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非日常のような日常の生活

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豊島区のとあるアパートの一角の部屋。
朝日とは呼べぬ光がカーテンの隙間から零れ落ちる室内で、竜ヶ峰帝人は眠りに付いていた。
静寂の中、彼の寝息だけが聞こえ、規則正しく聞こえるそれは、彼が安眠しているのが分かる。

不意に、彼の携帯電話の着信メロディが鳴り響く。
その音に起きたのか、帝人はもそもそと枕元にあった携帯電話を取り、メールを確認する。
【太郎さん、外はとぉってもいいお天気ですよぅ。
 いい加減起きないと、襲いに行っちゃいますよぅ?】
そう朝からげんなりするような文面でメールをしてきた相手は折原臨也だった。
寝起きで頭が回らなかった帝人だが、そのメールを見て朝からブルーな気分になった。
【甘楽さんの口調で何言ってるんですか。
 メールのおかげで眼が覚めました。
 っていうか、何で寝てるって分かったんですか?】
返さないと後々面倒くさいのが分かっているから一応は返す。
メールを送信した後、もそりと起き出し、パソコンが置かれているテーブルに携帯電話を置き、パジャマから服に着替える。

ちょうど着替えが終わった頃、また携帯電話の着信メロディーが流れた。
誰かから来たのか分かっている帝人は溜息をつきながらその携帯を見る。
【太郎さん、おはよぉございまぁすぅ。
 よかった、太郎さん起こせたぁ♪。

 今日、帝人くん暇だったよね?
 デートしようよ、デート。】
ハートマークの絵文字と共に、甘楽口調ではなく、後半は折原臨也の口調で誘われたデート。
そもそもデートに誘ってくること自体、帝人には疑問だった。
どうしたものかと、迷う帝人。
正直面倒くさい。
夕べ遅くまでチャットと、最近よく話しをする平和島静雄とメールをしていたおかげで、眠気が取れない頭で考える。
【しませんよ、デートなんて。
 おとなしく仕事してください。
 折角の僕の休みなんです、サンシャイン辺りに買い物いくのでついてこないでくださいね。】
そう返してまた溜息をつく。
「ほんとうに面倒くさい人だなぁ。」
ポツリとそう呟く。

ふと時計に眼をやると、11時半になっていた。
臨也に買い物とは言ったものの、本当は買いたいものなんてない。
少し悩んだ帝人は、何時もの肩掛けの鞄を持つと、そのまま玄関へと向かった。




何も考えず、帝人はそのままの足でサンシャイン通りに来ていた。
『とりあえず、東急ハンズでも行こうかなぁ・・・。』
暇つぶしにはもってこいの場所だというのを池袋に住み始めてから学習した帝人。
そのままハンズへ行こうとしたその目の前に、門田京平の姿が見えた。
「あ、門田さん。」
パタパタと音がしそうな小走りで、帝人は京平に近づく。
「ん?
 ああ、竜ヶ峰。」
呼ばれて振り向いた彼は、帝人を見つけると軽く笑った。
「こんにちは。
 あれ、狩沢さんたちとご一緒じゃないんですか?」
肩に掛けた鞄のショルダーストラップを両手で掴んだまま、京平を見上げて笑顔のままそう問いかける。
「ああ、3人とも用事があるらしくてな。
 13時頃まで暇つぶそうと思っていたところだ。」
そう言って、京平は、ポケットに突っ込んでいた片手を出して、帝人の頭を撫でる。
それを帝人は少し照れたようにはにかんだ。
「竜ヶ峰はこれから出かけるのか?」
頭を撫でたままの京平が少し笑顔のまま、帝人に問いかける。
「・・・朝から臨也さんから変なメールが来て起こされたので、気分転換しようかと思って、来たんですけど・・・。」
頭を撫でられながら、帝人はしょんぼりと頭を垂れる。
「あー・・・そのなんだ、竜ヶ峰、お前昼飯食ったか?」
察しがついたのか京平は苦笑いをしつつ、帝人の頭をぽんぽんと頭を慰めるかのように軽く叩いた。
「あ、いえ・・・まだですけど・・・。」
なぜそんなことを聞かれたのか一瞬分からなくて、帝人はきょとんとした顔をした。
「じゃあ、気晴らしに一緒に飯でもどうだ?
 おごってやる。」
軽く笑いながら帝人にそう問いかけて、無言で頷く帝人を撫でる。
そのまま京平は、帝人の背中を手で押すと、帝人はそのまま歩き出した。

