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[*BL] CSIパロ

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フランシスの行動の目的が分からず、俺はただただ混乱するだけ。
落ち着こうとしてもドキドキという自分の心臓の音や、耳をくすぐるフランシスの吐息に邪魔をされる。

「ちゃんと満足してもらってんの?あいつのセックスってあの性格のまま、強引なんじゃないの?」
「・・・アルの、悪口は、言うな・・・!」
「・・・・ふぅん・・アル、ねぇ・・・・」

俺ならまだしも、直接関係のない恋人の事を悪く言われる事に我慢できずに抗議すればフランシスは
声のトーンを低くし、同時に腰に回っていた腕にぐっと力が込められ密着度が増し身動きが一層とれなくなった。
フランシスの纏う空気がいよいよ危険さを増すのを感じて、頭の奥で危険信号が鳴り響くのに
身体は鉛のようにぴくりとも動かす事が出来なかった。

「なんかさぁ、懐かしいよね。」

そう言うなり腰に回されていた右腕の方が離れたかと思うと、次は太ももを撫で始めた。
それはねっとりとした手つきで、まるで行為を思わせるよう。

「ちょ・・・っほんとなに・・・!」
「昔ここでこんな体勢でやらしい事したよねぇ。まだこんなガラス張りじゃない部屋で、
監視カメラの死角ついてさ。」

耳に直に注ぎ込まれるフランシスの声に合わせて、ザザっと記憶がフラッシュバックして
その日の事が鮮明に、まぶたの奥に浮かび上がる。

まだ、俺とあいつは対等の立場で、あいつが俺をアーサーと呼んでいたあの頃。
触れ合う肌の熱
淫らな水音
上がる体温とたちこめるあいつの匂い

強烈な記憶の波に飲み込まれ散らばってしまいそうな意識を必死に繋ぎとめるが、
太ももを這う手のひらがぽつりぽつりと身体の芯に火を灯そうとするのを
止める事が出来ない。

「久しぶりにどう?お前のイイとこ全部知ってるお兄さんなら、泣いちゃうくらい
気持ちよくして満足させてあげられるよ?」
「・・っ・・・!」

焦らす様に太ももを撫でるだけだった右手は、明確な意図を持って俺の中心を撫で上げた。
それまでの戯れによって少しずつ熱を上げられていたせいもあり、布地越しとはいえ敏感な
部分に触れられ俺は思わず身体を震わせてしまう。
こんな反応したら向こうが喜ぶのは嫌というほど分かっているのに、理性で抑えるよりも先に
本能が反応してしまうのだからどうしようもない。

「その反応はOKってことなの?ねぇ、アーサー?」

名前を呼ばれた瞬間、カーッと体の熱が上昇した。
同時にフランシスが喉で笑ったのも感じる。

「お前!笑ってんじゃねぇよ・・・!」
「名前呼ばれるの好きだもんな、アーサー。」

あぁこいつは本当に最悪だ。
弱点を知られているのに抵抗など出来るのだろうかとなけなしの思考回路が疑問を投げる。
きっと、もう一度熱の篭った声で名前を呼ばれたら、俺は流されてしまう。

まさしく、絶体絶命。

「アー「あの、すみません!!」

フランシスのとどめの一声は別の人物の強い声によって完全に音になることなく消えた。
入り口に背を向けて、フランシスに覆いかぶされているから声の主に今の状態が見える事は
ないだろう。そうは思うが、冷や汗が背中に一筋伝う。

「なにかな、マシュー?」

冷や汗だらだらで固まってしまっている俺とは対照的に、ムカつくほど余裕を含ませた声と
動作でフランシスは俺から離れ、入り口へ向き直った。

「え・・あ、あの、このサンプルをギル先生がフランシスさんの所へ持っていくようにと。」

おずおずといった声と共に、戸惑いの視線を背中に感じて肩越しに声の主の様子を伺うと
視線と同じくらい戸惑いの色を浮かべた顔が見えた。
CSIの中で一番若い、検死官見習いのマシューは普段から控えめだが、今日は一層
萎縮しているようだ。
まぁそりゃ俺が言うのもなんだが、先輩二人が只ならぬ雰囲気を醸し出していたらそりゃ
萎縮するし戸惑うのも無理がない。
そこまで考えてからふと、先ほどのマシューの行動に違和感を覚える。

マシューが、強い声を、あげる?

なにが違和感なのか分からないまま、とりあえず緊張感から開放された俺はぼーっと二人の姿を見つめた。

「まーたギルのパシリにされてんの?」
「パシリじゃないです。お手伝いですっ!」
「手伝いねぇ。そう言えばまた血を見て倒れたんだって?大丈夫なのー検死官見習いさん?」

によによと口元にはからかいの笑みを、しかし目元には愛しさをにじませながら
左手でマシューの頭をくしゃくしゃとかきまわすフランシス。
子ども扱いされるのが恥ずかしいのか頬を赤くし、拗ねたように唇を尖らせながらも
焦がれるような視線を目の前の男に向けるマシュー。
そんな二人の姿に、ざわざわと酷く耳障りな音と共に言葉に何かが胸の奥に広がり始める。

これは何だ?俺は一体どうした?

ただ一つ分かるのは、これ以上ここにはいない方が良いという事。
とっくにプリントアウトされ終わっていたレポート数枚を掴むとなるべく二人を見ないよう
顔を伏せたまま、言葉もかけずただ一目散にその場を立ち去った。
何か言いたげな視線も戸惑いの視線もすべて無視して。

通路の角を曲がり、ラボから俺の姿が見えなくなるまで進んでからジャケットの胸ポケットに
仕舞っていた携帯を取り出すと見慣れた番号を呼び出す。

「おい、今晩空いてるか?」
「はぁ!?なんだい突然!!」

コール音が途切れた瞬間、用件だけ述べればアルは戸惑いと不機嫌をおりまぜた声をあげた。
その日常的な反応に苦しかった胸は幾分安らぎ、俺はふっと詰めていた息を吐き出す。

「家で待ってるから、来いよ。」

それだけ告げ、スピーカーの向こうから聞こえる文句は無視し、一方的に電話を切った。
今はただ、アルに逢いたい。
ラボから出た俺の頭の中にあったのは、ただその願いだけだった。





「すみません・・・主任とお話中だったんですよね・・・?」

無言で出て行ってしまったのはきっと邪魔されたせいだろうと僕は思い、
とたんに自分の行動が申し訳なくなって隣に並ぶフランシスさんにお詫びの言葉をかけた。
二人の姿が見えた時、本当は声をかけるのを止めようと一旦は思ったんだ。
けれど、二人の雰囲気がどうしても、どうしても気になってしまって気づいた時には
声をかけてしまっていた。
自分でもどうしてこんな事をしたのか分からない、ただあの二人を見ていられない
そう思った瞬間、言葉が勝手に出ていってた。

「ううん、マシューのせいじゃないから、気にしなくていいよ。」

フランシスさんはいつものような、やさしい声を僕にかける。
けれどちらりと見たその瞳には、見た事のない色が浮かべられていて胸の奥がざわりと嫌な音が鳴った。







作品名:[*BL] CSIパロ 作家名:米すけ