた生っちょろい寝言なくせして、やることは過激な実力行使という、まさに平和主義の暴君。
そんなアホの寝言に付き合うくらいだったら、最初からやることをやった方が手っ取り早い。
和平交渉だの降伏勧告だの、七面倒くさいプロセスは形式だけでいいのだ。
ねばってやる必要まではないとXANXUSは考えているわけで、要は、この辺に今回の平行線が存在していた。
痛みをこらえて立ち上がった綱吉の足元はおぼつかない。同じくXANXUSも立ち上がって、やはり若干ふらついている。
今日は久々にここまでやり合った。そして、ここまで来たら拳で決着をつけるのみだった。
話し合いがダメなら殴り合いだ。綱吉は一応話し合おうとしたのだ。……わりと早くブチ切れた事実はあるが。
「バカXANXUS!」
「ガキみてーな罵倒しかできねーのか、てめーは!」
「うっせーよ、この強情っ張り!」
「そりゃてめーのこったろうが!」
互いに体術は相当なレベルなのだが、如何せん口論が相当な低レベルだった。
貸し切りが幸いして誰にも聞かれていないことはおそらく救いになるだろう。
しびれを切らした綱吉が勢いよく踏み込み、XANXUSは腰を低く落として飛んできた回し蹴りを片腕で防いだ。
その腕を綱吉の足にくるりと巻きつけ、逃げられないように抱え込む。
「寝ちまえ」
「お前がな」
壁に投げつけてやろうと綱吉の足ごと身をひねると、それを見越していた綱吉は自由な方の足で先に床を蹴った。
振り回される力に逆らわず浮き上がって、XANXUSの鳩尾を踏み抜くように蹴りつける。
そうして容赦のない一撃をもろに食らったXANXUSはその場に崩れ、同時に綱吉も支えを失って床に転がり落ちたのだ。
「っ、ぐ……っ」
「いたたたた……!」
つまり、二人そろってもんどり打って再び床に逆もどりである。
なかなかに無様だが、苦痛にうめくXANXUSはすぐには動けず、腰を強打した綱吉もけっこう涙目だ。
それでも綱吉は四つん這いでXANXUSのもとへと這っていき、鼻血の跡の残る鼻先に指を突きつけて宣言してやった。
「オレの、勝ち!」
「く、そ……!」
「今回はお前に従ってもらうぜ。ほれ、返事」
「…………」
非っ常にイヤそうな凶悪極まりないツラが、人を殺したそうな眼をしてようやく渋々うなずいた。
これで勝負あったということになる。今日はまたずいぶんと長引いたものだ。
「ったく、何つー手のかかるヤツだよ……」
「てめーにだけは言われたくねーぞ」
またまたにらみ合いになりかけたものの、遺憾ながら二人とも気力体力が尽きている。
XANXUSがごろりと仰向けに転がり、綱吉は己の鼻を袖で拭った後、何気なくXANXUSの顔を覗き込んだ。
ふと、目がばっちり合った。



――リンゴーン。



何だその音。え? 鐘? なんで鐘? ていうか何がどうして少女漫画的な効果音が今この瞬間に聞こえたのか。
そう、少女漫画ちっくだ。あれだよ。男と女が目の合った瞬間に恋に落ちるーみたいな超お約束なやつ。
お約束っていうより、もう古臭いの域だろう。古典的。雷が落ちたとかいうのも古いんじゃないか。
(…………………………んあ?)
麻痺していた脳ミソが遅まきながら現状の把握という役目を思い出した。
鐘が鳴った。しびれるような震えが背筋を走り抜けた。それから体に微妙な異変がある。
少なくとも恋に落ちたわけではないことはわかるのだが(相手はXANXUSだ当然だ)、へたをするともっとタチが悪いかもしれない。
心拍数が上がる。喉が干上がる。体温も上昇中らしく体がやけに火照る。そして無視できない飢餓感がある。
飢えて渇いて、欲しくてたまらない。満たされたい。すっきりしたい。身も蓋もなく直球でいえば――出したい。
(……待て。待て待て待て)
それはない。ありえない。おかしい。あらゆる意味であらゆることが大変おかしい。
綱吉は青ざめた。いや頬を赤らめた。と思いきや、青くなったり赤くなったりを繰り返した。
心をスルーして前触れもなく起きた体の変調に、めいっぱい混乱しているのだ。
「う……」
「…………んだこりゃ」
作品名:続きそうな気の迷い 作家名:kgn