二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

闘神は水影をたどる

INDEX|11ページ/29ページ|

次のページ前のページ
 


 少年兵たちは一人、また一人と、突然言いがかりをつけてきた少女をぽかんとして見つめた。
「リグド兄様を悪く言うな」
 ロゼリッタはそう言い放ったのである。
 言われた当の少年は、餌を求める魚のように口をぱくぱくとさせた。
「悪口なんか言ってないだろ」
 少年はロゼリッタの剣幕に狼狽えながら、周囲の仲間に確認するようきょときょとと目線を流した。目があった者はしきりに頷いたり、なぜ彼女がそんなことを言い出したのかと首を傾げたりした。ロゼリッタは唇を噛んで視線を逸らした。
 なぜ。なぜと問われればそれは、少年が長兄の名を次兄の引き合いのようにして仲間に話したためである。さらに良くないのは、彼女が彼の言葉裏に、フェリドに比べてリグドのほうを責める暗さを感じ取ったことだ。もちろん、両者とも大好きな兄である。しかしロゼリッタには、まったく軽口の域を出ない、この小さな貶めにまで過剰反応してしまう理由を、彼らにうまく説明することができない。
「ロゼリッタ四等!」
 よく通る声に一喝され、呼ばれた本人はもとより、全員が自分の名を呼ばれたように肩を震わせた。
「二度めだ。ここはもういい。機関部の掃除をするように」
 リグドが掌を叩き合わせた。声と同じくその高く響いた音は少年兵たちを動かすには充分だった。
「リグド一等……」
「ニコ、おまえもだ。二人でやれ」
 揺らいだ大きな黒目が訴えかけるのを断ち切って、リグドの注意はロゼリッタの隣で縮こまっていた少年に向けられた。ニコはまるで本当に自分が一等を侮辱したために罰を受けるような心地になって、肩を落とした。
 ふたりは敬礼をし、仲間たちの視線を背中に感じながら保管庫を離れた。
作品名:闘神は水影をたどる 作家名:めっこ