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涼の風吹く放課後 お試し版

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 そう言われてようやく、ふっと気がついたかのような涼は、「あ、みんなはどこのクラスなの?」と聞き回っている。
 ああ、この子は本当に、何か一つを見るとそれ以外は見えなくなるのだろう。この態度の前では、怒るに怒れないのも無理はない。
 完全スルーを食ったというのになおさら、涼の頭をなでたり軽口を叩いたりしている友人たちは、涼のことを心底可愛がっているのは間違いない。その涼と知り合ったばかりにしては随分と馴れ馴れしいと見えるはずの俺を、疎ましく扱う素振りもない。それどころか、俺を見る視線はどことなく生暖かく感じる。

 こんな風に彼らにいじられることで、逆に自分の中でもやっとしていたものを整理できたように思う。
 率直に自分の気持ちを言えば、男だとか女だとかを超えた可愛らしさを持つ上に、真面目でまっすぐな涼に、もし俺が好印象を持たれているのだしたら、それ自体が悪い気がするはずは勿論ない。
 しかし、それがもちろん友情としての好感であっても、それを得たために何か重大な代償を負うことになるのではないか?
 この3人は、もしかしたら、それを一人で背負うことを避けてきたのではないか。
 自分一人が目立ったり、必要以上に好かれたりすることを避けてきたのではないか。
 結論から言えば、この予感は正しかった。しかし、気づいたところで既に手遅れということもあるのだと、この同じ日に学ぶこととなったのだが。