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至近邂逅のストリートファイター

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 そのビル一階に、このご時世には珍しくブラウン管テレビのみを扱った専門ショップが経営されている。店名は「ブラウン管工房」という。

 中は所狭しとブラウン管テレビが並べられている。上から下まで右から左までと、これだけ多いとさすがに精悍だ。ブラウン管ブラウン管と大変わずらわしいが、本当にそれだけしかないのだからしょうがない。

「俺の分身なブラウン管テレビちゃんに何があったんだ? ええ?」

 そして目の前二センチ先で凄んでおられる筋肉隆々なこのお人こそ、ブラウン管工房店主『天王寺裕吾』その人である。あだ名もそのものズバリ、ミスターブラウン。このビルのオーナーでもある。

 ここの二階には我々がたむろする未来ガジェット研究所がある。

 そのラボで日常的に使っているブラウン管テレビの調子が悪くなったので持ってきたのだ。そもそも押しつけるように買わされた一品なのだが、部屋に置くだけで機嫌が良くなって賃貸料と相殺されることがままあるため、しぶしぶ使っている。

 そのありがた迷惑なテレビが目の前に無造作に置かれていた。

 今日は雷が鳴っているほど天気が悪い。そのため故障ではなく電波状況かと勘ぐったが、どうやらそうではないらしい。時間でがたが来たんだと思う。それにしてもこの悪天はなんなんだろう。悪いことが起こる兆候みたいであまり気持ちの良いもんじゃない。

「もっと大事に扱えっていっただろ?」
「いや、そうはおっしゃいますがね、ミスターブラウン。老朽化にはかないませんよ」
「なに生いってやがるんだ。そんなものは愛があればなんとかなるっ」
「いや、なっななっなりませんよっ!」

 胸ぐらを捕まれたまま、力任せに前後に揺さぶられる。肩を掴んでまゆりによくやるアレだが、あまり気持ちのいいもんじゃないな。今度からは自重しよう。

 それにしてもいつまで続くんだ。

「み、ミスったっぶ」

 ろくに喋ることすらままならない。脳しんとうでも起こしそうだ。力だけは有り余ってるんだからタチが悪い。止めるタイミングすら分からないか? 脳の中まで筋肉なんじゃないの。

 プルルと着信音が鳴った。天の助けだった。

「ちっ、まあいい」

 吐き捨てられ思い切り突き飛ばされた。置いてあったテレビに背中を打ち付けむせ返るが、相手方はこちらを見向きもしていない。

「げほっ、ごほっ……」

 白衣をさすりながら身を起こして携帯を開いた。結果として我が身を救ってくれた着信音はメールの到着を知らせるものだった。

4/28 13:05
from:助手
sub:ヽ(*゚д゚)ノ
頃合いを見て海馬のデータ回収しに行くw がんばって。

4/28 13:05
from:ダル
sub:( ◎д◎)
正直すまんかった。あとで飯おごるお。

4/28 13:05
from:まゆり
sub:(´・ω・`)
生きて帰って来てね。死んじゃヤダよ。約束だからね。

──二階の連中は気楽なもんだ。

 三人ともラボにいるのだがミスターブラウンの扱いだけは専属なのである。とんだ貧乏くじだ。創設者としての威厳も大事だがそれ以上に自分の体はかわいいものだ。異論は認める。

「今回は特別に直してやる」
「す、すいません」
「これでキズでもついてたらタダじゃすまさねぇトコロなんだがな」

 動悸が激しくなった。

「じ、じゃそういうことで。用事があるんですよ」
「待て。岡部」
「な、なんですか? ミスターブラウン」
「やけによそよそしいじゃねぇか? 隠し事でもあるのか」
「な、ないですよ」
「ふ~ん?」
「え、ええ、そうなんです。で、俺ちょっと用事が……ぐあっ!」

 目にも止まらぬ早さで間合いを詰められた。間髪入れずに頭蓋を手で挟み込まれ強制的にお見合い状態に持ち込まれる。顔が近い。近すぎる。唇をちょいと突き出せば触れ合ってしまいそうだ。うぷっ。

 耳と目の間に青筋をへばりつかせて、ドスの利いた声に威圧された。

「正直に言ってみろ。そうすりゃ少しは免罪してやるぜ?」
「いや……あのっ」

 時間を稼いでる間にも、こめかみを制圧した両腕の力は衰えることをしらなかった。なおも万力のように幅をせばめてくるのだ。無骨な手首をつかみ、どうにかして広げようしたが焼け石に水だ。

「あっ……あ、あ、あ」
「なんだ? 男ならはっきり言え」

 口を割っても割らなくても結果は変わらない気がしなくもない。ないが直に圧迫されている脳は冷静な判断を失いつつあった。

「じ、実は自分で直そうとしてっ」
「……」
「後ろのカバーを外そうとっ」
「……」
「でもあまりにも固いもんだからっ」

 倫太郎は嘘を吐いていた。正確には犯人はダルだ。だがこの際事実はどうでもいい。襲いかかる準備を整えてる野獣の対処を模索しなければならない。

「力任せに回させたらっ」
「……」
「ばきっ、って変な音がっ」
「……っ」

 はげあがった頭にビキビキと血管が浮き上がった。怒量とか殺気とか膂力とか物騒な値が軒並み上がってる。もうやだ。テレビなんか放棄して逃げ出したい。

 地獄から帰ってきた鬼のような形相に、些細な抵抗を試みる。

「や、やだな、そんなに怒らないでくださいよ」
「俺の……分身に……キズを……」

──しっ……白目を剥いてるんですが?

 あまりに怖すぎて自分の体が予期しない行動にでた。

「そ、そういえばミスターブラウンって某有名対戦ゲームのラスボスに似てますよね? しょ、しょ~りゅ~け~ん……なんちて」

 主人公の必殺技を真似てポージングしやがりやがったのだ。修羅場っているこの場を和ますつもりだった? それともミスターブラウンとラスボスとがあまりに酷似しているから? いずれにせよ、最後の一押しをしてしまったのは火を見るより明らかだった。

──すまん、まゆり。約束は守れそうもない。

「きさまーっ!?」

 わしづかみにされた頭を引き込まれた。

 刹那、目の前の光景が白く瞬いた。それは落雷が引き起こしたフラッシュか、それとも痛覚が見せた幻覚か。判断する間もなく地響きと共に腹部に激痛が走る。

「……うぉごっ!?」

 目が後ろにひっくり返った。

 みぞおちに膝がめり込んだのだ。

 すぐさま追い討ちが入った。強制的にくの字にされた背中に一点集中した穴が穿たれた。肘が落ちているのだろう。無骨な凶器に体をサンドイッチにされ、ずるずるとくずおれた。

 倫太郎は小汚い床に深い深いキスをした。

 酸っぱい。胃液が逆流している。のたうつ気力すらない。びくんびくんとしたくもない痙攣をするのが精一杯だ。このまま安眠させてくれという脳波が大脳皮質にへばりついて離れそうにない。喜べ助手、良いデータが採れそうだぞ……

 意識が薄れゆくなかで雷鳴が鳴っていた。白く瞬いた空間にブラウン管テレビに見下ろされた、屈強そうなシルエットが色濃く映し出されている。

 天高く拳を突き上げ、咆哮した。

「うずく! うずくぞ!」