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涼の風吹く放課後 お試し版

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 10分ほどして戻ってきた涼は、グリーンのサッカーウェアに身を包んだ姿で、スピーカー付きの音楽プレイヤーを持っていた。やはり、遠くの方がよく見えないようで、やぶにらみっぽい顔で数メートルまで近づいてきて、やっと俺だと確認できたのか、ほっとした顔になった。
「お待たせ。ちょっと見てて。」
 そう言うと涼は、小さな社の石段にその音楽プレイヤーを置いて、再生を始めた。音楽が鳴り出すと、社の前で構えていた涼が、音楽に合わせて振り付けを踊り始める。
 音楽は、どこかで聞き覚えがあった。確か、最近ちょこちょこと見かけるようになってきたアイドルで、確か名前は…秋月だったか?!
 ひょっとして…。と思っているうちに前奏が終わり、涼は振り付けを踊り続けたまま、歌を歌い始めた。
「ラッララッラッ ラッラッララッラッ♪」
 妙に軽快な歌に似合わず、涼の顔は真剣だった。歌いながらも結構細かいステップを踏んで、実はなかなか大変な歌なんだということに気付く。それにしても、確かこの歌を歌ってたのは秋月、なんとかという女性アイドルだったな…。やっぱり、涼と何か関係あるのかな…。

 フルコーラスで一曲歌いきると、涼の顔は汗だくで、肩で息をしていた。
「すごいな涼、なかなかやるじゃない。かなり練習したんじゃないか?」
 俺がそう言うと、涼は本当に嬉しそうな笑顔を俺に向けながら答えた。
「イトコの律子ねえちゃんに、オケのディスクや振り付けの資料をもらって、時々ここで一人で練習してるんだ。」
「その律子ねえちゃんっていうのは、ひょっとして、女性アイドルの…?」
「うん。秋月律子って名前で、僕のイトコなんだ。」
「そうか、じゃあ、昨日聞いた鬼のようなお姉さんってのが…。」
「うん…。あ、これは律子ねえちゃんには内緒だよ。」
「あ、ああ、わかった。」
 俺もこれ以上、涼がイジメられるのは忍びない。
「でね、勇。こうやって一人でも練習してるから、べつに部活しなくてもいいかな、とは思ってるんだ。」
「お、おい、涼。でも、お前の目標は、男らしくなることじゃなかったっけ?」
「うん、そうだよ。」
「…で、このアイドルの練習は、そのためなのか?」
「うん。」
「……?」
 混乱する俺を、逆に涼が不思議そうな顔で眺める。
「僕、何かへんなこと言ってる?」