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Straight Photography

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 彼のオッドアイが月光と混じり合って、その美しい瞳に見つめられたとたんライルは動けなくなる。
 まるで催眠術にかけられたようだった。気がつけばふらふらと立ち上がり、彼の隣りにすとんと腰を下ろしていた。促されるまま、おそるおそる頭をその腿の上に預ける。
 寝心地がいいとはお世辞にもいえない感触だった。
 それなのに。
「あのね、眠れないなら眠れないで構わないんだ。僕がこうしていたいだけだから」
「……どういう、意味だよ」
「あっちの部屋にはクラウスさんもシーリンさんもいる。君は独りじゃない。だから安心して目を閉じて」
「………………あんた……」
「誰もいなくなったりしないよ。目が覚めても君はこの固い膝枕の上で寝てる。大丈夫」
「……………ホント、だな? 約、束……」
「うん、約束」



 不器用な手つきで何度も髪を撫でつけられているうちに、ライルの意識はゆるやかに眠りの淵へと誘い込まれていく。
 明確な思考力が途絶える直前、唐突に彼の真意を悟った。
 アレルヤが同居を受け入れたのは、他の誰でもない、ライルのためだったのだ。たとえ十年以上疎遠だったとしても、最後の肉親だった兄の死に、ライルが苦しまないわけがない、と。
 彼はそう思って自分のそばにいることを選んでくれた。


 確かにこの半年、使い慣れない広い部屋と、新しい同居人に対する気苦労で、落ち込む余裕などなかった。
 在宅の職業である彼はライルが帰ってくると必ず家にいて、おかえりを言ってくれた。
 今日のように夜中ふっと目がさめても、扉を隔てた向こう側に自分以外の誰かの存在を感じ取ることが出来た。
 すべてアレルヤの優しさで思いやりだ。傷の舐めあいなどという陳腐な行為じゃない。彼はただライルの気持ちだけを考えて行動していた。
 半年経った今ならそれが分かる。


 ひねくれ者の自分は目が覚めてもきっと、ありがとうなんて言えない。
 だからせめて――。

 眠りに落ちる前の最後の力を使って、ライルは髪を撫でるアレルヤの手に指を添えた。
 この気持ちがどうか、温もりとともに少しでも伝わるよう。
 祈りをこめて。
 
 ――愛をこめて。
作品名:Straight Photography 作家名:せんり