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グッバイ・ワールド・エンド

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昇っていく煙を眺めながら、果たして静雄とこんなにも長い時間向かい合っていたことが過去にあっただろうかと考えた。いつまでも消えずに昇っていくそれは、まるで狼煙のようにも見える。誰に対して知らせなのだろう。何を知らせたいのだろう。いつか誰かがこの狼煙に気がついて、泥沼のこの状況を打破してくれるのだろうか。

――――――余計なお世話だ。


「シズちゃん」
「その呼び名はやめろっつてんだろ」
「ものすごく不愉快な話なんだけど」
「じゃあ喋るな」

視線を上げたまま臨也は口端を持ち上げる。この感情が本当は何であるかなんてことはずっと昔に放棄したままだ。中途半端にしておくことは好きではないけれど、この件に関してのみはそれでいいと思っている。またしても特例。しかし、そもそも静雄の存在自体が既に特例なのだからそれも仕方ないのではないか。なんて。

「俺も、シズちゃんと同じこと考えたんだよね」
「は?」

「俺の世界からシズちゃんがいなくなってしまったら、それはもう俺の世界じゃないんじゃないかって。もしかしたら俺の世界の中心はシズちゃんなんじゃないか、って。あれ?これって相思相愛ってやつかな?でも俺はシズちゃんのことが大嫌いなんだけどな。むしろ相思相厭?それはちょっと面白いよね」

臨也が一方的に喋り立て、静雄が黙る。その関係は高校時代からずっと変わらない。新羅がこの場に居たら、「君たちは本当に仲が良いよねえ」と笑うに違いない。そう、その解釈もある意味では正しい。結局のところ、感情の境目なんて曖昧で、自己判断に委ねられる問題なのだから。

「しかしシズちゃんまでそんなに俺のことを考えてくれているとは思わなかったなー。まあ俺はシズちゃんとは違って愛され体質だから?無理もないのかもしれないけどさあ」

「・・おい」
「なに?」


「気持ち悪い」

「アハ、同感」



覚悟はいいな、静雄の眸はそう云っていた。口端を持ち上げたまま、臨也は大きく後退する。

(嫌いで嫌いで仕方ないその執着は、)(一体愛と何が違うのだろう)
(忙殺される毎日に、ふと思い浮かべる)(それを他に何と呼ぶのだろう)

(答えは、たぶん、もう自身の中にある)


「ほんっっと気持ち悪いよねえ。どうしよっか」
「知るか」



(ああ、今度こそ死ぬかな)

(そうしたら本当に世界は終わるかな)




(・・・ちょっと興味があるんだよね)