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【幻水2】赤い実のゆくえ【カミマイ】

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 カミューは宿舎の冷たい回廊を歩いていた。カツ、カツと踵が石の廊下とぶつかる音が響く。昼下がりの暖かい日差しが壁沿いの大きな窓から差し込んで、美しい模様を床に作っているのを見つめながら歩を進めた。
 自室にはマイクロトフが待っているはずだった。今日はどの茶葉にしようかと、茶棚を思い出して考える。彼らが休憩に一緒に茶を飲むのは日課であった。
 角を曲がると、知った顔がこちらに向かっているのが目に入る。向こうもこちらに気がついたのか笑って手を上げた。
「よう、カミュー」
「ラルフも休憩か」
「もうすんだよ。今から戻るとこ」
 ラルフの片手には白い取っ手のついた箱がにぎられている。なんだろうと、カミューの視線に気がつくと、ラルフはこれ?と持ち上げて見せた。
「これさ、ネルからもらったんだ」
「へえ」
 カミューの口元が上がるのを見て、ラルフは違うと首を振った。
「変な勘ぐりしないでくれよ。俺、休憩終わったしカミューたち良かったら食べなよ」
「え。でも…」
「いいのいいの。ネルだって、いっぱい作っちゃって困ってるの、って言ってたし。あいつ菓子作りがストレス発散なんだってさ」
 ネルとは城のメイドだった。数いるメイドたち中でも若い部類にはいり、明るい性格でカミューたちの宿舎の担当ということもあり知らない者はいなかった。
 カミューは素直に受け取るとラルフと別れた。
 そのカミューの後姿をラルフがにたにたと笑って見つめていることを、カミューは気づいていなかった。
 カミューが自室の扉を開けると誰もいない。自分の方が早かったのかと窓辺により大きく窓を開けた。白いカーテンが風に揺れる。カミューはマイクロトフにいないことを特に気にすることも無く、ケーキをテーブルの上に置く。そしてその箱をあけて中をのぞく。
 赤い実を使ったタルトと、青い実を使ったパイ。
 この茶請けに合う茶はと茶棚に視線が移動したところで、扉を叩く音がする。
 マイクロトフはその箱の中をのぞくと大変喜んだ。
 カミューはネルに感謝しつつティーポットから紅色の茶をそそぐ。マイクロトフが箱から丁寧に出し皿にのせた。
「カミュー、どっちがいい?」
「……迷うな。マイクロトフの好きにしていいよ」
「じゃ、これ」
 まず紅茶の香りを楽しんで、フォークにのせたそれを含む。甘酸っぱくて美味い果実だった。
 何の実だろう。そうカミューは思いつつマイクロトフの方をみると、彼も美味そうにその赤い実のタルトをほおばっている。
「美味いなカミュー」
「ああ。ラルフに悪いな」
 そう言って、カミューはクリームのついた青い実を口に運んだ。









 ――――赤い実、誰が食べた?