SSやオフ再録
行事:装飾(W.D)(ルック・湊)
「ホワイトデーだよ、ルック!」
おもむろに湊がニッコリと言ってきた。
「・・・何それ。」
ルックは珍しく一人で出ていた外出から帰ってき、まだ例のアレな仮面をつけたまま首を傾げた。
「え、やっぱルック知らないんだー。デュナンあたりだけの風習なのかなぁ?詩遠さんも知らなかったみたいだしね。」
詩遠の名前が出ると何となくカチン、としてしまう。
湊から離れ、破壊者と呼ばれるような活動をしていたルックの元にやってきた2人。もともと仲は良かったが、前にも増して更に仲が良くなっている気がする。もはやルックの目には“いちゃいちゃ”という擬音すら聞こえてきそうな勢いで。
「・・・知らないよ。」
ムッとしたようにルックは言い、仮面を取るとその場を去ろうとした。すると湊が服をつかんでくる。
「あ、もう!待ってよルック!話の途中だよー?ホワイトデーはね、バレンタインデーで貰った気持ちのお返しの日だよ!」
「・・・お返し・・・?バレンタインの日に贈り合うものだろう・・・?」
「ああ、うん。普通はそうだよね!でも一部の地域では、えーと、男女で言うとね、バレンタインには女性が男性に贈って、ホワイトデーに男性が女性に贈るんだ。」
「へえ。なるほどね・・・。」
「て、また去ろうとしない!もう!ほんと冷たいルック!」
ルックが適当に相槌を打ちつつ去ろうとすると、湊が更に服をギュっとつかんできた。
「・・・ちょっと。何なのさ。僕はする事あるんだから、離してくれる?」
「あ、晩御飯?大丈夫!今日はルック作らなくてもいいよー。」
「え?」
「詩遠さんがね、テイクアウトで色々買ってきてくれたんだー。ルックへの気持ちだって!」
「・・・。」
なんていうか・・・色んな意味で微妙だとルックは思った。
今しがた、湊は言わなかったか・・・?男が女に贈る、と?まあこれが別の相手からなら素直にありがたい、と思えるのであろうが、詩遠だけに。
絶対陰で、あの企んでそうなニッコリ笑いをしてそうな詩遠しか思いつかない。
あ、ていうか・・・。
「えっと、ごめん、湊。そういうのがあるって知らなかったから、何も用意してない。」
ルックが服をつかんでいる湊を振り返り言うと、湊がニッコリした。
「ううん!いらない、いいよー。ただね、僕はそういうのん知ってたし、ルックに何かしたいなぁって思ってたから・・・。」
そう言いながら湊の表情が妖艶な風に変わる。ルックはゾクリ、とした後で少し体が熱くなった。
「・・・普段食べないよね・・・?えっと・・・甘いもの・・・大丈夫・・・?」
「へ?あ、ああ、まあ食べられないって訳じゃないけど・・・?」
「良かった。来て?生クリームはね、お砂糖控えめにして、美味しく出来たから。」
・・・ケーキ?ケーキを作ったっていうことなのか・・・?
ルックはホッとしつつもどこかでがっかりしている自分爆発しろ、と思った。
だがひっぱられ、つれてこられたのはなぜかバスルーム。
「・・・?なぜここに?」
「・・・だって。ここなら生クリームでも何でも、あとで流せるでしょう?」
「・・・え?」
振り返りニッコリと笑みを見せた湊の表情は最早小悪魔といってもよかった。ルックは少し固まりつつ聞き返す。
「どうしたの?ルック?あ、大丈夫だよ?風通し良くしてたから、生クリームは溶けてないよ?・・・これからたくさん溶けるだろうけど・・・」
「ちょ・・・え?て湊!?何服脱いで・・・!?」
まさかデコレートされるのは・・・湊ですかー!?
ルックはすこしフラリ、となった。
「・・・美味しく食べてね?あ、大丈夫。皆は詩遠さんが外食に連れ出してくれてるから!」
ああああああもう!!