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ヒオウ・ヒナタ~~溺愛魔王と俺様~~

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駘蕩



デュナン国はあの戦いから驚くほど早く立ち直っている。

市場も活気があるし、壊れた建物もどんどん新しく建てられていった。
焼かれた木々はすぐに、という訳にはいかないが新たに苗が植えられている。
そしてなんといっても人々の笑顔がそれを物語っていた。

ヒナタはそれをとても嬉しく思っていた。


あの戦いからもう2年がたつ。

終戦当初はただがむしゃらに働いた。
少しでも皆が安心し笑顔で暮らしていける国にしようと。
それでぶっ倒れる事もあり、その度にヒオウやシュウに小言をくらっていた。
最近ようやく、こうして外を見て周れる余裕も出てきた。

「うん、これって、国が落ち着いてきたって事だよな。」

ヒナタは市場を見ながら独り言を呟いた。
今はまだ早朝だが、市場でも色々な朝市をやっており賑やかだ。

今日、明日はヒナタの休日である。
当初は休む暇もなかった。
たまにシュウから強引に休みをとるよう強要され半日だけ休む、といった事はあったが。
最近になって、こうしてたまに休みをきちんと取る暇ができるようになった。
しかも連休なんて、とヒナタは少しワクワクしておりかなり早くに目が覚めてしまった。

休みといえども部屋に篭っているつもりもなく、目も覚めたので外に出ることにした。
外出するなら誰かをつけろとよく言われるが、そんなのは真っ平御免だと守ったためしがない。
だいたい自分の身は自分で十分守れるし、こんな見た目普通の子供が大層な大人を引き連れているほうがよっぽど目立つとヒナタは思う。
城下町ではヒナタの正体はよく知られているが、皆はヒナタを特別扱いせず、またヒナタもそれを好ましいと思っていた。
逆に少し離れた町や村では、顔を知らない人もおり、ヒナタは普通の子供だと思われ、それも好ましく思っていた。

「王様扱いなんて城内だけで十分だよ・・・。」
「やあヒナタ様早いね、今日は休みかい?どうだいこの果物っ。旨そうだろ?朝飯にどうよ?」
「おっ、ヒナタ様。早起きだなっ。調子はどうだい?」
「おはよう、ヒナタ様。朝ごはんは食べたのかい?うちのパンはどうだい?焼きたてだよー。」

皆がにこやかに声を掛けてくれる。
ヒナタもニッコリと挨拶をかえす。

そういやご飯まだだったなーと、パンとミルク、リンゴを買って、歩きながら食べた。
その間も気付いた人から元気な挨拶が掛けられ、ヒナタも返す。

「今日はどうしよっかなー・・・。あ、そうだ。」

城下町を一通り見て満足した後、少し考えてから城に戻り、馬に乗る。

久しぶりにヒオウの家に行ってみようと思い立った。

もう長らく訪れていない。
忙しいヒナタを知っているので、ヒオウの方からたまに出向いてくれて、その時によく仕事を手伝ってくれたりしていた。

シュウに言いに行くとどうせ供をつけろと煩いだろうからとメモだけ残していく。
急だけどきっと誰かはいるよね、と馬を走らせた。

ラダトの街に馬を置かせてもらって船にのり、バナーの村に着く。
そして山を越える。
国境につくとバルカンが快く馬車でグレッグミンスターまで送ってくれた。

でもやっぱりビッキーやルックがいた頃は便利だったよなーとふと思った(ルックはムッとするだろうが)。

「ここはホント久しぶりだなー。」

王として来たならレパント大統領に挨拶するべきだろうけど、今日は個人的に来ただけだからいいよな、とヒオウの家に向かった。

「おはようございマース。」

扉をたたくと暫くしてからグレミオが出てきた。
ヒナタに気付くとびっくりしたように言った。

「ヒナタくんっ。ど、どうしたんですか、こんな朝から。と、とりあえずお入りください。」

ヒナタは久しぶりに連休がとれたこと、嬉しくて早くに目が覚めてしまったこと、久しぶりにここに来たくなったことなどをニコニコと話した。

「そうだったんですかー、それは良かったですね。ここまで遠いのにこんな朝に来られたんで何かあったのかとびっくりしましたよ。」
「そっか、ごめんなさい。驚かせるつもりじゃなかったんだよ。」
「いえいえ。わたしも久しぶりに元気なヒナタくんに会えて嬉しいです。もう朝ごはんは食べられましたか?」
「あー、うん、食べちゃった。うわーここに来んなら食わなきゃよかったよー。」
「ふふふ、じゃあお茶でも淹れましょうね。坊ちゃんは相変わらずぐうたら寝ておられますよ。もう起きてもいい時間なのにね。あ、ヒナタくん、良かったら坊ちゃん起こしてきてもらえますか?」

うん、分かった、とヒナタは2階に上がった。
一応ヒオウの部屋のドアをノックしてみるが、返事はない。
ま、起こしに来たんだし、と勝手にドアを開けて中に入った。
見るとヒオウはベッドにうつ伏せて寝ていた。