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涼の風吹く放課後 お試し版

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 俺は、冗談に応える余裕もなく、涼に真剣な目を注いだ。
「……。ごめん。」
 涼は、俺からふっと目をそらし、ベンチの俺の隣に座った。
「いや、謝らないでくれ。謝りたいのは俺なんだから。」
「謝る? 何を?」
 涼は、きょとん、とした顔を見せる。
「そりゃ、あの、要するに…。キス…。」
「あぁ、なんだ、そんなこと。」
 そんなこと? 先週はあんなにドラマでキスシーンをやることに悩んでいただろ?
「なんで勇がそんなこと気にしてるんだよ。役の上でやったことでしょ?」
「でも、もともと疑似の予定だったし、涼だって先週はドラマのキスシーンのことを気にしてたしさ。」
「演技でやるのなんて、経験のうちに入らないって、言ったのは勇じゃない。大丈夫だって、僕は気にしてないから。」
 僕は気にしてない??
「じゃあ、一つ、聞いていいか…?」
「いいよ…。ただ。」
「ただ?」
「さっき、勇がやめてくれって言ったから、もう秋月涼子はいないよ。」
「……。わかった。」
 もともと、冗談を言うつもりも、冗談にするつもりもない。俺は、言葉を続ける。
「相手が俺に代わったことも、涼の中では、全く気にしなかったのか?」
「…うん。そうだよ。」
 嘘だ。
「それで、実際あそこでキスシーンを経験してみて、ドラマに活かせそうか?」
「…どうかな。キスなんて、要は唇同士が触れただけだもの。経験が問題になることでもないかな、って思った。」
 涼にとっては、それだけの気持ちしか、なかったってことか?
「それは、ヒロインの気持ちとしては、どうだったんだ?」
 涼が、はっ、とした。そうだ。あのときの涼には、ヒロインの気持ちは入ってなかった。俺は畳みかける。
「役として、ヒロインの気持ちになりきったキスだったら、そんな軽いものじゃなかったはずだ。愛情とか、勇気を讃えるとか、互いの生存を喜び合うとか、いろんな気持ちが入ってたはずだ。つまり、あのときの涼は、役者じゃなかった。」
「勇…。」
「これ以上、言ってもいいか?」
 さらにこう問いかけると、涼の目がきっとなって俺を見据える。
「勇が真剣ならね。」
 とうに、覚悟はきめている。
「俺と、いろんなキスをしよう。演技のキスと、そうでないキスとの違いがわかるようになるまで。」
 そう言うと、涼の顔に、笑みが浮かんだ。
「…勇に、そんなキス、出来るの?」