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続きそうな気の迷い

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じり、と尻で後ずさった綱吉。XANXUSはのっそり身を起こして、とまどいの極致にいる綱吉の手首をつかんで引き寄せた。
「うわあっ!?」
離れようとしたのに接近してしまって、綱吉は力いっぱいうろたえる。
つかまれたところから体中が燃えてしまいそうな熱を感じて、余計に自分で自分がわからなくなってきた。
「な、ななな何だこれっ!」
「……変だな」
「わー! わー! 待て離せしゃべるな近づくなああっ!!」
「おかしい……。マジで何なんだ……?」
「うわあああ! 離せって! 離してー!!」
だんだん懇願調になってきた綱吉をよそに、XANXUSは綱吉をつかんだまましきりに首をかしげている。
やがて埒が明かないと思ったのか、狼狽しまくる綱吉をさらに引き寄せて顔を覗き込もうとした。
「うひゃあっ! み、見るなー!」
「いや見ねーとわかんねーし」
「なな何がだよっ!? ホント、離れてくれ……!」
ぎゅっと瞼を閉じてXANXUSの視線から逃れる。顔を背けたいのに、喉元も掴まれてしまってはどうにも逃げられない。
綱吉は信じられない出来事に直面して、ほとんどパニックを起こしていた。
そりゃそうだ。何が信じられないって自分が本気で信じられない。
ばくばくうるさい心臓はちっとも治まってくれないし、体の変調はいやますばかりだ。
「あー……」
そんな綱吉をまじまじと観察して、XANXUSは不意に手を離した。
途端、綱吉はころがる勢いでXANXUSから退避する。一気に壁際まで逃げた。
「なっ、なっ、何なんだよこれえ……!」
動揺が強すぎて涙声になっていることにも本人は気づいていない。火照った体。赤い顔。潤んだ眼は当惑に揺れている。
飢えと渇きが精神を苛み、綱吉はいっそのこと恐怖感をおぼえていた。
「……わかんねーな」
XANXUSはまだ首をかしげている。が、それはある程度答えを出したからこその疑問だった。
綱吉に比べればXANXUSにはなじみのある感覚だったのだ。
「って、あ、あれ? ……何? もしかしてお前もこの変なのになってんのか?」
「変なのって……てめー、まさか」
XANXUSの表情があきらかな驚きに染まった。綱吉にはなぜ驚かれているのかよくわからない。
「そりゃ、変は変だが。――まさか本気でわかってねーのか?」
「だ、だから何が? わけわかんねーよ……っ」
苦しい。熱い。今すぐどうにかしたいのに、どうしたらいいのかろくな対処法が浮かんでこない。
我が身に何が起こっているのか、それはわからなくもないけれど、わかるからこそなぜこんなことになっているのか混乱する。
XANXUSは少し考え込んでから、ちょいちょいと綱吉を手招きした。
「い、イヤだ……! 何か今お前に近づけねー!」
「んなわけねーだろ。いいからちょっと寄れ」
「イヤだー! 帰るっ! 屋敷に帰るー!」
半泣きでダダをこねはじめた綱吉に、XANXUSはめずらしく妥協した。自分が近づくことにしたのだ。
「うぎゃああ! 来るな寄るなー!」
「ああもう、うるせーな……」
這いずって逃げようとした綱吉の足首をつかんで引っ張り寄せ、今度こそ逃げられないよう綱吉を下敷きにして押さえ込む。
平たく言うと押し倒して組み敷いた。綱吉は精一杯暴れるが、体力はお互いエンプティでも体格の差で負けてしまう。
真上にXANXUSがいるので、可能な限り横を向いてかたくなに眼をつむった。
「カスめ。眼え開けろ。経験少ねーらしいてめーのために少しは教えてやる」
「……はァっ!?」
びっくりして反射的に瞼をこじ開けてしまった。
XANXUSが親切っぽいことを言うなんて、やっぱりこの異変はあらゆる意味でありえない。
ぱちくりまたたいて自分がボコった面を見上げると、また飢餓感が強くなってきて腹の底で火が燃え盛った。
本当に、何なのだこの熱は。

「綱吉」
「な、何だよ……?」
「てめー、今サカってんだろ」
思考が停止した。
「………………もう一度」
「サカってんだろ。欲情してる。ヤりたくてたまらねーって顔してるぜ」
思考がさらなる停止を強いられた。
……いや、それはまあ、わかっているのだ。綱吉も正常な成人男性だ。己の体が昂って劣情を催している。
人に指摘されるのは恥ずかしいが、そこまではちゃんとわかっている。わからないのは原因だった。
「さっき目が合ったよな。で、てめーがいきなりサカった」
「み、認める。認めたくねーけど」
「オレだって認めたかねーよ」
待て。何やら今ものすごーくいやな予感がした。
実のところ、綱吉は混乱に混乱を重ねていてXANXUSのことをよく見ていなかったし、XANXUSの言葉もきちんと聞いていなかった。
顔を見ると、声を聞くと、存在を意識すると体内の火が燃え上がる。飢えて飢えてしかたがない。
(だから、何がどうなって……!)
この欲情のトリガーが――XANXUSなのか。もう完璧にわけがわからない。
まったくだと言わんばかりにXANXUSもうなずいた。
「変だよな」
「変すぎだろ……! 嘘だ嘘だ絶対嘘だー!!」
「ああ、嘘みてーだぜ。ありえねー」
「だろ!? お前もそう思うよな! 意見が一致したところで、もういいだろ離れろー!」
「まあ待て、おちつけ」
「なんでお前はおちついてられんだよ! おかしいよ!」
じたばたもがく綱吉を押さえつけたまま、XANXUSはまだ何事かを考え込んでいる。綱吉は疲労も忘れて引き続きじたばたした。
それが数分も続いたか。いい加減、真剣に体がつらくなってきてめまいさえおぼえる始末だ。
徐々に抵抗の弱まってきた綱吉を見下ろし、XANXUSはおもむろに口を開いた。
「綱吉、いまだに気づいてねーようだから言ってやるが」
「……何」
「てめーと同じことがオレにも起きてる」
思考停止、三度目。
今回は長く停止していた。今になってようやく綱吉は理解を始めている。
XANXUSがやたら首をひねっていたのは、何も綱吉の異変についてではなかった。
自分の身に起きた異変について不思議がっていたのだ。
綱吉よりも動揺していなかったのは、これはもう単純に経験と性格の差というやつだろう。
歳の差もあるしXANXUSの方が普通に遊び歩いている。
ボス業に忙殺されてろくに女の子といちゃつく暇のない綱吉とは、その辺が大いに違った。
「な……あの、え……?」
まともに言葉が出てこない。同じこと。綱吉は欲情している。生々しいことだが――この男に。
全身全霊をもって認めたくないというのに、体がそう訴えるのだから否定しようもないだろう。
で、何の因果か、綱吉と同じことがXANXUSの身にも起きているというのだ。
ごくりと唾を飲み込む音がやけに響く気がした。深紅の瞳を見上げてしつこく青くなったり赤くなったりする。
「え、っと……ざ、XANXUS? お前もって、その……サカってる?」
「そうだな」
さらっと肯定された。いやな予感が目盛りを振り切りそうな気配だ。
よくよく見ると、たしかにXANXUSの眼はぎらついている。飢えた男の顔つきだ。
しかし余裕こいて見えるというのも、色々な差がもたらした結果なのだろうか。だとしたら男として多少悔しいものがある。
作品名:続きそうな気の迷い 作家名:kgn