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みとなんこ@紺
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ゆっくり歩く

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さて。
一つの他愛ない話をはじめよう。
静かなとは言い難いが、古来学校たるやこのようなもの、そのものの日常を繰り返していたはずのここ、王都ロイヤル・スクールに先日台風の目が現れた。
どこにでもある学生達の日々の営みの中に紛れる、初々しくも華々しい恋のお話やら、お貴族サマと庶民との確執やら、色々なものを抱え込んで流れる平和な日常とやらに、かつてないほどの巨石が投じられたわけだ。(少なくとも現在学校に通う年代の生徒達にとっては、だが)
台風の目の一つ、上級王位継承権持ちの兄。(しかも竜殺しと伝説の歌姫との恋話つき)
もう一つ、同じく継承権持ちで、編入早々女子人気ナンバー1との名の高いカイル・タリーズと噂になりかけた妹。(良家の姫君に見えないほどおて…お元気だという話)
この2人が学校に現れた事によって、少しづつ見えにくい何かが動きはじめた。
今まで穏やかだった水面に投じられた石の一つが起こした波紋が徐々に広がっていくように。起こされた波同士がぶつかってまた更に異なった模様を描いていくかのように。
…もっとも当人達にとっては普通に、ついでに今までなかった諸処の事柄を受け止めて、楽しみながら日々を過ごしていただけだけれど。
これはそんな中での何て事ない一つの話。







「…で。あいつ結局何処に行ったんだ?」
「午前はイオンと裏の練習場で鍛錬していたが…何かあったのか?」
そう問い返すと、フィルは微妙な表情をしてピラリと一枚のプリントを示してみせた。
「またこないだの幾何学で寝てたんだけど流石になー。今日中にこのプリント提出しないと補習だってさ」
なるほど。それでフィルが探し回っている、と。
必修ですら潔く寝る、いっそ徹底した眠りっぷりを思い出して、竜胆は淡く苦笑を浮かべた。
「昼前に分かれてから姿は見ていないな。私も気を付けよう。見かけたら伝えておく」
「サンキュー、リド」
「あれー、フィル何してんの?次バイトだって言ってなかったっけ?」
さっき学食で分かれたところだったルーディーとライナスが廊下の向こうから歩いてくる。フィルは大きく溜め息をついた。そう、そろそろタイムアップだというのに。何処に居るんだあいつは。
「教授に途中で捕まった。DX探してんだよ。見てねーか?」
「見てねーな。…何かあんなら妹か護衛に聞きゃいーだろ」
「イオンちゃんをパシりに出来るワケねーだろ!」
「でもあとのセンも無理だと思うよー。さっきウィフテッド教授が温室の方にひっぱってったの見たから」
ちょい、と指先で外を指す。
ということは、一番頼りになりそうな情報源がまず消えたわけだ。
「補習くれー受けさせりゃいーじゃねーか」過保護うつってるぞお前
「…というか、補習中でも容赦なく寝そうだけどねー」


・・・ありえる。って、いやいやいや。


「ここまで来たら途中で放り出すと気分悪いしな」
…とは言ったものの一口に探すといっても学校は広い。この中からDX1人を探そうなぞ至難の業、のはずだ。
「裏庭、寮の部屋とか。637」
「全滅だ」
彼の立ち寄りそうな範囲内はざっと見てきたつもりだが。
如何せん本人が色々目立つネタ持ちの癖に、不思議と目撃情報が少ない。周囲にとけ込んでいるのだといえば聞こえは良いが、その実体は、単に普段はぼーっとしてるばっかりなので…ごにょごにょ。







「DX?結構前にすれ違ったけど」
「本当か!?何処行った?」
「行き先までは知らないよ。レイ・サークから逃げ回ってるって言ってたけど」
「うげッ」
物凄く反射的に腰が引けた。
寮生の中には(こうまであからさまではないが)同じような反応を示す学生は少なくない。その理由は分からなくはないけれど。ティ・ティはしょうがないよねと気楽に笑った。
「苦手なんだよ、あのワケ判んねー相談役」
「まぁフィルらしいね。それよりDXがどうしたのさ」
そして本日何度目かのやり取りの後、にっこり、ティ・ティは笑った。



作品名:ゆっくり歩く 作家名:みとなんこ@紺