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いつかの未来で逢いましょう

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誰にも知られぬよう、何処にも漏れる事のないよう、誰にも言わず周到に用意して進めてきた計画。
 上手く事が運んだ暁には、悪化の一途を辿っていた「主」を取り巻く状況を打開出来るはずだった。
 けれども、予定は、準備段階で大きく狂ってしまった。

 それも、考えられる内で最悪の方向へ。

 成果を捧げる筈だった主が、まさに“契約”しようとしていた相手の凶弾に倒れたのだ。


『皆に朗報でーす。ドン・ボンゴレが死んだよ。僕が殺したんだけどね。これでもう、僕らの勢いを止められる組織は無くなった! 思いっきり暴れられるから、頑張って働いてね! うちは、やることやってくれた人が幸せになれる組織だから。報酬も褒美もバッチリ用意してるからね! しっかし、どんな偉大なボスだって、やっぱり人間なんだよね。生身じゃ銃弾には勝てなかったみたい。可哀想に。僕もああやって、あっさり殺されたりしないように、単独行動は控えなきゃね~。皆も流れ弾とかには十分気を付けてね。ボンゴレ狩りは継続するから、関係者の始末、ヨロシク~。じゃっ!』


 基地内の一斉放送にて、白い服に身を包んだ男が部下達へ向けて鼻歌でも歌うように軽やかに告げた時、目の前が暗くなったのを、はっきりと覚えている。
 その時は計画の為にと手に入れた仮初の身体で、なんとか笑顔を取り繕ったけれども、男の仲間らしく、笑えていたかは謎だった。
 モニターの中で、胡散臭さを漂わせる白服の男が笑うたび、骸は怒りに震えると同時に途方も無い絶望を感じた。
 訃報を耳にした時、「今すぐ仮の肉体を捨てて、亡骸でも良い、彼に逢いに行きたい」と思った。
 しかし、行動に移すことは出来なかった。
 他の守護者達によって密葬されたという彼の抜け殻を、現実を観てしまうのが、何故か怖かったのだ。
 人間の屍など幼少の頃から観慣れているというのに。
 自分自身、これまでに物言わぬ肉塊の山を築き上げてきたと言うのに。
 酷い言い方だが、あれらと同じ「物」になってしまった彼を視たくなかったのだ。

(もっと早く、計画を実行していれば良かった。もっと彼らに情報を流しておけば良かった。知らせて、協力を請えば良かった。日本に奴らの手が及ぶ前に、ここを叩き潰しておけば良かったんだ…。…そうすれば、彼の生命はいくらか永らえたかも知れなかったのに……僕の、要らぬ意地の所為で……彼は…)

 仮定をするにも、事態はとうに手遅れだったけれども。
 存在したであろう可能性を考えずにはいられなかった。



 ボスの没後、骸は後悔を胸に閉じ込め、じっと機会を伺っていた。
 必要に応じて仮の肉体を幾つか渡り歩き、間もなくやって来るだろう復讐の日の為に、少しずつ、力と情報とを蓄えていた。
 特に、自身の姿を幻覚で創り上げたり、幻覚を実体化させるような能力を使えば大きく減ってしまう「力」の方を。
 ボンゴレに受け継がれる指輪が無い今、大きな仕事を成し遂げるには、最大限にまで蓄積した自身の「力」が必要だったからだ。
 敵本部への潜入時、敵地内を自由に動き回れるようにと幻覚を駆使し、何人かの雑兵と“契約”していたこともあり、小出しながらも力を使い続けていた骸は常に消耗していた。
 目的を果たす為に、暫くは一つの器に留まり、力の流出を防ぐ必要があった。
 ちょうどその時、ボスの側近でもある伝達役が替わるらしいと聞き付け、新しい伝達役に成り済ます事を決めた。
 使う器は外部の人間のものだったが、情報を操作し、新人だと言えば、何とかなるだろう。
 一か八かの賭けでもあったが、骸は一番若く身体能力の優れた器を選び、敵のボスに仕える事にしたのだった。
 これから実行しようと考えている事が吉と出るか凶と出るかは、想像もつかなかった。
 自分の考えた通りの結果が出せるのかどうかも。
 少なくとも、気を抜いて立ち向かえる相手ではない、それだけは重々承知していた。
 そうして骸は目の前に敵の姿を見つけては高ぶる感情を押し殺し、情報収集の傍ら、憎い相手に仕え続けた。

 だが、偽りの主が事あるごとに口にする心無い言葉に、骸は徐々に耐えられなくなって行った。

 恐らく敵は自分の正体に気付いている、その程度で揺さぶられていては思う壺だ ――――――――――― 頭では解っていたのに。


『ボンゴレ10代目って、本当に間抜けな子だったんだよね。僕の狙いだってどうせ知ってたんだろうに。丸腰で、一人で来るようにって言ったら、本当にグローブ一つ持たないで一人で来ちゃうんだもん。驚いたよ。あれぐらいしか武器も無かっただろうに……。あ、でも、あの子は他の守護者と違って自力で死ぬ気の炎が出せなかったっていう話だったし、ボンゴレにはもう死ぬ気になれるアイテムが無かったらしいから、どっちにしても必要なかったのかな? 
 んー……それにしたって、黄色のアルコバレーノに育てられた割にはホント、純粋過ぎだよね。そう思わない? レオ君』

『申し訳ありません、自分はまだ新人でして、勉強不足でお恥ずかしいのですが……黄のアルコバレーノの事や、ボンゴレ関係の事は、詳しくはよく解らないのです。ですが、ボンゴレ10代目が死ぬ気の炎を出せなかったという話、確かに意外でした。ボンゴレ10代目は、死ぬ気弾に当たるか、薬のようなものを飲み込まなければ、炎を灯せなかったんですよね? 後者は、作っていたのが研究施設だったそうですから、最初にあそこを破壊した事が幸いしたのでしょうか。先日、ボンゴレ10代目の取った行動は自分も吃驚してしまいましたが、でも、結果として全てがこちらの思惑通りに事が進んだんですから、ミルフィオーレとしては有難い事だと思います』

『うん、そうだね。ボンゴレ10代目の強さの原因が解っちゃえば、潰しちゃうのは簡単だったよ。研究施設に目を付けた僕と正チャンの作戦勝ち。向こうの嵐の守護者も頭脳明晰だけど、肝心な時に日本に居ちゃ何も出来ないからね。イタリア本部の手薄さ、知らなかったのかな? マフィアの癖に平和ボケしてちゃダメだよねえ。しっかしボンゴレボスはもっと出来る子だと思ってたんだけどなあ。よくあれでボスやれてたよね? っていうかさ、あんなにアッサリ条件のんでくれるんだったら、もっと嬲って弄んでから殺しちゃっても良かったなあ。顔は可愛かったしさ。僕にもイケナイ趣味があれば良かったのにな~。ああ、そういう趣味の部下に回せば良かったのかも? 何にしても、惜しい事しちゃった』


 一つの終焉があった、談合の日。

 ドン・ボンゴレが出した条件は、確か、ボンゴレのみならず、マフィアの世界から足を洗った仲間達に、今後一切手を出さないこと、だった。
 生き残っているアルコバレーノ達に対する攻撃(例の呪いの光線の事だ)を止める事、日本に刺客を送るのを止める事も、提示されていた。
 甘く優しい大マフィアのボスは、どんな事をしてでも仲間を守ろうとしたのだ。

 引き換えとするには大きすぎる代償を払ってでも。