二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

闘神は水影をたどる

INDEX|1ページ/29ページ|

次のページ
 

1.フェリド・イーガン


 海上に立ち上る積乱雲が午後の夕立を予感させた。紺碧の海はかわらず光り輝くも、巨大な蟹が泡を吹き続けるような、真っ白い雲との境がときを追って色濃くなっている。
 風に混じる潮の香の中に特有の匂いを嗅ぎあて、フェリド・イーガンは犬のように鼻を鳴らした。黒の双眸に、年頃の青年らしい、精気溢れる力がこもる。
「邸に」
 短く言ったその言葉に、背後に控えていた数人の男が振り返った。彼らは皆、揃いの白地を基調にした、オベル王国海軍の制服を着ている。
「小一時間もすれば雨が降り出すと伝えてくれ」
 庭を埋め尽くさんばかりに干されていた兵士たちの白い礼服を思い浮かべながら、フェリドは言った。男たちは合点したように、苦笑めいた色を唇に宿した。
「それから、イーヴェの岩礁に救助願いでも出している民間船がなければ、ただちに航路封鎖しろってな」
 フェリドの暢気な言葉につられていた男たちは、しかしうってかわって表情を引き締めた。
 申しつけられた一人がぱっと屈み、黒い色紙の巻きつけられた棒を岩場の隙間に突き立てる。燃した。ぱしゅっと小さな炸裂音とともに、勢いよく火の玉が舞い上がった。信号弾だ。オベル主港上空に、警戒を報せる炭色を走らせる。
 白波のあいだに見える影から目を離さず、フェリドはにやりとした。陽光の下にそぐわぬ鋭さを帯びた黒目が、ぎらりと燃える。
「おまえたちはここに残って引き続き監視に就いてくれ。残りは俺と来い」
 そう言い置くやいなや、フェリドはもう、ぽんと岩を蹴っている。
 ここは、それなりの高さのある岩山である。海面との距離に、足の竦む者もいるだろう。だからこそオベル海軍の索敵拠点とされている。
 身軽には見えない長身が二度だけ足場を使って飛んでゆくのを見送ってしまった男たちは、はっとなって、慌ててその後を追った。残された者は熱せられた岩肌にうつ伏せになり、双眼鏡を覗いた。海面を反射する陽光を直視しないよう、慎重に対象を探し当てる。
 そこには一隻の小型舟が、突きだした岩礁に隠れるようにして浮いていた。
作品名:闘神は水影をたどる 作家名:めっこ