Call,Call,Call!
振り返った顔が必要以上に驚いていたので、ざまあみろと思う。しかし勝ち誇った感情はうまく長続きしない。本当は二人で困り果てているのを知っている。今までの二人が、自分たちにはきっとお互い大事だった。でももう変えたいと、願ってしまった。有里は赤崎を見つめながら、胸の内で問いかける。これからどうしよう。どうしたい?私はもう、決まってる。
こっちへ来い。
こい!
こんな距離、なんて無くしてしまえ!
叫ぶ、のは心の中だけだ。口にしたら、零れてしまいそうだった。それは違う、と思ったので、溢れ出しそうなものは全部目に閉じ込めて、睨みつける。呼ぶように。そんな有里と距離を持って対峙していた赤崎は、小さく口を動かした。何と言ったのかは分からない。全くこんなに離れているなんて!馬鹿じゃないのかと罵ってやりたい。渦巻く感情が、何なのかもうよく分からない。
だけど、だけど早く、早く。
有里は願いを込めるように見つめ続ける。その先で赤崎はそっと頷き、歩き出す。近付いてくる影をただ見ていた。目が痛いけれど瞬きも出来ない。だって消えてしまったら、消えてしまったらどうしたらいいの?憤りとも思えてしまうほど、わやくちゃな感情を自分の中に宿らせた男の子が目の前に立つ。有里は目を光らせてじいっと見ている。微かな動きも見逃さないように。困った目をした男の子は、けれどもう、何かを決めていた。
引きずられるように。呼び込むように。
赤崎の手が頬に触れて、ようやく有里は目を閉じた。
作品名:Call,Call,Call! 作家名:フミ