さらば青春、そしておかえり!
ズゴーンバカーンドーン
生きているうちで漫画のような効果音なんぞ本当に聞くなんて数年前の俺なら思わなかっただろう、いやごめん小学生の時から聞いてた。
蹴り倒された玄関の扉に一番近かった臨也は素早くカサカサッと逃げてかっここの書き方だと他の蟲みたいだなぁかっことじ、僕は逃げようと思ったけれどノミ蟲さんに盾にされました現在非常に命の危険を感じています助けてセルティ最後に君の顔が見たかった!
「なーんでてめぇのほうが先に新羅の家に着いてんのかなぁいーざーやーくんよぉー」
「かけっこじゃないんだから一着が勝つとかじゃないんだよわかってんのシズちゃん?相変わらずバカだねぇ高校も卒業したし小学校に編入学してくれば?」
「確実に殺すメコッと殺すバチッと殺すメキャッと殺す殺す殺す殺す殺殺殺殺殺殺!!」
「静雄、殺すがゲシュタルト崩壊してるよってごめんなさい目は痛いいや眼鏡も痛いってばとりあえずやめてそのピースサインの使い方間違ってるからねそれピースの方向に使われないからねほんとやめてマジやめて!
ってせぇーるーてぃ〜!!」
静雄の後ろからひょこっとマイスウィートデュラハンセルティの猫耳ヘルメットが見えた。セルティは顔の部分に何もないのが一番可愛いと思うんだけれど彼女は人前ではヘルメットを脱ごうとしないのでもうあのヘルメットはセルティと一心同体、俺の愛の対象なのだ萌え萌えキュン!でもセルティと一心同体って羨ましいなあ、と思わず無生物に嫉妬する俺。
《仕事帰りに見つけてな。臨也とやりあったと聞いて・・・本人は大丈夫といっていたんだが心配だったから拾ってきたんだ》
だがまさかこいつもきていたとは・・・とセルティのヘルメットが臨也の方を向く。嗚呼さすが僕の妖精いこーるデュラハン君の澄んだ心の前だとダイヤモンドも濁って見えるよ!ん?けどつまりもしかして「静雄と2ケツ?いやむしろセルティと2ケツ?そんなっそんなっ・・・俺を見捨てる気かいセルティーのばぶっ」
「・・・こいつに会うのは卒業式ぶりだが、ここまで気色悪い奴だったか?」
「いや、しばらく会わない内に随分変態度が上がったみたいだよ」
『・・・おい、そっちで何が起こってるんだ?』
「あ?その声は門田か?」
「いやー新羅の家でシズちゃんと新羅の同居人とドッキンコ☆しちゃってね」
《ドッキンコは古いと思うぞ臨也》
「キモいキショいウザい殺す」
『・・・・とりあえず人様の家では喧嘩するなよ』
「ふふっうふふふふっ」
急に笑い声をあげた私からびくり、と三人が数歩離れる。電話の向こうの彼も聞こえているだろうか。
《し、新羅・・・?》
「門田・・・新羅がおかしくなっちまった、いや元々何だがあのな、ええと」
『いやだからそっちで何が』
「あああああそういえばこいつさっきワイン何本もあけてたんだよ酔っぱらいなんだよ!」
『何ぃ?!』
「マジか」
そう、そういえば私は先程ワインを飲んでいた。あのときはセルティが仕事にでている寂しさだと思っていたが、否、それもなんだけれども、他の要因もあったらしい。
「でも新羅が本格的に酔っぱらったところなんてみたことないし・・・ねぇ、どうなの?運び屋」
《いや、私にもよくわからない・・・いつもより饒舌でスキンシップが激しいくらいか》
「あれより饒舌でスキンシップが激しいとかなしだよ!」
《大丈夫だ、少なくともスキンシップは私限定だからな》
「っつぅかよ、新羅ぁ・・・そんなに酒があるならなんで今まで出さなかったんだよ」
『そこか?!』
「あー全くシズちゃんはお前のものは俺のものだよねやになっちゃう。ま、どうせワインなんて出されても上物のか安物かもわかんないでがぶのみしちゃうだろうからシズちゃんには無用だよ」
「んだとノミ蟲表出ろ」
「もう出てるよ単細胞」
『だから、人様の家では暴れてくれるなよ・・・!』
卒業してからしばらくたって、闇医者業を軌道に乗せようと東奔西走して、性に合わないのに最初だけだと言い聞かせて色んな方面に頭を下げまくって。
きっと私はこのスリルに溢れる喧騒が、恋しかったのだろう。
いやもっというと、きっと。
「其処の君たち。あ、電話の向こうの君も含む」
「立った、新羅が立った・・・!」
「なんでアルプスの少女みたくいうんだよ思い出し泣きしそうになったじゃねぇかあとで潰すグシャっと潰す!!」
『静雄、混乱してるのはわかったから落ち着け』
「君たちが好きだ!大好きだ!愛している!」
…メキョッ
《新!!羅!!!!!!》
「俺が殴ってからおかしくなったんだから、俺が殴ればまた治るよなぁ・・・?」
「あり得ないあり得ない新羅が運び屋以外に愛してるとかいったマジあり得ないマジキモいうわぁ鳥肌たっちゃったみてよこのさぶいぼあははははっははあははははげふっげふっ」
『静雄、新羅はテレビじゃない。あと臨也も落ち着け。ほら、深呼吸するぞ。ひっひっふー』
「げほっごふっえふんっ・・ひーひーふっ」
「ひっふふひっ」
《二人とも間違っているぞ!あと門田それは深呼吸じゃない!!!》
PDAでいっても電話の向こうには伝わらないよセルティ、と心の中でつっこみながら、僕は安らかに眠りについた。
……眠りって永眠じゃないからね!睡眠だからね!
[さらば青春、そしておかえり!]
作品名:さらば青春、そしておかえり! 作家名:草葉恭狸