SSやオフ再録
紡時でひな祭り(紡がれし百年の時)
「今日は雛祭りらしいね。」
団長があの人を虜にする笑顔で言った。
「なあなあ、雛人形って知ってるか?なんか雛祭りの日に飾るらしいんだけどさ。あれ、ここの奴らでやってみたくならない?」
ジーノがニヤリと楽しそうに言う。
「へえ。雛人形ですか。面白そうですね。主役は団長がするとして・・・とりあえずは三人官女を決めてみましょうか。」
レギウスが意外にもジーノの案に乗ってきた。
「へえ、レギウスもそういうお遊び、するんだ?」
「ええ。お遊び、というより仲間の連帯感を深める為にはこういう事もいいんじゃないかと思いまして・・・。」
「三人、ね。とりあえずミュラ、イリア、リュセリあたりでいいんじゃない?」
それを聞いていたゼフォンがニッコリと言ってきた。
「なんであたしが。メンドクサイ。だるい。」
「せっかく女扱いしてあげてるのにそれじゃあね。ほんと残念な人だよね?」
「なんだって!?」
「ちょっと!もう、ミュラもゼフォンも仲良くして!同じ魔術師なのになんでそういつもそんな風なのかなぁ。」
つっかかりあう2人に、団長が慌てて止めに入る。
「そんなもの、こいつが生意気なのと、あんたに対してろくな事・・・」
「へえ。ボクに向かってそんな事言うんだ?ほんと君って。少しはイリアとか見習ったら?」
そう言ってまたお互いにらみ合う、といってもミュラだけでゼフォンは相変わらずニコニコとしているが。団長はまた仕方なく止めに入った。それから彼は後の2人の女性に向かってニッコリと聞いた。
「えっとイリアとリュセリは、いい?」
「はい。逆に私お姉さんなのにいいんですか?光栄です。」
「あたしも、べ、別にいいけど。」
「良かった。」
ホッとしながら微笑む団長を、その場にいたものたちはホンワカと眺める。
「じゃあ、次は五人囃子、ですか。」
「メアメイ、オゥヤー、ギジェリガーさんに、ブートゥルーガさん、グワイニーさんとかってどうかな。なんか可愛い五人囃子じゃないかな。特にメアメイは音楽に長けてるし。」
団長の笑顔の一言に誰も文句はなかった。レギウスが口を開いた。
「あと・・・隋臣(ずいじん)ですが・・・これらは右大臣、左大臣と言われてはいますが、実際のところは武官であり弓を持ってます。なのでラスカリスと・・・あ、リュセリは三人官女でしたね・・・。」
「あ、あたしいいよ!弓だし、隋臣で。」
「じゃあ代わりの三官女、エルミオーネとかどうだい?」
「へえ、あんた女の事さっきからよく言ってくるよね?この子にチャチャ入れてないでそっちに行けば?」
「ミュラってほんとやだなぁ。イヤミばかり言ってるとお嫁に行けないよ?」
「て、ちょっと、また2人して。・・・・・・。ほんとは仲良いとかなのかな?」
またもや言い合ってるゼフォンとミュラに、団長は呆れたような笑みを見せたあとでボソリ、と呟いた。
「「冗談!!」」
「そんな声をそろえて言わなくても・・・。」
そんな様子を黙ってみていたレギウスがまた口を開いた。
「あと、士丁(じちょう)ですね・・・。傘、もしくはほうき、これらは地域によって違うみたいですが・・・、それらとあと台を持っている三人です。」
その時、ふと、存在に事に気付いた団長が振り向いてニッコリと言った。
「ねえ、ザヴィドもやったら?この士丁とか、どうかな?」
すると今まで黙って見ていたザヴィドは驚いたように口を開いた。
「な、なんで俺がそんなことっ。や、やるかよ!」
「え、なんでって・・・皆でやったらきっと楽しいんじゃないかな。見る側でもいいけど・・・。」
少し諦め口調が入った団長に対してザヴィドが慌てたように言った。
「この俺がほうきとか、持てるかよ!そ、そうだな、お前の相手ならなってやってもいいぞ?」
「僕の?え、ザヴィドが!?」
「なんだよ、文句、あるのかよ?」
「え?だって・・・」
「待って下さい。団長の相手は普段から共に行動してますわたしがひきうけようかと思っていたんですが・・・。」
「えーそれこそ待ってよ?その位置に一番似合うのってボクだと思うなー。」
「貴様、何を根拠に!」
「だいたい一番最初にボクが彼に出会ってなければ君たちも会ってないんだよ?ほら、それだけでもボクがふさわしいと思わない?」
「何を・・・」
言い合いを始めた3人に、団長が慌てて割って入る。
「えっと、ちょっと待って!というか・・・あの、確か僕は主役、と言われたような気がするんだけど・・・お内裏様て事だよね?じゃあ相手は女性の方が無難じゃ・・・」
「「「え?」」」
「・・・・・・え?」
「・・・団長・・・。何を言っておられるのです?団長になっていただくのは男雛ではなく、女雛の方ですが・・・。」
「・・・・・・・・・は?」
団長はポカン、として周りを見た。
驚いた事に、その事実を告げられてもびっくりしているものは誰もいなかった。
「え、ちょ・・・え・・・?」
「とりあえず、なるなら俺が相手だ。お前らはひっこんでろよ。見た目的にも俺が一番お似合いだろうが。」
「ふざけてるの?君こそひっこんでなよ?ツンデレくん?」
「なんだと?このチビ。」
「うわぁ、言っちゃうんだ?それ?へぇ?」
「お二方、いい加減にして下さい。そんな無駄な時間を労しても仕方のない事ですよ。とりあえずわたしがサポートいたしますので。」
「「ひっこんでろよオヤジは!」」
「・・・地獄殺・・・」
2人はあわててよける。
「ちょ、くそっ殺す気かっ」
「わあ、危ない危ない。へえそういうつもりならボクにも考えがあるけど?」
「俺もだ。」
そしてゼフォンとザヴィドも杖を出す。
「て、ちょっと待って!僕が茫然としてる間のいつのまにここ、戦闘場になってるんだ?ほら、三人とも武器を仕舞って!そんなにお内裏様がしたいのならジャンケンで決めたらいいよ。僕は士丁でいいか・・・」
「「「それはダメ(だ・です)」」」
「・・・・・・。」
「そうだ、君が選んでよ。この三人の中から誰が君の相手にふさわしいか。」
ゼフォンがニッコリとして言った。
「え・・・?いや、えっと、なんか色々間違ってるような気がするんだけど・・・?」
「そんな事はないぞ。貴様、とっとと決めろ。」
「そうですね・・・ここは団長がお決めいただいた方が。」
そして三人につめよられ、団長は後ずさりをした。
周りに助けを求めようにも、既に遠巻きに見ている。ミュラですら、というか彼女はどちらかと言えば成り行きを楽しんでいるようにも見えるが。
「そんな・・・。えー・・・。」
そして話がすすまないと周りも困るであろう、と判断し、団長は選ぶことにした。
「じゃあ・・・」
・・・