永遠までのあと五分
「帝人くん、俺思ったんだけど」
「臨也さん、あと五分待ってください。今問い合わせますか、ら、」
「思いついちゃったんだけど」
(・・・・なに、を?)
ぎゅう、と帝人を抱きしめる腕が畳から再浮上してくる。同じように、どうやら臨也の無駄に回転の速い頭も、何かよからぬことを思いついたらしかった。
マウスがまた帝人の手から奪われて、冷蔵庫のページが再びクリックの波に飲まれていく。「ググった方が早いかな」と笑った臨也が手馴れた様子で検索バーに入力した単語を見て、帝人は何故彼に五分も与えたのかと、自分を恨んだ。
「冷蔵庫が入らないなら、入るところに住めば良いんだ」
「・・・・」
「収納スペースがないなら、クローゼット付きの部屋に住めば良いんだ」
「(・・・そんな)(マリーアントワネットみたいな)」
「毛羽立った畳がうざいなら、フローリングの床にすれば良いんだ」
「(・・・別に僕は)(気にしてないんだけど)」
「だからつまりは、俺と一緒に住めば良いんだ」
耳元で臨也が笑う。笑って笑って笑ってそれから、だから新しいの見に行こうよ、と不動産屋のページを開いて、心底楽しそうにまた笑った。
帝人は短くなったTシャツの隙間から入り込んでくる指をつねって制して、それから小さく、四畳半から助けを求めた。
「・・・・あと五分、待ってください」
(うん)(それもう)(無理!)