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protector

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 思わずきょとんとしてずり落ちた眼鏡を直すと、上から声が降ってきた。

「お前は…目を離すとすぐこれだ…」
それは、心底呆れたルーくんの声。お腹を支えているその手がルーくんのものだと気付くと、あたしは慌てて体制を立て直した。
「る、ルーくんっ!やだ、ごめんっ」
どうやら、あたしはまたルーくんに助けられてしまったらしい。自分の状況を把握して、思わず恥ずかしくなってしまった。一度ならず二度までも、あーあ、やっちゃったなぁ。ルーくんを再び見上げると、ああやっぱり、あきれ返った顔をしている。

「危なっかしくて仕方ない…まったく、ここは俺がやっておくから、お前は奥でドクターにコーヒーでも淹れてろ」
「はぁーい…」
あたしはがっくりと項垂れて奥に続く扉へと向かう。
「言うまでもないと思うが、書類の上にコーヒーひっくり返したりするなよ」
「そ、そんなこと言われなくてもっ!」
思わずムキになって振り返った。すると、ルーくんの表情が、一瞬柔らかくなったように見えた。しかし、それもほんの一瞬。ルーくんはすぐにあたしに背を向けて、作業を再開してしまった。見間違い…じゃない、よね?あたしは思わず嬉しくなって、ルーくんに駆け寄って笑った。今度こそは転ばない。

「ルーくんっ」
「何だ?早く行け」
「ありがとう、二度も助けてくれて」
「…別に。今までのことを考えたら、一度や二度どうってことないさ」
ルーくんはいつもどおりぶっきらぼうに返事をすると、ふいとそっぽを向いた。あ、照れてるんだ。可愛いところ、あるんだなぁ。
 さて、あたしもコーヒーを淹れに行こう。ドクターの分だけじゃなくて、ルーくんの分も。ルーくんは仕事が終わったらすぐ帰っちゃうかもしれないから、急がなくっちゃ。




「…よぉ、ルー」
「お前か。ドクターなら奥に――」
「危なっかしくて仕方ない…か、相変わらず素直じゃないなぁお前」
「見てたのか…何が言いたい」
「危なっかしくて仕方が無いから、傍で見守るためにバイトを始めたって俺が知らないとでも?」
「………」
「ま、頑張れよ。俺は応援してるからな」


 数ヶ月前まで一緒に働いていた仕事仲間がそんなことを言って去っていったことなんて、あたしはその時知る由もなかった。
作品名:protector 作家名:さくら藍