日番谷冬獅郎 の憂鬱
閑話休題。
「少しは頭は冷えたかよ」
憮然として日番谷が、白哉に問いかける。
「すまなかった」
氷輪丸の冷たい息が聞いたのか、妙に落ち着いた様子の白哉である。
「とりあえず向こうさんには待ってもらってるからな」
「手間をかけてすまない」
白哉はなんだかんだ貴族といっても妙に憎めないところがある。
だから六番隊隊長なんだな、と日番谷は少し白哉を見直す。
「じゃあ、2人でまずは黒崎一人のHPをそぐぞ。それから朽木だ」
「何!!それはなら」
「黙れ」
「むっ・・・・・・」
いい加減もう帰りたいという一心の日番谷の翡翠色の目が怒気をはらみ白哉を睨む。
その迫力に圧され白哉は思わず押し黙る。
「つーか、聞けよ。俺が手出しするのは黒崎までだ。朽木は知らねえ。
お前の実力なら、朽木は楽勝だろ。後はお前が好きにすればいい」
「なるほど、了解した」
意外に素直な白哉の態度に対して、少々日番谷は面を食らう。
どうやら「好きにすればいい」、との言葉が妙に白哉の心にジャストフィットしたようだ。
さすが、幼年にして護廷十三番隊一のフォロー男(別名:苦労症):日番谷冬獅郎である。
「よし、いくぞ!戦闘開始だ!」
そして(やっとこさ)戦闘が始まった。
先に攻撃を仕掛けたのは一護だった。
まず一護が前方に出る。それに対し、無論白哉のたっての希望で、
彼が応戦することにし、日番谷は後方に回る。
まず一護の3段蹴り→昇り斬りのコンポが白哉を襲った。
だが、白哉はそれをすべて防御。
しかも一護のわずかな隙を捉え、白哉は難易度の高い連続コンボを叩き込むことに成功。
してやったりという表情の白哉。
まあ、ここまではよかった。
さてとりあえず、ルキアは後に置いといて次の日番谷の攻撃で一気にたたみかけよう・・・・・・
と、誰もが作戦の成功を確信したとき、事件は起こった。
ひらり。
日番谷の眼前にブンと伸びるはすっと細い美しい女性の生足。
それは、日番谷の右前肩をかすったルキアの蹴りだった。
そう、これはタッグ戦。
いくら創造主といえども一護ばっかりフルボッコにさせとくはずはない。
そしてさらに不幸なことに、
ルキアはこんなときに限って、ぴっちぴちの女子高生の 『あの制服』で戦っているのだ。
しかも、創造主がまだ操作に慣れていないのか、
ジャンプ→下段後ろ回し蹴りという単調なコンポばかりが日番谷に襲い掛かる。
つまり、兄の気持ちも知らず、ルキアは延々と日番谷の前で
豪快にスカートをヒラヒラさせながら蹴り続けていることになる。
「日番谷、貴様!」
「俺にいわずにあっちに言え!大体・・・・・・」
見たくなくとも、こいつの10倍ぐらい色気のあるねーちゃんと
いつも仕事やってるんで、正直お腹一杯ですといいたいがさらに状況が
カオスになりそうなので日番谷はぐっと堪える。
その刹那、事の重要性に耐えかねた
白哉が血相を変えて日番谷の前に出ようとした。
あの馬鹿、陣形が崩れるだろと日番谷が思った矢先、敵もさる者、
すかさず一護が蹴りで白哉の動きを止める。
そして一瞬の隙をついた一護の連続攻撃をくらってしまった。
これではさすがの白哉も身動きがとれない。
日番谷としては、とっとと自分がルキアとの戦闘を早く終わらせて
白哉の援護につくのがシステム的にも自分的にも最善と判断しつつも、
先の白哉との男の約束というか気持ちを無碍にするわけにもいかない。
その後の日番谷については多くは述べない。
それを語るにはあまりにも酷というものであろう。
「日番谷、目をつぶって戦え!」
「ふざけんな!」
「ならば、後ろを向いて戦え!」
「んなことできるわけねーだろうがぁ!!!」
などの白哉の必死の援護?の声を背後に聞きながら、
「頼む早くバッテリー切れてくれ・・・・・・」
と物言わぬ創造主に懇願しつつ、
ルキアの蹴りだの蹴りだの始解だのを
スカートから巧みに目を逸らしつつ必死で耐え抜いた日番谷の姿があったとさ。
終わり。
作品名:日番谷冬獅郎 の憂鬱 作家名:梶原