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みとなんこ@紺
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ゆっくり歩く

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「いー加減に、起きろー!!」
・・・・・・。
反応なし。
『DXの事だからたぶん人が普通は寄りつかないような所にいるよ』
人は視線より上の方は結構死角になるから、多分・・・。
そう言ってティ・ティが捜索を薦めたのは学校の正門近くの塔のある学舎。教会だのホールだのがあって、確かに常時使われている訳ではない。
成る程、と思って見に来たは良いが・・・ハズレか?そう思いだす程には間が空いて・・・。
「・・・フィル?」
「うをッ」
ひょこ、と何の前触れもなく逆さまにDXが顔を出した。
「どうかしたのか?」
・・・普段が普段だけに、寝起きなんだか素なんだか微妙なラインだ。
つーか何でこんな塔の上で寝れるんだ。お前ホントにヘンだぞその辺り。
もとい。
その辺の事くらいじゃもう今更ツッコミ箇所にすらならない。というか何にもわかってません、な表情をしてる場合じゃない、お前は。
フィルは跳ねる心臓を何とか宥めて盛大に溜め息をついて見せた。
「どうかした、じゃねーよ。お前いつから寝てんだよ。もう幾何学終わったぞ!」
一息に言い終わる頃には、ようやく回路が繋がってきたらしい。
「・・・・・・あれ?」
「あれじゃねーだろ…」
あーもー…。
流石に時計を見遣って軽く目を瞠ったようだが、それでも寝てたんだか起きてるんだか驚いてるんだか判りゃしない。
取りあえず降りて来いよと言えば、ちょっと下がってと返ってくる。声に従って2つ後ろに下がった所で、目の前に足音も軽く諸悪の根元が降りてきた。
寝起きでまだ眠いのか、軽く筋を伸ばしてみたり。
「…ちょっとだけ気分転換のつもりだったんだけどなー」
「気分転換でこんなトコ登んなよ」
せめてふつーに探しに行ける範囲にしとけ。
…というか時間とっくに過ぎてるよ。大遅刻だ、クソ。
「探しに来てくれたのか?」
「教授からの頼まれゴトがあったんだよ」
やれやれ、これでお役ご免だ。
そう思った矢先、


――――あ、


と思った時には既に遅く。
不意打ちの突風に攫われて、用紙は容赦なく空に舞い上がった。

「…よく飛ぶなー」

…ええ、ええ、よく飛んでますね。

塔はアカデミーの端にあるから、ここから飛ばした物なんて、すぐそこはほら。もう街へと続くロイヤルマイルへ向けて一直線。
ふわりふわりと風に攫われ、宙を漂う紙は既に小さくなっている。

って、ああ。

「・・・フィル?どうしたんだ?」
おーい、と呑気に呼び掛けてくるDXの声を遠く頭上に聞きながら、フィルはがっくりと膝を付いて項垂れた。
ああもう本当に。
いったい何の為にこんなトコまで。
「・・・お前しばらく昼飯おごれ」
取りあえず事の経緯は事細かに教えてやっから。
何が何やらまったく判りません、なピュアな顔をしながらも、ドロドロ立ち上るフィルの気配に一歩退くと、DXは取りあえず逆らわない事にして、一つ頷いた。


ああ、本当に碌でもない。
事の顛末が皆に知れれば、絶対散々笑われる。
現状をイマイチ把握してないだろうDXは…八つ当たりも籠めて後で相談役の所にでも放り込んでやろう。
そう決め込んで、フィルはよ、と気を取り直して立ち上がった。
こちらを見ていないDXの視線を追うと、フォーメリーの王城を眺めているようだった。
横顔はいつも通りで、そこからは何も窺えないけれど。同じように遠くを眺め、ぼんやりと、何となくこんなのもまぁいいか、とそう思った。











コレも一つの日常の一コマだ。
端から見れば意味のない、他愛のない毎日のくり返しが折り重なっていつしか歴史を作る。
史書に残る事はけしてなくても、誰もがそのうち忘れても。
だけどいつか何かの折りに思い出して、それをネタに笑えたらいい。
くだらなくて、だらしなくて、二度とないだろうあの他愛ない日々を。




作品名:ゆっくり歩く 作家名:みとなんこ@紺