この手で触れて確かめたい
ねえ、ドイツ。
例えば、そうしてドイツが俺に失望したとしてそれでもドイツが俺の事を見捨てない確立ってどれだけかなあ。
今でも充分ほかの誰よりも出来ない事やドイツに頼る事が多いのに、せめての救いすら失くした場合自分で言うのもなんだけどその確立は普通ならゼロに等しいと思うんだ、普通なら。
だけどね、だけど、もしかしたらっても思ってるんだ。
ちょっと、いやかなり、俺はドイツに期待していて。
ドイツはずっと、どんな俺でもそのまま、傍に置いてくれるんじゃないか俺を好きでいてくれるんじゃあって思うんだけど、どうしたらそれを確認出来るんだろう。
ぼやぼや考えながら少し冷えたカフェラテを一口飲み込み、それから思い立って立ち上がると、エスプレッソを飲もうとしていたドイツが「どうした」と一瞬びくりとしてから呟いた。
「あー…ドイツ、仕事終わったんだ?」
「ああ、とりあえず今日の分は」
そうかーそれなら良かった、と言いながらドイツの座っている椅子のあたりまで行くとドイツはグリグリと眉間のあたりを指で揉みほぐしながらフウ、と小さく息を吐いた。
「もう、夕飯時だな」
「そうだねー、ところでドイツーちょっといいー?」
なんだ?という顔をしてこちらを見上げたドイツの顔をガシッと掴んで顔を近づけたらそれにびっくりした様に青い瞳が見開いた。その瞳の中に俺がぼんやりと映ってみえる。
おい、と言いながらみじろいだドイツの顔をグイッと寄せて思いつきのままその瞳をベロリと舌で舐めた。
うん。塩辛い、普通に。
「…やっぱりこんな事で分かるわけないかー」
そう呟いて手を離した瞬間、ゴツンと頭の右横のほうに重い衝撃が走った。
痛い、殴られた。
「何すんのさ!いたいよー!」
「こっちのセリフだ!い、いきなり何を」
「や、舐めたら分かるかなと思ってー」
「意味がわからん!」
そうドイツは言ってパシパシと数回瞬きをしてから、殴られた箇所を押さえながら半泣きになっている俺を見てハアとため息をついた。
「おれはお前のことが時々本気でわからなくなる」
「俺なんてドイツのこと時々じゃなくて全然わかんないよー…読んでるエロ本の内容がすげーとかしか」
「そこはわからんで良い!」
「ヴェー………ちょっと確認したくて」
「なにをだ」
「ドイツが俺をどう見ててどうしたら俺はドイツに、俺のこと、好きでいてもらえるか、ていうか俺のことすきかどうか」
「…わからん」
俺にだってそんな事わからん、とドイツが言ったから「それじゃ困る」と口を尖らせると、プイとそっぽを向かれた。
そしてそのまま扉の方へ歩き出したから、これは逃げられる!と思って急いで追いかけたら足がもつれて顔面からドイツに体当たりしてしまった。
だけどドイツはマッチョだから倒れたりせずにそのまま扉の方へと歩いていく。
ちょ、ちょっと待ってよ!
「ッ!へばりつくな!」
「ええ!だって!ちょっと待ってよ!まだ話が…って…あ!」
「な、なんだ!」
「あー………ドイツ心臓ちょうバクバクしてんね」
「…………………」
「…うん、ドイツの気持ちわかったよ」
「……」
「これからはドイツの気持ち確認するときはこうするよ〜」
「…やめてくれ」
この手で触れて確かめたい
作品名:この手で触れて確かめたい 作家名:萩野