「何食いたい?」
黙って隣を歩いている帝人のほうを向かって問いかける。
うーんと唸って、帝人は小首をかしげた。
おごってもらう手前、高いところには行きたくないしと思考を巡らす。

ふと、歩いているその前に陰りが出来た。
「オウ、ミカード、カドータ。
 寿司喰ウイイヨー。
 安クスルヨー。
 サービススルヨー。」
(露西亜寿司)と書かれたチラシを出してきたサイモン・ブレジネフは、二人を見下ろすかのように立ちはだかっていた。
それに京平と帝人は顔を見合わせると、帝人はくすりと笑い頷く。
京平はサイモンを軽く叩き頷くと、出されたチラシを受け取る。
「2名様、ゴ案内ヨー。」
豪快にサイモンはそう言って笑うと、2人の背中を押して、共に店に向かう。

帝人、京平が店内に入ると、二人はカウンターに座る。
そして、二人は他愛もない話をした。
たまに、露西亜寿司の店主デニスとサイモンと4人で会話を交し、その楽しさからか帝人は今朝きたメールのことなどすっかり忘れていた。

時計の針が13時近くなった頃、京平と帝人は会計を済ませ、店の外に出た。
その時、ふと携帯電話の着信メロディーがなる。
その音を聞いて、帝人は嫌な予感がした。
「携帯鳴ってたけどいいのか?」
気を利かせたのか、京平はそう言うと、帝人の頭を撫でた。
「あー・・・メールの相手が大体想像ついてるので・・・。」
帝人は京平に撫でられながら苦笑いを浮かべた。
その苦笑いで相手が誰なのか分かったのか、京平も釣られて苦笑いを浮かべた。
「お前の何が臨也に好かれているのか、俺には分からないが、もし困ったことがあったら連絡しろよ?
 たいした手助けは出来ないかも知れないが、臨也とは腐れ縁でお互いよく知ってるしな。
 あと、臨也のことじゃなくても、何か困ったら言えよ。
 一人で抱え込んだりしそうだしな、お前。」
京平はそういうと、帝人の頭をぽふぽふと叩くと少し笑った。
「はい、ありがとうございます。」
にっこりと京平の顔を見上げて飛び切りの笑顔を見せる帝人。
それに気を良くしたのか、京平はくしゃりと帝人の頭を撫でた
「あ、そうだ、お前こういうの読むか?
 東野圭吾のなんだが、俺はもう読んだし。
 読むならやるよ。」
手に持っていた本を帝人に差し出す。
それを嬉しそうに帝人は受け取った。

不意に京平の携帯電話が鳴り響く。
ズボンのポケットの携帯電話を取ると、京平は携帯電話に出た文字を見てその電話に出る。
「もしもし。
 ああ、狩沢か。
 わかった、じゃあ、何時ものところでな。」
そういうと、電話を切り、またポケットにしまう。
帝人はそんな京平を見上げてじっと見ていた。
「わりぃ、竜ヶ峰。
 狩沢たちが何時もの場所に着いたらしい。」
見られていることに気づいたのか、京平は少しくすぐったそうに笑った。
「あ、はい。
 本当に今日はありがとうございました。
 あ、あと、本も。」
何時もの場所というのがどこだろうとは思ったが、帝人はそう言いながら京平に頭を下げた。
「いや、俺も暇だったし、こっちこそありがとうな。」