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非日常のような日常の生活

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 あの・・・ご迷惑じゃなかったら、少しお話しませんか?」
手荷物をセルティに渡してもらいながら、小首を傾げて帝人が問いかけると、セルティは愛馬を降りてPDAに文字を打つ。
【じゃあ、少しだけ】
そうPDAを帝人に見せ、帝人はそれを見ると軽く頷き、少し嬉しそうにしているセルティに微笑んだ。

二人は階段を上り帝人の部屋に向かう。
部屋の前まで来ると、帝人は鞄から部屋の鍵を出そうとした。
そのとき、玄関先に小さな紙袋が二つ。
一つには小さな手紙が入っていた。
それを疑問に思いつつ、ドアノブから取ると、鍵を開けた。
「どうぞ、セルティさん。」
ドアを開けて、にっこりセルティに笑いかける。
それにセルティは頷くと部屋の中に入り、帝人もそれに続く。
「あ、適当に座っててくださいね。」
帝人は荷物を邪魔にならないようなところに置きながら、セルティに微笑みかけると、セルティはPDAを取り出し文字を打つ。
【あ、帝人。
 今日はこれをもってきたんだ。
 使ってくれ。】
そう言って、いつの間にか持っていた紙袋を帝人に渡す。
それを不思議そうに受け取り、中を見ると電気ケトルが入っていた。
「いいんですか、コレ?」
少し嬉しそうにセルティに問いかけると、彼女は軽く頷く。
【新羅が患者から貰ったそうなんだが、うちではもうあるし、使わないからな。
 よかったら使ってくれ。】
PDAにそう打ち込むと、セルティは帝人の頭を撫でた。
「ありがとうございます」
帝人は円満な笑みを浮かべた。
それに満足したのか、セルティは壁にもたれかかるようにして座り込んだ。

それから帝人は今日あったことをセルティに話した。
朝から臨也のメールがうざかったこと。
京平や幽やトムに色んな物を貰ったことも。
嬉しそうに話す帝人を見て、セルティも嬉しくなった。
【良かったな、帝人。
 心配してくれる人がいるというのは幸せなことだぞ。
 あ、もちろん私もその・・・帝人のことは心配しているが。】
PDAにそう打ち込み、照れたようにそっぽを向くセルティをみて、帝人は照れたように笑った。
「ありがとうございます、セルティさん。
 セルティさんにまで心配してもらえるのは嬉しいです」
円満な微笑みを浮かべ、セルティに向かってそういうと、セルティは帝人の頭を撫でる。
ふんわりとした空気が流れる中、帝人とセルティの着信メロディーがなった。
お互いがPDAと携帯電話を出して画面を見る。
帝人はそのメールをみて少し笑った。
【新羅が帰ってこいと言うから、そろそろ帰るよ。】
PDAを見せながらセルティは帝人の頭を撫でた。
「あ、はい。
 お引止めしてすみませんでした。」
少し寂しそうに帝人が言うと、セルティは撫でていた手で帝人の頭を軽くぽふぽふと叩く。
【気にするな。
 帝人と話するのは楽しいしな。
 じゃあ、しっかり戸締りするんだぞ?】
PDAを見せ、セルティはそのまま玄関に向かうと、その後を帝人は追いかける。
「じゃあ、今日はありがとうございました。
 おやすみなさい。」
帝人が笑ってそういうと、セルティは帝人の頭を撫でる。
【じゃあ、お休み、帝人】
そうPDAを見せると、セルティは部屋を後にした。
セルティが階段を下りる音が聞こえ、それがしなくなったかと思うと、馬の鳴き声が聞こえる。
それが段々遠くなると、帝人はふぅと溜息をついて部屋の奥に戻った。

部屋に置いた荷物を片付けようとしたとき、ふと玄関先においてあったものを思い出した。
小さい袋は二つ。
一つは手紙入りだが、もう一つにはそれがない。
けれど、手紙が入っていないほうは誰かからか分かっていた。
手紙が入っていない方の袋を開けると、ボールペンと小さな箱が入っていた。
その箱を開けると、中にはUBSメモリが入っていた。
もう一つの袋を開けると、また小さな箱。
手紙にはただ[あげる]としか書かれていなかった。
その小さな箱を開けると、ネックレスチェーンについた指輪が入っていた。
『なんか、今日はいろんな人に色んな物もらったなぁ。
 ・・・あれ、なんか今日一日よくなでられていたような・・・。』
そう思いつつ、帝人は部屋に無造作に置かれた携帯電話を取るとそれを開いてメールの受信画面を開く。
【じゃあ、学校終わったら連絡くれ。
 あ、それから玄関先に借りてたものを置いておいた。
 あと、それでいいのかわかんねぇけど、買わないとっていってたの思い出してついでにいれておいた。】
そう静雄から来たメール。
【わざわざすみません。
 あと、UBSメモリありがとうございました。
 今日、買い物に出たのにすっかり忘れてて、助かりました。
 いくらだったんですか?
 明日お返ししますね、お金。】
そう返信すると、帝人は未開封のメールを開く。
【なぁんだ、静ちゃんと喧嘩してた近くにいたのかぁ。
 逢いたかったなぁ。
 
 もう、本当は私に会いたいのに、ワザと避けるなんて、太郎さんて意地悪ですよねぇ。】
そう書かれたメールを帝人は見て笑った。
【逢いたいって素直に言えばよかったじゃないですか。】
そう完結にメールを返す。
すると、静雄から返信が来た。
【ああ、いいよ、やるよ。
 いつも話し聞いてくれる礼だ。
 じゃあ、また明日な。】
そう書かれたメールに困ったような顔をして笑った。
【すみません、ありがとうございます。
 じゃぁ、また明日。】
 そう返信すると携帯電話を閉じる。
そして、小さな箱から指輪を出すと、マジマジとそれを見つめる。
『あれ、この指輪何処かでみたなぁ。
 誰かがしてたような。』
そう思って、帝人は少し笑った。
不意に、携帯電話の着信メロディーが鳴る。
携帯電話をとり、画面を見ると、臨也からだった。
【あー、そういえば玄関の袋見た?】
ただそれだけの簡潔なメール。
それをみて帝人は笑った。
【見ましたよ。
 なんで指輪なんですか?
 てか、これいつも臨也さんがしてたのじゃないんですか?】
そう返すしてしばらくすると着信メロディーが鳴る。
【んー、なんか持ってて欲しくなってね。
 だから、持っててよ、帝人くん】
そう返信が臨也から来た。
それに返事を書こうとしたとき、不意に玄関で呼び鈴が鳴る。
『こんな時間に誰だろう・・・。』
慌てて出たその先にいたのは・・・・。

玄関のドアを開けて帝人は笑った。




END